[CS4-1] 糖尿病の治療と合併症に関する最近の話題
研修コード:2504
略歴
1984年3月 京都大学医学部卒業
1992年1月 京都大学大学院医学研究科博士 修了 (医学博士)
1992年3月 千葉大学医学部 高次機能制御研究センター 助手
1995年6月 同 講師
1996年11月 同 助教授
1997年9月 秋田大学医学部 生理学第一講座 教授
2005年4月 京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科学 教授
(2013年9月より糖尿病・内分泌・栄養内科学に改称)(現職)
2015年4月 京都大学医学部附属病院 病院長(兼務)
学会活動
日本糖尿病学会常務理事,日本糖尿病協会理事,日本病態栄養学会理事,日本糖尿病対策推進会議 幹事など。2016年 第59回日本糖尿病学会年次学術集会 会長
1984年3月 京都大学医学部卒業
1992年1月 京都大学大学院医学研究科博士 修了 (医学博士)
1992年3月 千葉大学医学部 高次機能制御研究センター 助手
1995年6月 同 講師
1996年11月 同 助教授
1997年9月 秋田大学医学部 生理学第一講座 教授
2005年4月 京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科学 教授
(2013年9月より糖尿病・内分泌・栄養内科学に改称)(現職)
2015年4月 京都大学医学部附属病院 病院長(兼務)
学会活動
日本糖尿病学会常務理事,日本糖尿病協会理事,日本病態栄養学会理事,日本糖尿病対策推進会議 幹事など。2016年 第59回日本糖尿病学会年次学術集会 会長
糖尿病治療の最終目標は糖尿病の合併症発症・進展を阻止による,「健康な人と変わらないQOLの維持と寿命の確保」である。糖尿病に特徴的な合併症である腎症,網膜症,神経障害といった細小血管症については,糖尿病薬物治療による抑制効果が血糖コントロールレベルと強く相関することが,これまでの臨床研究により知られている。大血管症については,新規発症の2型糖尿病患者を対象としたUKPDSにおいて,厳格な血糖コントロールによる抑制効果の発現までに10年以上の長い時間がかかることが示され,さらに,ACCORD試験のように,心血管リスクが高い患者に厳格な血糖コントロールを行うことによって,むしろ総死亡の増加が認められた。このような背景のもと,日本糖尿病学会は2013年に,合併症予防のためのHbA1cの目標値を7.0%未満とするものの,糖尿病の治療目標は年齢,罹病期間,合併症,低血糖の危険性,サポート体制などを考慮して個別に設定するという患者中心のアプローチ(patient-centered approach)に基づく新しい治療目標を提示した。
最近発表された,アンケートによる2001年~2010年の10年間の糖尿病の死因調査では,全症例45,708名での死因の第1位は悪性新生物(38.3%)であり,血管障害(慢性腎不全,虚血性心疾患,脳血管障害)は第3位(14.9%)であった。特に,血管障害による死亡の比率が,1970年代以降,年代が進むにつれて減少しており,近年の,血糖,血圧,脂質の厳格な管理に加えて,治療法の進歩を反映しているものと思われる。一方で,人工透析導入患者数は未だに減少せず,2016年に日本医師会,糖尿病対策推進会議および厚生労働省により糖尿病性腎症重症化予防プログラムが策定された。
一方で,日本は世界でも類を見ないスピードで超高齢社会へと突き進んでおり,高齢者に対する医療の重要性はますます重要となっている。糖尿病に関しても,全糖尿病患者の約3分の2が高齢者という時代を迎えている。高齢者では,1)臓器予備能が低下しているために薬剤の過量投与に陥りやすい,2)さまざまな疾患を合併しており,多剤併用となりがちである,3)ADLや認知機能の低下により,服薬アドヒアランスが低下しやすいなどの特徴を有し,重症低血糖のリスクが高い。このような背景のもと,日本糖尿病学会と日本老年医学会は,「高齢者糖尿病の診療向上のための合同委員会」を設置し,2016年に「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値」を発表した。その特徴は,年齢に加えて,ADLや認知機能の状態に応じた血糖コントロール目標値(HbA1c)を定めたことである。さらに,重症低血糖を予防するため,重症低血糖が危惧される経口血糖降下薬やインスリンを使用している症例では,目標値に「下限」を定めたことも特色としてあげられる。
本シンポジウムでは,これらの糖尿病の治療と合併症に関する最近の話題について解説したい。
最近発表された,アンケートによる2001年~2010年の10年間の糖尿病の死因調査では,全症例45,708名での死因の第1位は悪性新生物(38.3%)であり,血管障害(慢性腎不全,虚血性心疾患,脳血管障害)は第3位(14.9%)であった。特に,血管障害による死亡の比率が,1970年代以降,年代が進むにつれて減少しており,近年の,血糖,血圧,脂質の厳格な管理に加えて,治療法の進歩を反映しているものと思われる。一方で,人工透析導入患者数は未だに減少せず,2016年に日本医師会,糖尿病対策推進会議および厚生労働省により糖尿病性腎症重症化予防プログラムが策定された。
一方で,日本は世界でも類を見ないスピードで超高齢社会へと突き進んでおり,高齢者に対する医療の重要性はますます重要となっている。糖尿病に関しても,全糖尿病患者の約3分の2が高齢者という時代を迎えている。高齢者では,1)臓器予備能が低下しているために薬剤の過量投与に陥りやすい,2)さまざまな疾患を合併しており,多剤併用となりがちである,3)ADLや認知機能の低下により,服薬アドヒアランスが低下しやすいなどの特徴を有し,重症低血糖のリスクが高い。このような背景のもと,日本糖尿病学会と日本老年医学会は,「高齢者糖尿病の診療向上のための合同委員会」を設置し,2016年に「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値」を発表した。その特徴は,年齢に加えて,ADLや認知機能の状態に応じた血糖コントロール目標値(HbA1c)を定めたことである。さらに,重症低血糖を予防するため,重症低血糖が危惧される経口血糖降下薬やインスリンを使用している症例では,目標値に「下限」を定めたことも特色としてあげられる。
本シンポジウムでは,これらの糖尿病の治療と合併症に関する最近の話題について解説したい。