[O-KS-22-3] 歩行非対称性の新たな評価方法としての円歩行テストの有用性
~高齢者における円歩行時間の左右差は直線歩行の左右非対称性を反映する~
Keywords:円歩行, 歩行非対称性, 加齢変化
【はじめに,目的】
歩行時の左右非対称性は転倒リスクと関連するとされている。一般的に歩行時の歩幅や立脚時間の左右非対称性の評価は三軸加速度計や床反力計などを用いなければならず,臨床において特別な機器を用いずに簡便に歩行非対称性を評価する方法はないのが現状である。
一方,脳卒中後片麻痺者において円歩行トレーニングにより直線歩行の左右非対称性が改善されることが報告されている。そこで本研究では円歩行時間の左右差,つまり円周を右周りおよび左周りで歩行したときの時間の左右差が直線歩行時の左右非対称性と関連しているのではないかと仮説をたてて,歩行非対称性を特別な機器を用いずに簡便にスクリーニングできるテストとして円歩行テストを考案した。
本研究の目的は歩行非対称性の加齢変化および直線歩行時の非対称性と円歩行時間の左右差との関連性について明らかにし,歩行非対称性を簡便に評価する指標としての円歩行テストの有用性について検討することである。
【方法】
対象は健常高齢者25名(女性19名,男性6名,年齢84.8±7.4歳)および健常若年者20名(女性16名,男性4名,年齢21.5±0.9歳)とした。
直線歩行については多機能三軸加速度計(BTS社製)を用いて10mの直線歩行路を快適速度で歩行した際の左右の歩幅および立脚時間を測定した。左右の歩幅,立脚時間より左右差(左-右)および左右非対称率(左右差の絶対値/左右の平均×100)を算出した。
円歩行についてはストップウォッチを用いて直径1mの円を快適速度で2周したときの歩行時間を測定した。左周り,右周りそれぞれランダムに2回ずつ行い,2回の平均値をデータとして用い,左右差および非対称率を算出した。
統計学的検定について,若年者と高齢者の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。また,若年者,高齢者それぞれにおいて円歩行と直線歩行の左右差の関連についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
直線歩行の歩幅の左右非対称率および立脚時間の左右非対称率はいずれも若年者と高齢者の間で有意差はみられなかった。一方,円歩行時間の左右非対称率は若年者3.6±2.2%,高齢者9.1±6.9%で高齢者の方が有意に大きかった。円歩行と直線歩行の左右非対称性の関連について,若年者では直線歩行の歩幅および立脚時間の左右差はいずれも円歩行時間の左右差と有意な相関はみられなかった。一方,高齢者においては直線歩行の歩幅の左右差と円歩行時間の左右差との間に有意な相関がみられた(r=0.40)。
【結論】
本研究の結果,円歩行時間における左右差は直線歩行時の歩幅や立脚時間ではとらえきれない加齢に伴う歩行非対称性増加を評価できる可能性が示唆された。また,高齢者において直線歩行時の歩幅の左右差と円歩行時間の左右差とは関連していることが明らかとなり,高齢者の歩行時の左右非対称性のスクリーニングとして円歩行時間の左右差を利用できる可能性が示唆された。
歩行時の左右非対称性は転倒リスクと関連するとされている。一般的に歩行時の歩幅や立脚時間の左右非対称性の評価は三軸加速度計や床反力計などを用いなければならず,臨床において特別な機器を用いずに簡便に歩行非対称性を評価する方法はないのが現状である。
一方,脳卒中後片麻痺者において円歩行トレーニングにより直線歩行の左右非対称性が改善されることが報告されている。そこで本研究では円歩行時間の左右差,つまり円周を右周りおよび左周りで歩行したときの時間の左右差が直線歩行時の左右非対称性と関連しているのではないかと仮説をたてて,歩行非対称性を特別な機器を用いずに簡便にスクリーニングできるテストとして円歩行テストを考案した。
本研究の目的は歩行非対称性の加齢変化および直線歩行時の非対称性と円歩行時間の左右差との関連性について明らかにし,歩行非対称性を簡便に評価する指標としての円歩行テストの有用性について検討することである。
【方法】
対象は健常高齢者25名(女性19名,男性6名,年齢84.8±7.4歳)および健常若年者20名(女性16名,男性4名,年齢21.5±0.9歳)とした。
直線歩行については多機能三軸加速度計(BTS社製)を用いて10mの直線歩行路を快適速度で歩行した際の左右の歩幅および立脚時間を測定した。左右の歩幅,立脚時間より左右差(左-右)および左右非対称率(左右差の絶対値/左右の平均×100)を算出した。
円歩行についてはストップウォッチを用いて直径1mの円を快適速度で2周したときの歩行時間を測定した。左周り,右周りそれぞれランダムに2回ずつ行い,2回の平均値をデータとして用い,左右差および非対称率を算出した。
統計学的検定について,若年者と高齢者の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。また,若年者,高齢者それぞれにおいて円歩行と直線歩行の左右差の関連についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
直線歩行の歩幅の左右非対称率および立脚時間の左右非対称率はいずれも若年者と高齢者の間で有意差はみられなかった。一方,円歩行時間の左右非対称率は若年者3.6±2.2%,高齢者9.1±6.9%で高齢者の方が有意に大きかった。円歩行と直線歩行の左右非対称性の関連について,若年者では直線歩行の歩幅および立脚時間の左右差はいずれも円歩行時間の左右差と有意な相関はみられなかった。一方,高齢者においては直線歩行の歩幅の左右差と円歩行時間の左右差との間に有意な相関がみられた(r=0.40)。
【結論】
本研究の結果,円歩行時間における左右差は直線歩行時の歩幅や立脚時間ではとらえきれない加齢に伴う歩行非対称性増加を評価できる可能性が示唆された。また,高齢者において直線歩行時の歩幅の左右差と円歩行時間の左右差とは関連していることが明らかとなり,高齢者の歩行時の左右非対称性のスクリーニングとして円歩行時間の左右差を利用できる可能性が示唆された。