[SY1-2] 歯周病原細菌の血清抗体価検査の伝統と革新
研修コード:2504
略歴
1986年3月25日 岡山大学歯学部歯学科 卒業
1990年3月25日 岡山大学大学院歯学研究科 修了
1990年4月1日 岡山大学歯学部附属病院 助手(第二保存科)
1992年4月1日 アメリカ合衆国ニューヨーク州イーストマンデンタルセンター 研究員(研究休職)
1994年12月1日 岡山大学歯学部 助手
1995年11月16日 岡山大学歯学部 助教授
2001年4月1日 岡山大学大学院医歯学総合研究科 助教授
2002年4月1日 岡山大学大学院医歯学総合研究科 教授
2004年4月1日 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
1986年3月25日 岡山大学歯学部歯学科 卒業
1990年3月25日 岡山大学大学院歯学研究科 修了
1990年4月1日 岡山大学歯学部附属病院 助手(第二保存科)
1992年4月1日 アメリカ合衆国ニューヨーク州イーストマンデンタルセンター 研究員(研究休職)
1994年12月1日 岡山大学歯学部 助手
1995年11月16日 岡山大学歯学部 助教授
2001年4月1日 岡山大学大学院医歯学総合研究科 助教授
2002年4月1日 岡山大学大学院医歯学総合研究科 教授
2004年4月1日 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
歯周病が口腔細菌の感染に始まる慢性炎症性疾患であることは十分に理解されている。さらにこの病態が,歯を失って摂食という口腔の機能を低下させるだけではなく,全身の健康に影響を与えることも十分に理解される時代になった。口腔という局所の歯科疾患の予防・治療は,健康の保持・増進に欠かせないものである。
この歯周病を捉える際に,歯科界はリハビリテーションを主体とした治療体系にあったので歯周組織の破壊の程度を把握する検査に偏っていた傾向にあった。これは,現代の歯周組織再生療法によって再感染を防止するという現在の治療概念にも適合するものではある。しかし,ペリオドンタル・メディスンを前面に出して医科歯科連携を図る現代においては,口腔細菌の感染とそれに対応する生体の反応性を捉えて,歯科界のみならず医科界でも理解される『医療界の共通言語』で歯周病を説明できなくてはいけない。
そのためには,歯周病の重症度を感染と炎症の観点で説明できることが大切であると考える。感染に関しては,歯周病原性細菌の定量性DNA検査や口腔細菌叢のバランスを見るマイクロバイオーム検査が提案されている。部位特異性や費用の問題があるにはせよ,応用が進められつつある。炎症に関しては,医科領域で汎用されているC反応性タンパク(CRP)検査を応用が進められているが,歯周病の影響は高感度CRPで捉えることができるものであり,それ故に流行性感冒や生活習慣病の存在によって目まぐるしく変化する全身状況にマスクされてしまうことが多い。
一方で,歯周病原性細菌に対する特異的免疫応答を捉えることは,歯周病がもたらした全身的な反応を把握している。古くは1970年のNisengard RJとBeutner EH(J Periodontol)に始まる。最近では,歯周病と全身性疾患との関連性を説明する指標として用いられるようになってきた。しかし,いずれも歯周病の重症度や全身性疾患との関連性を示すための説明に用いられることに留まっている。日本では,これらの目的のために検査キットが上市されたが,普及に至らずに廃版となっているのが現状である。
現在では,歯周病原性細菌のうち特異的な病原因子を捉える検査を望まれている。これによって,歯周病が関連する全身性疾患を説明することには繋がるが,これは研究段階である。一方で,現状の医科歯科連携を進めるうえでの歯科領域以外の医療関係者に歯周病を的確に捉える方法の一つとして,半世紀弱にわたる歯周病原細菌の血清抗体価検査に関する研究を,臨床検査の検体検査として樹立させ普及させることが重要と考える。この段階からは臨産学官の一層の連携が必要であり,現時点でP. gingivalisに対するIgG抗体価を高速自動化した機器で検査できる段階まで準備はできている(日本歯科医学会総会2016で発表)。次は,歯周病学会とともに社会がジャンプする段階である。
今回のシンポジウムでは,歯周病原細菌の血清抗体価検査のブリーフヒストリー,発展の方向性,問題点,そして今後への展望に関して,演者の考えを示し,皆さまのご意見を賜りたい。
この歯周病を捉える際に,歯科界はリハビリテーションを主体とした治療体系にあったので歯周組織の破壊の程度を把握する検査に偏っていた傾向にあった。これは,現代の歯周組織再生療法によって再感染を防止するという現在の治療概念にも適合するものではある。しかし,ペリオドンタル・メディスンを前面に出して医科歯科連携を図る現代においては,口腔細菌の感染とそれに対応する生体の反応性を捉えて,歯科界のみならず医科界でも理解される『医療界の共通言語』で歯周病を説明できなくてはいけない。
そのためには,歯周病の重症度を感染と炎症の観点で説明できることが大切であると考える。感染に関しては,歯周病原性細菌の定量性DNA検査や口腔細菌叢のバランスを見るマイクロバイオーム検査が提案されている。部位特異性や費用の問題があるにはせよ,応用が進められつつある。炎症に関しては,医科領域で汎用されているC反応性タンパク(CRP)検査を応用が進められているが,歯周病の影響は高感度CRPで捉えることができるものであり,それ故に流行性感冒や生活習慣病の存在によって目まぐるしく変化する全身状況にマスクされてしまうことが多い。
一方で,歯周病原性細菌に対する特異的免疫応答を捉えることは,歯周病がもたらした全身的な反応を把握している。古くは1970年のNisengard RJとBeutner EH(J Periodontol)に始まる。最近では,歯周病と全身性疾患との関連性を説明する指標として用いられるようになってきた。しかし,いずれも歯周病の重症度や全身性疾患との関連性を示すための説明に用いられることに留まっている。日本では,これらの目的のために検査キットが上市されたが,普及に至らずに廃版となっているのが現状である。
現在では,歯周病原性細菌のうち特異的な病原因子を捉える検査を望まれている。これによって,歯周病が関連する全身性疾患を説明することには繋がるが,これは研究段階である。一方で,現状の医科歯科連携を進めるうえでの歯科領域以外の医療関係者に歯周病を的確に捉える方法の一つとして,半世紀弱にわたる歯周病原細菌の血清抗体価検査に関する研究を,臨床検査の検体検査として樹立させ普及させることが重要と考える。この段階からは臨産学官の一層の連携が必要であり,現時点でP. gingivalisに対するIgG抗体価を高速自動化した機器で検査できる段階まで準備はできている(日本歯科医学会総会2016で発表)。次は,歯周病学会とともに社会がジャンプする段階である。
今回のシンポジウムでは,歯周病原細菌の血清抗体価検査のブリーフヒストリー,発展の方向性,問題点,そして今後への展望に関して,演者の考えを示し,皆さまのご意見を賜りたい。