第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)05

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:酒井吉仁(富山医療福祉専門学校 理学療法学科)

[O-ED-05-6] 医療分野における臨床実習の内容に関する系統的レビュー

小向佳奈子1, 藤本修平2,3, 杉田翔4, 今法子3,5 (1.ポートアイランド病院, 2.株式会社メドレーメディア統括部, 3.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻, 4.練馬駅リハビリテーション病院, 5.河北リハビリテーション病院)

キーワード:診療参加型実習, クリニカルクラークシップ, 理学療法教育

【はじめに,目的】理学療法士の養成過程で,臨床実習は重要な位置づけであることは言うまでもない。しかしながら,実習方法に対する認識は,教育機関や実習施設によって異なることが報告されている(熊野ら,理学療法科学,2015)。実習方法について共通認識を持つ上で,他分野で行われている臨床実習の内容を把握することは有用である。内容把握の第一段階として,本研究では,医療分野の臨床実習教育がどのような方法で行われているか,系統的レビューにより明らかにすることとした。

【方法】本レビューは,PRISMA声明(PRISMA statement,2009)に準じて実施した。「実習」と「学生」に関する検索語を選定するために,5名の医療者によりブレインストーミングを行った。実習に関する検索語は,clinical clerkship,work based learning,situated learningなど,学生に関する検索語はstudentsとその下位概念とし,これらの検索語を組み合わせて検索式を立てた。使用したデータベースは,MEDLINE,Cochrane Central Register of Controlled Trials,Education Resources Information Center,Ichushi-Webなどとした(検索日2015年1月15日)。包含基準は,英語または日本語で書かれているもの,全文が入手可能なもの,原著論文とした。除外基準は,review,protocol,comments,letter,opinionなど,対象が人以外または患者であるものとした。過去の研究で報告された医療分野における実習の内容を分析するために,選択基準を満たした論文から,実習の内容や方法論に関する記述を抜き出し,アフィニティダイアグラムを参考に類似したものをまとめ,新たにラベリング作業を実施した。以上の過程は,レビューの妥当性を担保するために3名のreviewerで実施した。

【結果】検索により445件が抽出され,実習の内容や方法論が明記されていた論文は16件であった。類似した内容をまとめた結果,「正統的周辺参加に基づいた診療への参加」,「レポートの記載」などのラベルが形成された。「正統的周辺参加に基づいた診療への参加」について記載されていた論文は9件であり,抽出した論文の半数以上を占めた。「レポートの記載」は,レポートの要否について両論とも1件ずつ抽出された。

【結論】過去の研究において,医療分野における実習は,「正統的周辺参加に基づいた診療への参加」が多く含まれた一方で,その他の内容について一定の見解は得られなかった。正統的周辺参加は,理学療法教育ガイドライン(1版)で推奨されているクリニカルクラークシップにおいても含まれる内容であり,医療分野において重要視する必要性が示唆された。その他の内容については,今後具体的な方法論を定義することで,臨床実習教育の共通認識を持てる可能性がある。なお,本研究の限界として,文献レビューにより実習の内容を検討したものであり,実際の実施内容を反映しているかは不明である。