日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウムII 歯周病専門医の育成を考える

2017年12月16日(土) 13:00 〜 14:30 B会場 (Room A)

座長:三谷 章雄(愛知学院大学歯学部歯周病学講座)

[SY2-1] 歯科医師臨床実習ならびに臨床研修プログラムにおける歯周病治療指導と認定医・専門医への誘い~松本歯科大学病院単独型臨床研修における歯周病治療ベースとした研修の取り組み~

音琴 淳一 (松本歯科大学病院総合口腔診療部門/研修管理委員会)

研修コード:2111

略歴
1989年3月 日本大学大学院 修了
1989年4月 日本大学保存学第Ⅲ講座 助手
1990年9月 テキサス大学サンアントニオ校 Postdoctoral fellow(~1992年9月)
1996年6月 日本大学保存学第Ⅲ講座 講師(専任扱)
1997年4月 松本歯科大学歯周治療学講座 講師
1998年4月 松本歯科大学歯周治療学講座 助教授
1999年4月 ロンドン大学Eastman Dental Institute Visiting Lecturer (~2000年3月)
2001年9月 松本歯科大学教育学習支援センター 教授(~2011年3月)
2001年4月 松本歯科大学大学院健康増進口腔科学講座(兼) 教授 現在に至る
2011年4月 松本歯科大学病院総合診療室(兼) 教授 (総合口腔診療部門 2017年4月~現在に至る)
現在,歯科医学教育プログラムはアウトカム主体型に変貌を遂げている。歯周病学の座学と基礎実習を経て参加する臨床実習を習得した歯科学生は,必修化になった臨床研修に歯科医師として参加する。この過程において我々指導者は,1口腔単位の総合的診療計画の歯周病認定医・専門医に必要な基本的臨床手技が習得できるようなプログラムを構築できていることが望ましい。
松本歯科大学病院では臨床研修必修化以前から現在まで,病院機構改革に伴って卒直後臨床研修プログラムを数種類実施しており,その中で歯周病治療については数種類の方法で研修と指導を行った。今回は臨床研修における歯周治療を行った4つのシステムを紹介しながら,その取り組みおよび客観的データにおける研修成果の比較を示す。
松本歯科大学病院における卒直後臨床研修は,臨床研修必修化になる以前の臨床研修制度(SYSTEM 0)では,1口腔単位の臨床研修を推進しておらず,歯周治療症例を歯周組織検査,スケーリング・ルートプレーニングを必修症例としていた。臨床研修必修化が開始される直前の2001~2005年度に行なった臨床研修における歯周治療指導方法(SYSTEM 1)においては,1口腔単位の診療配当が開始された。2006~2010年度まで行なった歯周治療指導方法(SYSTEM 2)では,配当症例数が増加し,歯周病認定医・専門医の指導が充実した。さらに臨床研修管理場所の特徴は,SYSTEM 2以降は臨床研修歯科医の歯周治療に使用できる専用診療チェアを確保することができた。2011年度以降の歯周治療指導方法(SYSTEM 3)では,歯周治療症例を拡大解釈し,保険治療の流れに沿って,主訴においては急性症状がない場合,あるいは急性症状が消退してから,患者の同意の下に1ヶ月余にわたり歯周基本治療を行い,その間には歯科衛生士による口腔清掃指導を必ず1回以上行いながら,治療前後の口腔内写真撮影を必修とした。
研修成果は,歯周基本治療症例数はSYSTEM2までは課された症例数を越す研修歯科医は多くなかったが,SYSTEM 3はSRPなどの歯周基本治療3回目まで行う症例数や(数は多くないが)歯周外科手術を行う症例も増加した。また研修内容の充実は歯周治療後のメインテナンスやSPTへの移行症例が増加した。さらに症例報告で示される症例は歯周治療を含むものが増加した。
このように研修歯科医に対して,歯周基本治療を積極的に行う環境設定が出来たことで臨床研修歯科医の1口腔単位の治療の関心も高まり,治療内容の充実に繋がった。現在の指導SYTEM 3は,研修修了後にどの診療現場においても歯周治療を行うことができ,治療データを採取し,保存することを習慣化することで歯周病認定医/専門医に移行する道筋が出来ていると推察される。
本講演では歯周病専門医像や専門医の担うべき役割について概説し,上記に加えて,数年前から診療参加型臨床実習の充実の現状と臨床実習前・修了時の技能試験の導入検討の現状も紹介したい。一方では第一,第二学年におけるプロフェッショナリズム教育あるいは歯科学生に対するキャリア教育の中で歯周病を含めた認定医・専門医を紹介するプログラムや臨床系講座・大学院研究科紹介の機会を導入しているので,併せて紹介していきたい。