[13ア-ポ-01] 肢体不自由者の移動する視標の追視時における視標消失後の眼球運動の特徴
【目的】 肢体不自由児者,特に脳原性麻痺を有するケースは,障害のない者に比して滑動性眼球運動(以下パーシュート)における視線の遅れや衝動性眼球運動(以下サッカード)におけるオーバーシュートなどの眼球運動の困難さがあることが指摘されている。本研究では,一定速度で移動する視標の追視時に視標が消失した条件における肢体不自由者の眼球運動の特徴を明らかにすることで,球技などの運動中のボール移動に対する予測認知特性への影響を検証することを目的とした。
【方法】 対象は肢体不自由者(脳性まひ成人男性)および障害のない者(成人男性)である。実験は,以下の2つの条件において眼球運動計測装置によりパーシュートの視線を計測した。条件1)モニター上を一定速度で左から右方向に移動する視標の追視。条件2)移動する視標を画面中央で消失させ,被検者は視標が同じ速度で移動していることを予測しながら追視を続ける。
【結果および考察】条件1では,障害のない者の視線は視標より前方を移動する傾向がみられ,肢体不自由者の視線は移動する視標の動きとほぼ同期する特徴がみられた。条件2では障害のない者の視線は,視標消失後サッカードと停留を規則的に繰り返しながら視標の移動方向へ移動する特徴がみられた。肢体不自由者の視線は,視標消失後①視標が消失した場所で停留する,②停留回数が障害のない者よりも少なく視標移動方向へのサッカードの距離が大きい特徴が認められた。球技などの運動中はボールの動きを予測した運動が求められる。特に,運動中にボールが視野から一時的に消失する場合には消失する前の移動速度や移動方向を参考にした予測認知が重要となる。本研究の結果から,肢体不自由者は移動する視標が消失した場合その視標の動きを予測することが難しく,運動の実行に影響を与えていることが推察された。