[O-KS-20-2] 異なるスピードの歩行が運動協調性に及ぼす影響
キーワード:歩行, スピード, 運動協調性
【はじめに,目的】
歩行はストライド長やストライド時間を巧みに調節して一定のスピードを保ち,さらに単下肢支持,遊脚下肢の前進を達成させるために,受動的制御である重力を利用した姿勢の動的バランスを保ちながら行われている。また変形性膝関節症患者は歩行スピードが健常者と比較して低下するとされており,歩行スピードを低下させることは歩行時の外部膝関節内転モーメントを減少させる有効な戦略である。しかし,歩行スピードの低下は立脚時間の延長をもたらすために,適切な受動的制御が行われず運動協調性に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究は,運動協調性の定量化法であるUncontrolled Manifold(以下,UCM)解析を用いて,異なるスピードの歩行が運動協調性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。
【方法】
被験者は整形外科的既往歴および現病歴を有さない健常若年者10人(年齢:22.5±1.37[yr])であった。課題動作には被験者が快適と感じるスピード(以下,条件N),条件Nの80%のスピード(以下,条件S),120%のスピード(以下,条件F)の3条件での平地歩行を採用し,それぞれ10回試行した。計測には,3次元動作解析装置Vicon MX(Vicon社製)を使用して運動学データを取得した。また,UCM解析は数値解析ソフトウェアMatLab R2014a(MathWorks社製)を用いて,タスク変数を進行方向身体重心と歩行スピードとし,進行方向身体重心座標に対する要素変数であるセグメント角度の影響,歩行スピードに対する要素変数であるストライド長およびストライド時間の影響をそれぞれ評価するために行われた。タスク達成に影響を及ぼさない良い変動(以下,VUCM)と影響を及ぼす悪い変動(以下,VORT)を算出した。統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS Ver. 23.0(IBM社製)を用い,3条件間の比較には二元配置分散分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
歩行スピードに対するVORTは,条件Sが条件Fと比較して有意に高値を示した(条件S:0.26±0.11[m2/s2×10-3],条件F:0.09±0.05[m2/s2×10-3];p<0.01)。身体重心座標に対するVUCMは,遊脚中期にて条件Sが条件Nと比較して有意に低値(条件S:0.59±0.18[rad2×10-3],条件N:0.84±0.37[rad2×10-3];p<0.05),VORTは,遊脚後期にて条件Sが条件Nと比較して有意に高値(条件S:0.66±0.28[rad2×10-3],条件N:0.40±0.16[rad2×10-3];p<0.05)を示した。
【結論】
本研究の結果から,条件Sでは遊脚中期から後期にかけて,身体重心を安定化させる各セグメントの運動協調性が低下していることが明らかとなった。つまりより遅いスピードの歩行では,受動的安定化である重力を利用した姿勢の動的バランスを保持した歩行が困難となり,その結果,歩行スピードを不安定化させる変動の幅が増大していることが示唆された。
歩行はストライド長やストライド時間を巧みに調節して一定のスピードを保ち,さらに単下肢支持,遊脚下肢の前進を達成させるために,受動的制御である重力を利用した姿勢の動的バランスを保ちながら行われている。また変形性膝関節症患者は歩行スピードが健常者と比較して低下するとされており,歩行スピードを低下させることは歩行時の外部膝関節内転モーメントを減少させる有効な戦略である。しかし,歩行スピードの低下は立脚時間の延長をもたらすために,適切な受動的制御が行われず運動協調性に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究は,運動協調性の定量化法であるUncontrolled Manifold(以下,UCM)解析を用いて,異なるスピードの歩行が運動協調性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。
【方法】
被験者は整形外科的既往歴および現病歴を有さない健常若年者10人(年齢:22.5±1.37[yr])であった。課題動作には被験者が快適と感じるスピード(以下,条件N),条件Nの80%のスピード(以下,条件S),120%のスピード(以下,条件F)の3条件での平地歩行を採用し,それぞれ10回試行した。計測には,3次元動作解析装置Vicon MX(Vicon社製)を使用して運動学データを取得した。また,UCM解析は数値解析ソフトウェアMatLab R2014a(MathWorks社製)を用いて,タスク変数を進行方向身体重心と歩行スピードとし,進行方向身体重心座標に対する要素変数であるセグメント角度の影響,歩行スピードに対する要素変数であるストライド長およびストライド時間の影響をそれぞれ評価するために行われた。タスク達成に影響を及ぼさない良い変動(以下,VUCM)と影響を及ぼす悪い変動(以下,VORT)を算出した。統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS Ver. 23.0(IBM社製)を用い,3条件間の比較には二元配置分散分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
歩行スピードに対するVORTは,条件Sが条件Fと比較して有意に高値を示した(条件S:0.26±0.11[m2/s2×10-3],条件F:0.09±0.05[m2/s2×10-3];p<0.01)。身体重心座標に対するVUCMは,遊脚中期にて条件Sが条件Nと比較して有意に低値(条件S:0.59±0.18[rad2×10-3],条件N:0.84±0.37[rad2×10-3];p<0.05),VORTは,遊脚後期にて条件Sが条件Nと比較して有意に高値(条件S:0.66±0.28[rad2×10-3],条件N:0.40±0.16[rad2×10-3];p<0.05)を示した。
【結論】
本研究の結果から,条件Sでは遊脚中期から後期にかけて,身体重心を安定化させる各セグメントの運動協調性が低下していることが明らかとなった。つまりより遅いスピードの歩行では,受動的安定化である重力を利用した姿勢の動的バランスを保持した歩行が困難となり,その結果,歩行スピードを不安定化させる変動の幅が増大していることが示唆された。