日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウムII 歯周病専門医の育成を考える

2017年12月16日(土) 13:00 〜 14:30 B会場 (Room A)

座長:三谷 章雄(愛知学院大学歯学部歯周病学講座)

[SY2-3] これからの歯周病専門医に求められるもの ~認定歯科衛生士と共に働きリスペクトされる歯科医師~

坂上 竜資 (福岡歯科大学口腔治療学講座歯周病学分野)

研修コード:2111

略歴
1984年 北海道大学歯学部卒業
  北海道大学歯学部歯科保存学第2講座 医員
1986年 米国オレゴン健康科学大学ポストグラジュエートコース入学
1988年 同上修了 米国歯周病専門医
1989年 北海道大学歯学部 助手
1994年 博士(歯学)(北海道大学)
1996年 北海道大学歯学部 講師
2003年 福岡歯科大学口腔治療学講座歯周病学分野 教授
日本歯周病学会指導医 認定医委員会委員長(2013~2014年),専門医委員会委員長(2015~2016年),歯科衛生士関連委員会委員長(2017~2018年);日本歯科保存学会指導医;日本臨床歯周病学会指導医;米国歯周病学会ボード認定専門医
本シンポジウムでは,栗原理事長と座長の三谷先生から示されたタイトル「これからの歯周病専門医に求められるもの〜認定歯科衛生士と共に働きリスペクトされる歯科医師〜」に沿って話をする。私はこれまで,日本歯周病学会の認定医委員会,専門医委員会,歯科衛生士関連委員会に委員長として携わってきた。また,日本歯科保存学会と日本臨床歯周病学会の認定委員会にも携わっており,これらの経験を踏まえて歯周病専門医制度に関する私の考えを述べる。
(1)歯周病の特徴と治療について 歯周炎は,病変が進行し歯周ポケットが深化するほど治療が難しくなる病気である。例えば歯周炎発症前の患者に対しては,経験の少ない歯学部学生でも,簡単なスケーリングだけで患者を健康な状態に留めておくことができる。しかし重度の歯周炎患者の治療では,どんなに経験を積んだ歯周病専門医でも困難を伴う。重度歯周炎患者の大臼歯では歯周ポケット内に根分岐部が露出しており,この部位を清潔に保てないことが最大の要因である。したがって歯周病治療の成功のためには,人生の早期からの予防と治療介入が最も求められている。
(2)歯周病専門医制度と一般医について 歯周病専門医は,「すでに歯周病になってしまった人を治療する専門家」であり,同時に「歯周病を予防する専門家」でもあるが,比重は前者にある。また後者は,主に一般医(generalist)が担っている。しかし,一般医のレベルはまちまちであり,歯周病の検査(ポケットプロービング,分岐部検査,咬合検査など),口腔清掃指導,デブライドメント(徹底的な根面の歯石除去など)に関しては技量が不十分である場合もある。反論もあろうが,多くの患者が歯科医院にかかりながら歯周病になっている現状がある。今後,日本歯周病学会が日本歯科医師会をサポートして,一般医と歯科衛生士を訓練するプログラムを作成し,患者の良好な受け皿を作る必要がある。
(3)歯科衛生士の役割 日本歯周病学会の認定衛生士数はすでに1000名を超え,能力もやる気も十分な歯科衛生士のパワーには目を見張るものがある。歯周病の蔓延を改善するためには,歯科衛生士の役割は非常に大きく今後の展開にとって鍵ともいえる。歯科衛生士が十分に力を発揮して歯周病治療ができるように,さらに環境を整える必要がある。
(4)大学における歯周病・補綴専門医教育の試み 福岡歯科大学は,全国に先駆けて歯周病認定医,インプラント認定医,補綴専門医,学位(歯学博士)を同時に目指せる4年制プログラムを,山下潤朗教授が中心となって開設した。この概要を紹介する。
(5)最後に 本大会のメインテーマは「歯周病撲滅に向けて!」という華々しいものである。歯周病治療の特効薬が見つかっていない現在,歯周病撲滅の鍵は「人生の早期から歯肉炎の発症と歯周炎の進行を共に抑えること」である。日本歯周病学会の専門医,認定医,認定衛生士を中心に,会員が一丸となって取り組み,歯周病を撲滅していく環境を作りたいものである。