第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)04

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:松本泉(熊本駅前看護リハビリテーション学院 理学療法学科)

[O-ED-04-3] 臨床実習における不当待遇

継続調査から見えた問題点

松崎秀隆1,2, 原口健三2, 吉村美香1,2, 高嶋幸男2 (1.福岡国際医療福祉学院, 2.国際医療福祉大学大学院)

Keywords:臨床実習, 不当待遇, 教育指導方法

【はじめに,目的】臨床実習(以下,実習)は,理学療法士を養成する教育課程において多くの割合を占めており,学生の知的好奇心や学習意欲を刺激する重要な機会になっている。実習において学生は,技術だけでなく,時間厳守や整容など社会人としてのルールや,仕事に対する姿勢,職業倫理など医療人としての基本的マナーを学ぶ。この実習において実習指導者(以下,supervisor:SV)は,認知領域(知識),精神運動領域(技術),情意領域(態度)の指導を行うが,その教育指導方法は様々である。特に専門職としての適性や態度などの,情意領域(態度)の指導に重きを置いているSVも少なくない。著者らは,過去3年間にわたり実習に関係する不当待遇の実態調査を行ない,学校側の対策としてハラスメント委員会による学生サポートへの取り組みを行なってきた。その結果,一つの問題点を見出した。本研究の目的は,実習における教育指導方法の重要性をSVを含めた理学療法士に啓発し,より理論的な教育指導方法を醸成することにある。

【方法】平成25~27年度,理学療法学科に在籍し実習を経験した学生述べ160名(男性97名,女性63名),平均年齢は23.7±5.0歳を対象とした。実習終了直後に,不当待遇に関する自記式の質問紙調査を行なった。33項目からなり,「言葉による不当な待遇」,「身体へおよぶ不当な待遇」,「学業に関する不当な待遇」,「セクシャルハラスメント」,「性差別の経験」,「他科または他職種との関係」の6つの領域,それぞれに2~6項目の小項目を付け設問した。回答は,「不当待遇を経験した場合」または「不当待遇を受けたと感じた場合」は「ある」,「なし」に記載する方法を用い,終了後にその場で一斉に回収した。

【結果】実習において不当待遇を経験した学生の割合は,平成25年度が59.7%,平成26年度が76.7%,平成27年度が65.5%であった。つまり毎年,半数以上の学生が実習中に不当待遇を経験し,その数値に大きな変動を認めないことがわかった。

【結論】調査結果から,学校としてハラスメント委員会の充実,入学時のみであった学生へのオリエンテーションを実習直前にも実施し,不当待遇の抑制対策に取り組んだ。しかし,不当待遇の発生頻度に変化は認められなかった。そこで考えられたのが,教育指導方法というSV側の問題である。理学療法を業とする臨床家は,医学知識や技能の自己研鑽に努力を惜しまない。しかし,こと実習に関してSVが教育指導方法を学ぶ機会は殆どなく,「理学療法士を養成する」という熱意のみで,実習指導を行なっている可能性は高い。今後は,教育者として学習理論に則った教育指導方法を学ぶ必要性にも目を向ける必要性がある。そして,この学びが実習中の学生に対する不当待遇軽減に寄与することを期待している。