第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)02

2016年5月27日(金) 16:00 〜 17:00 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:潮見泰藏(北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科)

[O-ED-02-5] グローバル保健人材育成へ向けての本学理学・作業療法学専攻のアメリカ研修の教育効果についての検討

久留利菜菜 (群馬大学大学院保健学研究科)

キーワード:学生, 国際, 教育

【はじめに】

我が国の高齢化率は急速に進んでおり,2006年からは生産年齢人口や総人口も減少を始めた。こうした中,外国人看護師が日本の病院に就労するようになってきており,今後,理学療法分野においても外国人スタッフと協働したり,外国人の患者を担当したりする機会が増えてくると予想され,グローバル保健人材の育成が益々重要になってくると考えられる。本学は1996年に医学部保健学科を設置した際に「保健医療分野において国際貢献ができる人材の育成」を目標の一つに掲げ,本専攻でも「国際感覚の涵養」を目的とした海外研修が検討された。2001年にはアメリカ合衆国にあるUniversity of Puget Sound(以下,UPS)及びUniversity of Washington(以下,UW)において,理学・作業療法学専攻の1~3期生を対象に第1回目のアメリカ研修が開催された。以後,本研修はほぼ隔年で開催されているが,その教育効果についての検討は殆どなされてこなかった。そこで今回,本研究の目的を本学のアメリカ研修プログラムの教育効果について検討することとした。

【方法】

2014年7月に学部の2,3年生及び大学院生を対象に本研修への参加者を募った。研修前の活動としては主にUPSとUWで行う英語のプレゼンテーションの準備を行い,12月には参加希望者を対象に英語のリスニング試験を実施した。研修は2015年3月22日~4月2日の日程で,前半はUPS,後半はUW及び関連施設で授業・実習等への参加・見学,また各大学にてプレゼンテーションを行い,週末にはホームステイを行った。研修後の活動としては帰国後すぐに「プログラムに対する満足度」「国際感覚」等についてのアンケート調査を行い,6月には2回目の英語のリスニング試験を実施した。英語のリスニング試験結果についてはSPSS19を用い,正規性の検定にはShapiro-Wilk検定を,研修前後での比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を行った。有意水準は5%未満とした。アンケート結果については肯定的な回答を5点~否定的な回答を1点に換算し集計した。

【結果】

今回の研修には学部学生7名が参加した。プレゼンテーションは3演題準備し,1演題につき20分程度の発表と質疑を行った。研修前後のリスニング試験の結果は,研修前に比べ研修後に有意な向上が認められた(p=.028)。アンケート調査の結果は,プログラムへの満足度は概ね高い結果が得られたが,最も満足度の低かったプログラムは「自分のプレゼンテーション」(3.29点)であり「もっと発音など正しく言えるようにしておきたかった」等のコメントがあった。国際感覚についても全体での平均値は4.47±0.30点であり概ね肯定的な結果であった。

【結論】

本研修プログラムは英語のリスニングスキルのみならず国際感覚を培う効果等も期待できると推察された。今後は研修前のプレゼンテーションの準備に加え,学生の英語力向上へ向けた積極的な支援的介入が必要であると考えらえる。