[O-KS-20-5] 地域高齢者における歩行の滑らかさと関連因子の検討
―躍度最小評価関数を用いて―
Keywords:高齢者, 歩行, 滑らかさ
【はじめに,目的】FlashとHoganは,身体運動の滑らかさの評価尺度として躍度最小評価関数(以下Cj)を報告し上肢の巧緻性を評価した。Cjは,動作の加速度の微分値(躍度:jerk)の実効値によって定量化され,滑らかなほど数値は小さくなる。我々はこれまで,Cjを用いて健常若年者の歩行時の重心Cjを評価し,歩行時の下肢トルク変化や酸素摂取量との関連性を報告してきた。
今回高齢者の歩行の基礎研究として,Cjを用いて地域高齢者の歩行の滑らかさを評価し,立位脊柱傾斜角度や可動性,下肢筋力や転倒との関連性を検討した。
【方法】対象は平成26年度のK県M市の特定健診に参加し,歩行補助具を使用せず歩行をしている65歳以上の高齢者121名(平均年齢70±4歳(65-87))。
歩行のCjの評価は,マイクロストーン社製小型無線モーションレコーダを用いて,3軸加速度センサを第3腰椎高位に固定し,快適自由歩行の加速度をサンプリング周波数200Hzで計測した。歩行中の安定した1歩行周期の加速度波形を100%に正規化後,微分してjerkを求め,Cj(Cj=∫(jerk)2dt)を算出した。
立位脊柱の評価は,Index社製Spinal mouseⓇによって,立位での直立姿勢およびできる限りの前屈・後屈姿勢における脊柱が矢状面にて垂線となす角度(垂線より前方は+,後方は-で表記)を計測した。その他,1年間の転倒歴の聴取,および利き脚膝伸展筋力をアニマ社製μTas F-1で計測し体重比(%)を求めた。さらにtimed up & go test(以下TUG),Functional Reach Test(以下FRT)も計測した。
統計は,Cjと各評価との関連性の検討は,Spearmanの相関係数を行い,相関性の認められたものを独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。転倒歴の有無による各評価の比較はMann-WhitneyのU検定で行った。
【結果】歩行時のCj(単位:m2/sec5)の中央値(四分位数)は,前後成分(以下Cj-y)20.0(11.6-33.6)×105,左右成分(以下Cj-x)13.0(7.9-24.3)×105,上下成分(以下Cj-z)17.2(10.9-30.8)×105であった。各評価との関連性では,全成分共にTUGと脊椎直立・後屈角度と有意な負の相関性を示し(p<0.05),さらに重回帰分析の結果,Cj-x,Cj-Zにおいて後屈角度が選択された。また転倒の有無におけるCjの比較では,全てに有意差は認められなかった。
【結論】高齢者の歩行Cjと他の運動機能評価や転倒歴との関連性を検討した結果,脊柱後屈角度と負の相関性を示し,後屈角度が保たれている人ほど歩行が滑らかではなく,転倒歴では差がないという予想と反する結果となった。我々の先行研究では,脊柱後屈角度と歩行時のCjは,共に歩行速度と相関性を示しており,後屈角度が保たれている人は,歩行速度が速くCjが高値を示したと考えられ,この影響で転倒歴にも差が出なかったと思われた。今後は歩行速度を一定にした評価やCjを時間と距離で補正したJerk Indexでの評価が必要と考えられた。
今回高齢者の歩行の基礎研究として,Cjを用いて地域高齢者の歩行の滑らかさを評価し,立位脊柱傾斜角度や可動性,下肢筋力や転倒との関連性を検討した。
【方法】対象は平成26年度のK県M市の特定健診に参加し,歩行補助具を使用せず歩行をしている65歳以上の高齢者121名(平均年齢70±4歳(65-87))。
歩行のCjの評価は,マイクロストーン社製小型無線モーションレコーダを用いて,3軸加速度センサを第3腰椎高位に固定し,快適自由歩行の加速度をサンプリング周波数200Hzで計測した。歩行中の安定した1歩行周期の加速度波形を100%に正規化後,微分してjerkを求め,Cj(Cj=∫(jerk)2dt)を算出した。
立位脊柱の評価は,Index社製Spinal mouseⓇによって,立位での直立姿勢およびできる限りの前屈・後屈姿勢における脊柱が矢状面にて垂線となす角度(垂線より前方は+,後方は-で表記)を計測した。その他,1年間の転倒歴の聴取,および利き脚膝伸展筋力をアニマ社製μTas F-1で計測し体重比(%)を求めた。さらにtimed up & go test(以下TUG),Functional Reach Test(以下FRT)も計測した。
統計は,Cjと各評価との関連性の検討は,Spearmanの相関係数を行い,相関性の認められたものを独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。転倒歴の有無による各評価の比較はMann-WhitneyのU検定で行った。
【結果】歩行時のCj(単位:m2/sec5)の中央値(四分位数)は,前後成分(以下Cj-y)20.0(11.6-33.6)×105,左右成分(以下Cj-x)13.0(7.9-24.3)×105,上下成分(以下Cj-z)17.2(10.9-30.8)×105であった。各評価との関連性では,全成分共にTUGと脊椎直立・後屈角度と有意な負の相関性を示し(p<0.05),さらに重回帰分析の結果,Cj-x,Cj-Zにおいて後屈角度が選択された。また転倒の有無におけるCjの比較では,全てに有意差は認められなかった。
【結論】高齢者の歩行Cjと他の運動機能評価や転倒歴との関連性を検討した結果,脊柱後屈角度と負の相関性を示し,後屈角度が保たれている人ほど歩行が滑らかではなく,転倒歴では差がないという予想と反する結果となった。我々の先行研究では,脊柱後屈角度と歩行時のCjは,共に歩行速度と相関性を示しており,後屈角度が保たれている人は,歩行速度が速くCjが高値を示したと考えられ,この影響で転倒歴にも差が出なかったと思われた。今後は歩行速度を一定にした評価やCjを時間と距離で補正したJerk Indexでの評価が必要と考えられた。