第51回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会

日本心血管理学療法学会
カレントトピックス

Sat. May 28, 2016 2:40 PM - 3:40 PM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:木村雅彦(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)

[KS1065-2] 重症心不全に対する理学療法

田屋雅信 (東京大学医学部附属病院リハビリテーション部)

わが国の心不全患者は2030年までに増加の一途をたどると推計されている。2014年に心不全入院した患者は約23万人で,前年より1万人も増加しており,今後心不全による社会的負担はより大きくなるものと予想される。
心不全は慢性的な病態からの急性増悪により,入退院を繰り返し進行していく連続性のある病態である。アメリカ心臓病学会で提案されたAHA/ACCステージ分類によると無症候性のステージ(A,B)から心不全症状が認められるステージC,難治性のステージDへと進行すると考えられている。各病期において適切な薬物療法(β遮断薬,ACE阻害薬),非薬物療法(デバイス治療,運動療法,患者教育)を実施することが求められるが,特にステージDの重症心不全に対する理学療法については依然確立されていない。ステージDの患者は病態が多岐にわたり複雑化しており,補助人工心臓装着前のリスク層別化(INTERMACS)でも軽労作可能状態から重度の心原性ショックまで重症度がさらに6段階に分けられ,それぞれのレベルごとに理学療法の層別化を行うことも必要と考えられる。実際にはどのレベルで運動をして安全なのか,どのような運動療法を選択し,どの程度の強度の運動なら効果的なのか,個々の患者に応じて判断しているのが現状である。さらには,すべてのステージDの患者が補助人工心臓装着を含めた心臓移植で対応できるわけではない。例えば,肺高血圧,慢性腎臓病などの合併症,高齢やソーシャルサポートの欠如などの環境因子,肥満や糖尿病など多様な臨床像を呈している場合である。また,カヘキシア,サルコペニアといった骨格筋異常を合併していることも多く,その点に注目した運動療法や栄養療法の治療についても期待されている。
本セッションでは,重症慢性心不全患者に対する運動療法の実際について,自験例を紹介しながら進めていきたい。