[09方-ポ-17] 日本人エリートアスリートにおける膝関節屈曲伸展トルク比の競技特性
夏季種目および冬季種目に着目して
膝関節の屈曲伸展トルク比(以下、H/Q比)は、下肢の機能的特性や傷害発生リスクの指標として活用できることが知られており、アスリートのH/Q比について、パフォーマンスとの関連、傷害の既往歴との関係など様々な観点から報告されている。アスリートの下肢筋力には競技種目ごとに異なる特徴が存在し、特にスキージャンプやスケートなどの冬季種目アスリートが他の種目と比較して高い下肢筋力を有していることが報告されている。しかし、これまでH/Q比の競技特性を検討する際に、競技大会が実施される季節(以下、競技季節)を考慮したものはみられない。そこで本研究は、競技季節の観点を加えた競技特性がアスリートのH/Q比に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。日本人エリートアスリート1364名(25.3±4.6歳、1.76±0.8m、72.9±12.4kg)を対象として、60deg/sおよび180deg/sにおける等速性膝関節伸展および屈曲のピークトルクを測定し、得られたピークトルクからH/Q比を算出した。また、先行研究に基づいてアスリートを5つの競技特性(1:Sprint / power、2:Endurance、3:Artistic、4:Game、5:Other)×2つの競技季節(1:夏季、2:冬季)からなる10群に分類し、比較を行った。2要因分散分析の結果(競技特性×競技季節)、いずれの角速度においても有意な競技季節の主効果(夏季競技>冬季競技)および交互作用が認められた。競技季節ごとにみた競技特性の差異は、夏季競技と冬季競技で異なる傾向が示された。また、Sptint/powerおよびGameにおいて、夏季競技が冬季競技よりも有意に高いH/Q比を示した。アスリートのH/Q比において、競技特性が同一でありながらも夏季・冬季の間に差が認められた要因として、競技動作時の姿勢や収縮様式の違いが考えられた。