[SY3-2] 家族症例を用いた侵襲性歯周炎原因遺伝子の解明
研修コード:2504
略歴
1996年 広島大学歯学部歯学専門課程卒業
2000年 広島大学大学院歯学研究科歯学臨床系修了
広島大学歯学部附属病院助手(第二保存科)
2001年 広島大学歯学部助手(歯科保存学第二講座)
2005年 日本歯周病学会専門医 第835号 取得
2007年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野助教
2012年 米国Missouri大学Kansas City校 Department of Oral Biology留学
2013年 日本歯周病学会指導医 第244号 取得
2015年 広島大学病院講師
広島大学病院診療准教授
現在に至る
1996年 広島大学歯学部歯学専門課程卒業
2000年 広島大学大学院歯学研究科歯学臨床系修了
広島大学歯学部附属病院助手(第二保存科)
2001年 広島大学歯学部助手(歯科保存学第二講座)
2005年 日本歯周病学会専門医 第835号 取得
2007年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野助教
2012年 米国Missouri大学Kansas City校 Department of Oral Biology留学
2013年 日本歯周病学会指導医 第244号 取得
2015年 広島大学病院講師
広島大学病院診療准教授
現在に至る
侵襲性歯周炎は若年者に発症し,プラークの残存は比較的軽度であるにもかかわらず,急速に著しい歯周組織破壊を惹起する歯周炎である。侵襲性歯周炎に関する報告は数多く存在し,家系内に集積する症例が存在することはよく知られている。しかし,原因遺伝子の同定を含め,分子あるいは遺伝子レベルでの発症の原因の解明は十分になされていないのが現状である。
Exome解析法は,全ゲノムのうちエキソン配列のみを網羅的に解析する方法である。エキソンのサイズは全ゲノムの約1-1.5%に過ぎないが,タンパク質に翻訳される領域であることから,機能的に重要であり,遺伝性疾患の多くがエキソン領域の変異によって引き起こされると推定されている。そのため全ゲノム配列解析に比べ,効率よく疾患関連遺伝子を同定できる方法として注目されている。Exome解析法を用いれば,linkage解析法によって,絞り込まれた関連遺伝子の含まれる染色体候補領域内に存在する遺伝子変異を効率よく検出することができる。遺伝学的手法で関連遺伝子を同定しようとする場合,同一遺伝子座に関連遺伝子が存在することが重要であるため,発症者が複数存在する家系の存在が必要となる。現在,少子化の影響もあり,大家系の数は少なくなっているのは事実であるが,広島大学病院歯周診療科に通院する侵襲性歯周炎患者の家系で,常染色体優性遺伝性の遺伝形式をとり,同一家系内に複数の患者が3世代にわたって認められる大きな家系が存在した。
私どもは,本家系内の侵襲性歯周炎発症者3名のDNAを用いて,Exome解析法によって候補遺伝子変異を7つに絞り込んだ。さらに,本家系DNAサンプルを用いたLinkage解析とセグリゲーション解析の結果,1つのミスセンス変異を,本家系に発症する侵襲性歯周炎の原因遺伝子候補変異として同定した。
他の家系や約100例の孤発例からは本変異が認められなかったので,in vivoにおける解析を進めることとし,TALENを用いたゲノム編集を行うことによって,本変異をもつノックイン(KI)マウスを作成した。その際,様々なdeletionおよびinsersionを持つ個体が得られたが,7bpのdeletionを持つ個体はflameshiftを起こすことからノックアウト(KO)マウスとして実験に使用した。
これらのマウスの上顎第二臼歯にligature結紮を行ったところ,wild type マウスに比べてKI heteroマウス,KI homoマウスおよびKOマウスにおいて有意な歯槽骨の吸収が認められた。本変異を有する遺伝子は宿主の免疫機構に関与することが考えられることから,本変異を有する遺伝子の機能不全によって宿主の免疫機構に変化が起こり,歯周組織の高度な破壊が起こったことが示唆された。
本シンポジウムでは侵襲性歯周炎の原因遺伝子の同定の重要性,さらに原因遺伝子変異が,細胞レベルで病態メカニズムに関与することを調べるためにKIマウスを作成することによって,本家系侵襲性歯周炎の病態解明を目指した研究成果について発表する。
Exome解析法は,全ゲノムのうちエキソン配列のみを網羅的に解析する方法である。エキソンのサイズは全ゲノムの約1-1.5%に過ぎないが,タンパク質に翻訳される領域であることから,機能的に重要であり,遺伝性疾患の多くがエキソン領域の変異によって引き起こされると推定されている。そのため全ゲノム配列解析に比べ,効率よく疾患関連遺伝子を同定できる方法として注目されている。Exome解析法を用いれば,linkage解析法によって,絞り込まれた関連遺伝子の含まれる染色体候補領域内に存在する遺伝子変異を効率よく検出することができる。遺伝学的手法で関連遺伝子を同定しようとする場合,同一遺伝子座に関連遺伝子が存在することが重要であるため,発症者が複数存在する家系の存在が必要となる。現在,少子化の影響もあり,大家系の数は少なくなっているのは事実であるが,広島大学病院歯周診療科に通院する侵襲性歯周炎患者の家系で,常染色体優性遺伝性の遺伝形式をとり,同一家系内に複数の患者が3世代にわたって認められる大きな家系が存在した。
私どもは,本家系内の侵襲性歯周炎発症者3名のDNAを用いて,Exome解析法によって候補遺伝子変異を7つに絞り込んだ。さらに,本家系DNAサンプルを用いたLinkage解析とセグリゲーション解析の結果,1つのミスセンス変異を,本家系に発症する侵襲性歯周炎の原因遺伝子候補変異として同定した。
他の家系や約100例の孤発例からは本変異が認められなかったので,in vivoにおける解析を進めることとし,TALENを用いたゲノム編集を行うことによって,本変異をもつノックイン(KI)マウスを作成した。その際,様々なdeletionおよびinsersionを持つ個体が得られたが,7bpのdeletionを持つ個体はflameshiftを起こすことからノックアウト(KO)マウスとして実験に使用した。
これらのマウスの上顎第二臼歯にligature結紮を行ったところ,wild type マウスに比べてKI heteroマウス,KI homoマウスおよびKOマウスにおいて有意な歯槽骨の吸収が認められた。本変異を有する遺伝子は宿主の免疫機構に関与することが考えられることから,本変異を有する遺伝子の機能不全によって宿主の免疫機構に変化が起こり,歯周組織の高度な破壊が起こったことが示唆された。
本シンポジウムでは侵襲性歯周炎の原因遺伝子の同定の重要性,さらに原因遺伝子変異が,細胞レベルで病態メカニズムに関与することを調べるためにKIマウスを作成することによって,本家系侵襲性歯周炎の病態解明を目指した研究成果について発表する。