60th Annual Meeting in Autumn

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医科歯科連携シンポジウム

医科歯科連携シンポジウム1 血管障害/非アルコール性脂肪性肝炎

Sat. Dec 16, 2017 8:20 AM - 9:50 AM A会場 (メインホール)

座長:佐藤 聡(日本歯科大学新潟生命歯学部歯周病学講座)

[CS1-3] Porphyromonas gingivalisの歯性感染は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態を増悪する

宮内 睦美 (広島大学大学院医歯薬保健学研究科 口腔顎顔面病理病態学講座)

研修コード:2504

略歴
1983年3月 広島大学歯学部卒業
1983年6月 広島大学病院 医員
1984年8月 広島大学歯学部 助手
1995年6月 博士(歯学)広島大学
2001年8月 広島大学歯学部 助教授
2002年4月 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授
2012年4月 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 准教授
食生活の欧米化に伴い肥満人口が増加している。肥満の肝臓での表現型は脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis: NASH)である。NASHは進行性病変で,その10-25%は肝硬変,肝癌などの死の危険性を伴う疾患へと進展するため,適切な診断と早期治療介入が必要である。一方,歯周病原細菌 Porphyromonas gingivalis (P.g.)は動脈硬化巣などで検出され,全身の健康状態に悪影響を及ぼす。近年,NASHの進展に腸内細菌が関わることが報告されたが, P.g.歯性感染の関与は不明な点が多い。本発表では P.g.歯性感染がNASHの病態進行に及ぼす悪影響について供覧するとともに, P.g.を標的とした検査の有用性について述べる。
Ⅰ.P.g.歯性感染とNASHの病態進行に関する実験病理学的検討
1)歯周病原細菌の歯性感染は肝臓の炎症や線維化を促進する。
高脂肪食(HFD)NASHモデルマウスの歯髄から P.g.を感染させ,6週後の肝臓での変化を調べた。 P.g.(+)群では歯根肉芽腫が形成され,病巣内に P.g.が検出された。HFD- P.g.(-)の肝臓では脂肪化と軽度の炎症がみられた。これらの変化は,HFD- P.g.(+)でより顕著となり,小肝硬変様領域も出現した。 P.g.は肝細胞やKupffer細胞内に検出された。
2)P.g.感染は肝臓でのサイトカイン産生を促進する。
ヒト肝細胞株をパルミチン酸で処理し,脂肪化肝細胞とした。脂肪化肝細胞ではTLR2( P.g.-LPS受容体)発現が上昇し, P.g.-LPS刺激によるサイトカインやインフラマゾームの発現が著しく増加し, P.g.-LPSに対する感受性が亢進した。
3)歯科治療はNASHの炎症や線維化の状態を改善する。
P.g.歯性感染6週後にアジスロマイシン歯髄投与により P.g.感染を除去し,3週後の肝臓の変化を調べた。興味深いことに,歯科治療により肝臓の炎症や線維化の程度が改善した。
Ⅱ.NASH患者におけるP.g.を標的とした検査
1)P.g.血清抗体価陽性例は,線維化進行例が多い。
広島大学病院で脂肪肝/NASHと診断された患者200例の P.g.FimAタイプの血清抗体価と臨床病理学的所見の関係を調べた。脂肪肝/NASH患者では P.g.FimA type4抗体陽性例が多く, P.g.FimA type4抗体陽性例には線維化進行症例が多くみられた。
2)肝生検組織でP.g.が検出された症例は,線維化進行例が多い。
脂肪肝/NASH患者300例の肝生検組織での P.g.の免疫局在を調べ,臨床病理学的所見との関連を調べた。NASH患者(30%)の肝臓で P.g.が検出され, P.g.検出例は線維化スコアや血中の肝線維化マーカーが高値であった。
以上の結果より,歯性感染病巣から侵入した P.g.および P.g.-LPSは肝臓に到達し,NASHの病態を増悪させることから,歯科治療はNASH患者の治療戦略の1つとなる可能性が示唆された。