日本基礎理学療法学会（JSPTF・JFPT）　一般演題口述
（基礎）11

[O-KS-11-2] 超音波刺激によって筋衛星細胞の増殖は促進される

^○縣信秀¹, 宮津真寿美², 河上敬介³ (1.常葉大学保健医療学部, 2.愛知医療学院短期大学リハビリテーション学科, 3.大分大学福祉健康科学部)

キーワード：筋衛星細胞, 超音波, 筋損傷

【はじめに，目的】治療的超音波には，皮膚潰瘍，腱損傷，骨折の治癒促進効果があると報告されており，骨格筋への応用も期待されているが，詳細な効果やメカニズムは不明である。これまでに，我々は前脛骨筋の筋損傷モデルラットを用いて，損傷2時間後に10分間の超音波刺激を行うと，組織学的，機能的に筋損傷からの回復を促進することを報告した（第50回大会）。しかし，どのようなメカニズムで回復が促進したのかは不明である。近年，炎症性細胞，筋衛星細胞と筋細胞の間での複雑なクロストークにより筋再生が生じていることが明らかになってきている。そこでまず，本研究ではマウス筋衛星細胞の初代培養を用いて，超音波刺激により筋衛星細胞の増殖が促進されるかどうかを明らかにすることを目的とした。


【方法】マウス長趾伸筋をコラゲナーゼ溶液中に37℃で90分間インキュベートした。その後，パスツール管を使用して筋線維をほぐした。これを数回繰り返し，単一筋線維のみを採取し，トリプシン処理によって筋衛星細胞を剥離し，ディッシュに播種した。播種後4日間は，増殖培地（30% FBS，1% CEE，10ng/ml bFGF，1% PS）にて培養した。播種後4日目にコンディション培地（20% FBS，1% CEE，1% PS）に交換した。培地交換から2時間後に，細胞増殖マーカーであるEdU（10μM）を添加した。その後，超音波治療器（UST-770，伊藤超短波）を用いて，ゲルを塗布したプローブ（直径1.8cm）の上にディッシュを乗せて固定し，10分間の超音波刺激を加えた（US群）。超音波を加えない群をnonUS群とした。また，マウスから採取した長趾伸筋をコンディション培地中に浮遊させた状態で超音波刺激を10分間加え，その培地を筋衛星細胞に添加した（Med群）。超音波刺激の条件は，出力0.5w/cm²，周波数3Mhz，パルス波（50％cut）とした。超音波刺激6時間後に，細胞を固定しEdU染色と核染色を行った。染色像を撮像し，500μm四方内に含まれるすべての核とEdU陽性細胞数をカウントした。


【結果】超音波刺激を加えたUS群の核数に対するEdU陽性細胞数は67.6±9.8％，超音波を加えなかったnonUS群では57.2±10.9％で，超音波刺激を実施すると有意にEdU陽性細胞が増加した（p＜0.05）。また，筋細胞に超音波刺激を行った培地を，培養筋衛星細胞に添加したMed群のEdU陽性細胞数の割合は，62.0±10.8％でnonUS群との間に有意な差はなかった。


【結論】筋衛星細胞に超音波刺激を加えると増殖が促進されることがわかった。また，筋細胞に超音波刺激を行った培地の添加では増殖が促進していないことから，超音波刺激による液性の因子は関与していないことが考えられた。