60th Annual Meeting in Autumn

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60周年記念講演

60周年記念講演
歯科医療を取り巻く環境の変化-医療・医学の視点から-

Sun. Dec 17, 2017 1:20 PM - 3:00 PM A会場 (メインホール)

座長:栗原 英見(特定非営利活動法人日本歯周病学会理事長/広島大学大学院医歯薬保健学研究科歯周病態学研究室)

[ML-2] 超高齢社会における医科歯科連携-日本医師会の取組について-

今村 聡 (公益社団法人 日本医師会副会長)

研修コード:2112

略歴
1977年秋田大学医学部卒業。1977年三井記念病院。1979年神奈川県立こども医療センター。1983年浜松医科大学助手。1988年静岡県立総合病院医長。1989年浜松医科大学講師を経て,1991年より今村医院を開設。板橋区医師会理事・副会長・監事,東京都医師会理事,日本医師会常任理事を歴任。2012年より日本医師会副会長を務める。
わが国は急速に少子高齢化が進み,2025年には国民の3人に1人が65歳以上となる未曽有の超高齢社会を迎えると言われ,わが国が誇る社会保障制度を堅持するためにも,国民の健康寿命の延伸が最重要課題の1つに掲げられている。また,それを実現するため高齢者の生活習慣病・フレイル予防への具体的な取り組みが求められている現状にある。
なかでも,わが国の糖尿病患者数は増加傾向にあり,未治療者・治療中断者も少なくない。糖尿病は網膜症,腎症,神経障害などの合併症を引き起こし,患者のQOLを低下させるのみでなく,医療費の観点からも社会に大きな負担をかけていることから,重症化予防が喫緊の課題とされている。口腔領域においては,歯周病が糖尿病患者に高頻度で見られ,重症化しやすい。血糖コントロールの不良が歯周病の増悪に繋がり,特に高齢者,喫煙者,肥満者,免疫不全者での罹患率が高い。また,歯周病が重症であるほど血糖コントロールが不良になることから,歯周病と糖尿病は相互に悪化させる悪循環に陥ると考えられている。
また,フレイル予防にはバランスの良い食事と適度な運動が基本となり,低栄養防止のためにも口腔ケアが不可欠である。加齢に伴う口腔機能の低下は,食事の質の低下にも繋がることから,より早期から口腔機能を維持・向上させることが重要とされている。
日本医師会は,平成17年に日本糖尿病学会,日本糖尿病協会とともに日本糖尿病対策推進会議を設立した。その後,幹事団体に日本歯科医師会が加わり,現在は計18の関連団体を構成団体として,糖尿病性腎症重症化予防を含めた糖尿病対策について様々な活動を展開している。また,47都道府県には,都道府県糖尿病対策推進会議が設立されており,地域での取組を実施している。地域の糖尿病対策推進会議の構成については,地域の関係者の判断によるが,都道府県医師会,日本糖尿病学会支部,都道府県歯科医師会等の関係する職能団体が参画している地域が多く見られる。
昨年3月24日には,厚生労働省,日本医師会,日本糖尿病対策推進会議の三者において,地域における糖尿病性腎症の重症化予防に向けた取り組みの促進を目的とした「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」を締結した。
本協定は三者共同で「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し,これに基づき,各都道府県及び管下市町村における取り組みを推進するため,三者による連携,協力,情報提供体制の強化を図るものである。本協定の締結により,各都道府県の医師会,関係団体,自治体等においても更なる連携の強化が推し進められ,医科歯科連携をはじめとした,多職種による医療連携の促進が期待される。
生活習慣病・フレイル予防の対策においては,日常的に診療に携わるかかりつけ医や健診の役割が大きく,健診受診による早期の発見と適切な治療を提供するためにも,医科歯科連携の重要性はさらに増している。このような状況において,日本医師会として,かかりつけ医とかかりつけ歯科医が円滑に連携できるよう,尽力していきたい。