第51回日本理学療法学術大会

講演情報

産業理学療法部門

産業理学療法部門
勤労者の腰痛予防への取り組み

2016年5月29日(日) 13:00 〜 14:00 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:山崎重人(マツダ病院リハビリテーション科), 高野賢一郎(関西労災病院 治療就労両立支援センター)

[KS1117-1] 産業理学療法士とともに歩みたい新たな視点に立った職場の腰痛対策の提案

松平浩 (東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)

厚生労働省が公表する業務上疾病の発生件数(休業4日以上)では,腰痛は全職業性疾病の約6割を占め,長年に渡り第1位であり,職場における従来型の腰痛対策が奏功しきれていないことを露呈したデータとも解釈できる。近年,グローバルに腰痛管理上重要視されていることとして,以下の3点が挙げられる。
1.Biopsychosocial modelで捉える
2.画一的な対策ではなく層化ケアを行う
3.セルフマネジメントの重要性を理解させる
労働衛生上の指導としては,作業姿勢や重量物挙上対策,介護・看護領域でのノーリフトポリシーも含めた作業環境管理,作業管理をブラッシュアップしつつ,恐怖回避思考が腰痛発症後の予後に強く影響することを広く共通認識とし,安易な安静指導は慎み「痛みがあっても心配しすぎずできるだけ普段どおりに仕事や生活をしましょう」という安心感と希望を与える方向へ転換したほうが,プレゼンティズムを含む社会的労働損失という観点からも望ましいといえる。一方,慢性化した仕事に支障をきたす非特異的腰痛には,周囲の支援不足,仕事への不満,ワーカホリックなど職場に関連する心理社会的ストレスによる脳dysfunctionが主因である可能性もある。腰痛だけでなく身体化を疑う症状が複数あることなどから,過度な疲労やストレスが蓄積していると判断できる勤労者に対しては,適度な休養が労働衛生における健康管理として必要であろう。
以上踏まえたうえで,演者は産業理学療法士と連携したポピュレーションアプローチによる予防対策を重視しており,その代表として「腰痛借金」対策としての“パワーポジション”“これだけ体操”や“脳内ドパミン・セロトニンイメージ作戦”の意識づけがある。最近,全身的な筋骨格系痛予防を兼ねたリフレッシュ目的のストレッチ“美ポジ体操”を開発した。