粉体粉末冶金協会2019年度春季大会(第123回講演大会)

今回の講演特集

講演特集

1.粉末製造技術とその応用
 粉末製造技術は粉末冶金を始めとする粉末利用産業の基盤となる技術です.本特集は、金属粉からセラミックス粉,さらにはそれらの複合粉に至る幅広い種類の粉末の製造技術およびそれらの粉末の応用に関して幅広く議論することを目的としています.
 粉末製造技術には,アトマイズ法,粉砕法,電解あるいは化学還元法等の製造技術は勿論のこと,粉末の物理的あるいは化学的特性の改善を目的とした混合や表面処理など種々の二次加工技術も含まれます.製造された粉末の応用方法につきましても,粉末をそのまま使う用途,圧粉体としての用途,焼結原料としての用途に加え,最近注目を集めている積層造形用等も含め,あらゆる形態が議論の対象です.さらに,機械部品だけでなく磁性材料や電子部品等の機能材料に至る幅広い分野への応用についても議論したいと考えております.皆様からの積極的な参加を期待します.

 
2.各種粉末の焼結技術および焼結機構の新たな展開
 本特集は,最近注目を浴びている3次元粉末積層焼結造形法に加え,金属粉末射出成形法による複雑形状部品の作製,パルス通電加熱やミリ波・マイクロ波加熱などの新しい焼結法について意見交換するとともに,粉末押出し法などの加圧焼結および従来の固相焼結,液相焼結につて粉体粒子の焼結メカニズムの理解を踏まえた焼結技術の現状と将来を展望することを企画します.各種粉末の焼結技術は,自動車を始めとする精密機械部品の製造に対して基本的にますます重要となっています.雰囲気や加熱条件,熱源の操作条件,電磁場などの諸条件の影響,微量添加元素による焼結の促進効果,また,粒子間結合ネックサイズレベルの構造制御が材料機能特性に直接関わってくるため,基礎的な実験的・理論的研究,さらには新しい焼結法の提案なども含め,焼結技術に関連した講演を広く募集します.
 
3.磁性材料・磁気デバイスにおける微細構造制御と機能発現
 ハード磁性,ソフト磁性を問わず,またバルク,薄膜,微粒子等の形態を問わず,磁性材料内部の微細構造の制御は,その磁気特性を左右することから,応用先である各種磁気デバイスの新機能・高機能発現にとって重要な技術となっています.本特集では,磁性材料・磁気デバイスにおけるナノメートルからマイクロメートルレベルまでに及ぶ微細構造の創製・制御・評価技術と,それらの技術によって誘起される機能と応用に関する話題を募集し,新しい研究開発に向けて展開できるような討論を実施したいと考えています.エネルギー変換デバイス・装置で用いられる,永久磁石用ハード磁性材料では,新規磁石材料や新規作製プロセスなどについても注目し,希土類系からフェライトまで,ソフト磁性材料についてはフェライトから圧粉磁心などでも用いられる金属系磁性粉まで幅広く募集します.いずれの材料・デバイスも日本が世界をリードする上で重要なものとなっています.多くの成果報告を期待するとともに活発な討論をしたいと思います.奮ってご参加下さい.
 
4.粉末成形・加工による特異組織構造形成と高次機能化
 粉末焼結材料は,これまでに自動車産業やエレクトロニクス産業を支える基盤素材・部品として国内外で実用化される中,環境調和を可能とするグリーン材料・プロセスの開発や機能・特性の更なる高度化により新興国での廉価部材との差別化を進める一方,有機/無機材料の複合化や3次元造形技術など粉末冶金プロセスの特徴を活かし,航空機産業や医療機器分野への新規展開を見据えた基盤研究が行われています.
本特集では,基本プロセスとなる粉末成形と固/液相焼結に加えて,金属材料の高強靭化を可能とする微細/粗粒混合調和組織形成,力学特性の飛躍的向上を目指した炭素系ナノ粒子との複合化,塑性加工との融合による特異な集合組織形成や溶解・鋳造法では実現し得ない原子・ナノスケールでの複合組織構造化,3次元多孔質構造化などに係る新たな粉末材料・プロセス設計に関して,実験解析および計算科学を通じた粉末焼結材料の高次機能化と機構解明に関する講演を広く募集しますので奮ってご参加下さい.

