60th Annual Meeting in Autumn

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医科歯科連携シンポジウム

医科歯科連携シンポジウム4 糖尿病/慢性腎疾患

Sun. Dec 17, 2017 10:30 AM - 12:00 PM A会場 (メインホール)

座長:和泉 雄一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野)

[CS4-2] 糖尿病と歯周病の分子疫学

西村 英紀 (九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯周病学分野)

研修コード:2504

略歴
1985年 九州大学歯学部卒業
1988年 岡山大学歯学部附属病院助手
1990年 米国コロンビア大学留学
1995年 岡山大学歯学部附属病院助手
1997年 岡山大学歯学部附属病院講師
2003年 岡山大学大学院医歯学総合研究科助教授
2006年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授
2013年 九州大学大学院歯学研究院教授
2015年 九州大学歯学研究院副研究院長
  現在に至る
分子疫学という用語は,一般に従来の疫学的手法に分子生物学的な手法を組み込んで疾患(発症)と環境要因の間に介在する遺伝要因を分子レベルで解析する疫学の一手法と定義され,分子疫学的手法は主として感染症領域における高分解能の遺伝型のタイピングによる病原体の分布の解析や発がんにおける宿主の遺伝要因の解析に用いられてきた。とりわけ後者は,生体内のいわゆるバイオマーカーを指標として用い,遺伝要因と疾患との相関関係を見出すことに止まらず因果関係を解明しようとしたアプローチの一つととらえることができ,感度の高いバイオマーカーの採用により,がんの疾患感受性の判定や発症前リスク診断を可能にすると言われる。重要なポイントは,バイオマーカーを用いた解析であることから,疾患発症の分子基盤を正しく理解し,分子基盤に基づいて分子マーカーを抽出し,用いる必要がある点にある。
演者はこの分子疫学を少し拡大解釈し,糖尿病と歯周病の因果関係を考察するツールとして用いることも有用ではなかろうかと考えている。『歯周病治療によって糖尿病の血糖コントロールが改善する』か否かについては,これまで数多くの研究がおこなわれてきたが,近年の複数のスタディを除けば,その多くはいわゆる従来の疫学的なアプローチであり,分子疫学に基づくものではない。したがって,歯周病治療と血糖コントロールの間には大きなブラックボックスが介在し,相関を見た研究が圧倒的多数であった。分子疫学的手法に則るのであれば,歯周病治療でなぜ糖尿病の血糖コントロールが改善するのか,その分子基盤を理解したうえで,①どのような歯周病を有するどのタイプの糖尿病に対して,②何をバイオマーカーとして,③いかなる歯周治療を行い,④どの程度のマーカーの推移を主要評価項目とすると,⑤どのような機序で血糖コントロールが改善する(あるいはしない)かを突き詰めて考えなければならず,またそのようなアプローチによってのみ一貫性のある結果が得られるはずである。
本シンポジウムでは,この概念に基づいて演者らがこれまでに行ってきた糖尿病と歯周病の因果関係の解明を目的とした基礎・臨床研究を包括的に紹介することで,医科歯科双方の相互理解を深め,シンポジウムの究極の目的である医科歯科連携を一層進めるための一助としたいと考えている。同時に従来の単なる疫学的アプローチの問題点についても一緒に考えてみたい。