日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウムV 口腔インプラント治療の新しい方向性

2017年12月17日(日) 08:20 〜 09:30 C会場 (アネックスホール)

座長:申 基喆(明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野)

[SY5-2] インプラント周囲疾患の罹患率とリスク因子について

小方 頼昌 (日本大学松戸歯学部歯周治療学講座)

研修コード:2609

略歴
1984年 日本大学松戸歯学部卒業
1988年 東京医科歯科大学大学院歯学研究科修了
1988年 日本大学助手松戸歯学部歯周病学講座
1991年 日本大学講師松戸歯学部歯周病学講座
1992~1993年 カナダトロント大学歯学部歯周生理学部門 研究員
2001年 日本大学教授松戸歯学部歯周病学講座
2005年 日本大学教授松戸歯学部歯周治療学講座

2002年 日本歯周病学会指導医
2003年 日本歯科保存学会保存治療指導医
2004年 日本臨床歯周病学会指導医
2014年 日本臨床歯周病学会歯周インプラント指導医
インプラント周囲疾患は,インプラント治療後の合併症の中で最も多く,インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎に分けられる。過去の報告では,インプラント周囲粘膜炎の罹患率は,19~65%で平均43%,インプラント周囲炎の罹患率は,1~47%で平均22%である。
日本でのインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の罹患率とリスク因子に関する詳細な報告が過去に無いため,日本歯周病学会指導型研究として「歯周病患者におけるインプラントの実態調査」を行った。対象は,日本歯周病学会会員の診療施設で歯周治療終了後にインプラント治療を行い,治療終了後3年以上経過して調査期間(2012年10月~2013年9月)中にインプラントメインテナンスを受診し,本調査の主旨を説明して同意が得られた患者である。
調査項目は,①年齢,性別,喫煙,飲酒,投薬,全身疾患の有無 ②インプラント治療前と現在の歯周病検査,抜歯の原因,X線写真,口腔内写真 ③インプラントの種類,手術形式,補綴様式,治療終了からの期間 ④インプラント周囲溝のプロービング深さ(PD)とBOP,角化粘膜幅と可動性の有無,改良型Plaque Index,改良型Sulcus Bleeding Index,排膿および動揺 ⑦同一口腔内のインプラントと残存歯の最深PD部の歯周病原菌検査 ⑧指尖血清抗体価検査である。
34医療機関で267症例の実態調査を実施し,その内訳は男性110名,女性157名,平均年齢62.5±10.7歳,残存歯数20.9±5.9本,インプラント埋入数は3.8±3.2本であった。インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の診断基準は,軽圧でのプロービング時に出血を認める場合をインプラント周囲粘膜炎,インプラント周囲骨の吸収とプロービング時の出血(または排膿;必須ではない)を認める場合をインプラント周囲炎とした。インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の割合は,患者単位で33.3%および9.7%であり,リスク因子を解析した結果,口腔衛生状態とインプラント治療前の歯周炎の程度がインプラントの予後に関係する結果となった。
本シンポジウムでは,「インプラント治療の長期安定性」「インプラント周囲組織の健康維持」「これらを達成するための問題点やその解決法」について,「歯周病患者におけるインプラントの実態調査」の成果を踏まえて,お話したいと思います。