 
5.光機能材料の新展開
 近年,新しい光物性や優れた光機能を有する物質や材料にかかわる研究がますます重要になっています.たとえば,光導波路,光変調素子,光記録材料など情報・通信に関するデバイスは,今後ますます伸展が予想される大容量の情報処理の担い手として大きな注目を集めています.また,フォトニック結晶やメタマテリアルなど人工的な構造に基づき特異な現象を導く光機能材料,近接場光学のような物質と光の相互作用を利用した新規評価技術も活発な研究対象となっています.光触媒や太陽電池などは新しい物質やデバイスの提案がなされ,実用的な観点から注目されています.さらには金属ナノ構造のプラズモンと光の相互作用を対象とするプラズモニクスの分野も活発な研究が進められています.光機能材料の研究・開発に関する情報交換を行い,材料の新たな展開を探る目的で,講演特集として光機能材料の新展開を設けました.物質の基礎的な光物性,優れた光機能発現のための材料プロセスと特性評価,デバイスとしての応用など,さまざまな観点からの講演を募集します.奮ってご参加下さい.
 
6.イオン伝導材料
 固体中のイオン伝導について,1839年にマイケル・ファラデーが初めて報告して以来,多くの研究者に興味を持たれてきました.特にイオンが高速で固体中を移動する現象は,様々な電気化学素子を開発する上でのキーマテリアルであることから,注目を集めています.このような材料の探査的研究ならびにその応用展開に関する研究は,持続可能な低炭素社会を実現していくためのエネルギー利用技術への取り組みにも大きく寄与しています.近年,特にエネルギー問題の観点から,全固体電池のような新しい蓄電デバイスが注目を浴びており,このような蓄電デバイスに不可欠なイオン伝導材料に関する研究の重要度が増しています.
本特集では,イオン伝導性材料ならびに蓄電デバイスを含む種々の電気化学素子に関する話題について,この分野に興味を持っておられる方々の講演を募集します.様々なイオン伝導材料やこれを用いたデバイス(各種蓄電池や燃料電池など),さらにはこれらのイオン伝導材料の新たな合成方法などについて,幅広い領域での講演発表を募集します.未完成の段階でも,アイディアの段階でも結構ですので,奮ってご参加下さい.

 
7.遷移金属(希土類)材料における新規電子物性
 新たな量子物性を生み出す新物質の創成とその評価は,物性科学の基礎研究,実用研究の両分野の発展に大きな貢献をもたらす重要な役割を担っています.遍歴電子磁性化合物や強相関系における重い電子化合物,高温超伝導体やエキゾティック超伝導体,フラストレート系磁性化合物,量子スピン系磁性化合物,強磁性強誘電性マルチフェロイック化合物,トポロジカル電子系化合物,強磁性強誘電性マルチフェロイック化合物,フェライトや希土類磁石などの永久磁石材料など,基礎研究・実用研究の両面での遷移金属化合物系の発展は目覚ましいものがあります.新たな遷移金属(希土類)化合物の創成ならびにその構造・組織や物性の評価が,新たな量子物性現象を創発し,実用に関しても新機能応用や機能性の飛躍的な向上につながっていくことが期待されます.そのような新たな遷移金属(希土類)化合物の合成・構造的化学的評価・粉末冶金的組織評価・電子物性評価や今後の展開・展望について,遷移金属化合物の固体化学や粉末冶金の立場から議論したいと思います.奮ってご参加下さい.
 
8.金属ガラス・ナノ結晶材料および高エントロピー合金の構造制御と応用に関する新たな展開 (共催:日本材料学会金属ガラス部門委員会)
 金属ガラスやナノ結晶材料は理想的な均一構造を有し,バルク形状での作製のみならず超微細加工用構造材料としての応用が可能です.近年,金属ガラス相とナノ結晶相の複合化,塑性変形誘起による構造変化,精密な熱処理や強加工を加えることによる構造制御を利用した高強度化,高延性化の研究が活発になるとともに,新たな視点からの分析技術の導入や計算機支援による解析が始まっています.さらに、金属ガラスと同様に多成分系合金でありながらも、その混合のエントロピー増加に着目した高エントロピー合金の研究も活発になり,金属ガラス・ナノ結晶材料の研究は新しい段階に入ったといえます.
本特集では,金属ガラス・ナノ結晶材料および高エントロピー合金に関する基礎から応用までの新たな展開を示唆する講演を広く募集します.(1)構造,(2)相安定性,(3)計算材料科学予測,(4)力学特性,変形・破壊,(5)磁気的性質,(6)化学的性質,(7)粉末冶金,(8)接合,(9)融体加工,(10)応用分野など,多くの方々のご参加をお願いします.