[O-KS-22-4] 脳卒中後の重度片麻痺者の歩行速度には麻痺側下肢伸展筋力が関係する
Keywords:運動麻痺, 歩行能力, 評価
【はじめに,目的】
脳卒中者の歩行速度と麻痺側および非麻痺側膝伸展筋力には関連があることが,多数報告されている(Bohannon, et al., 1992,菅原ら1993)。一方,これらの知見では,測定方法の問題から運動麻痺が軽度から中等度である者が対象であることが多く,膝関節の分離運動が困難な重度片麻痺者においては検討されていない。この測定方法の問題に対して,座位でのペダル駆動による筋力測定であれば重度片麻痺者においても,下肢伸展筋力(以下,下肢筋力)が計測できる可能性がある。そこで,本研究では重度片麻痺者を対象として,ペダル駆動による下肢筋力を計測し,歩行速度との関係を検討した。
【方法】
対象は,2007年5月から2014年7月の間に,当院併設のデイケアを利用した脳卒中者29名(女性17名)とした。平均年齢は,64±12歳(平均±標準偏差)であり,発症後日数は183日(中央値,最小107日-最大2633日)であった。選択基準は,Stroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)にてKnee-Extension Testが2以下,初発片側病変の脳梗塞もしくは出血,歩行能力が監視以上,指示理解が良好な者とした。除外基準は,下肢に整形外科疾患の既往がある者とした。
評価項目は,下肢筋力および歩行速度とした。下肢筋力は,多機能エルゴメーター(三菱電機エンジニアリング社製)を用い,筋力測定モード(50 rpm)にて,麻痺側,非麻痺側の下肢最大伸展トルクを5回転分測定し,体重で除した値(Nm/kg)を用いた。歩行速度は,10 m歩行を快適速度にて2回測定し,歩行速度(m/s)の平均値を算出した。
統計解析は,麻痺側下肢筋力と歩行速度,非麻痺側下肢筋力と歩行速度,麻痺側と非麻痺側の下肢筋力の関係を明らかにするために,Spearmanの順位相関係数を用いた。また,それぞれの下肢筋力が交絡になる可能性を考慮し,Spearmanの偏順位相関係数にて解析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
対象者のSIASのKnee-Extension Testは,0が4名,1が1名,2が24名であった。下肢筋力は麻痺側が0.23±0.18Nm/kg,非麻痺側が0.52±0.33Nm/kgであった。歩行速度は,0.38±0.22m/sであった。
順位相関係数は,麻痺側下肢筋力と歩行速度でr=0.70,非麻痺側下肢筋力と歩行速度ではr=0.51であり,有意な正の相関を認めた(p<0.01)。麻痺側および非麻痺側の筋力においては,相関係数がr=0.77で有意な正の相関を認めた(p<0.01)。
偏順位相関係数では,麻痺側下肢筋力と歩行速度において,非麻痺側下肢筋力を制御変数とした場合には,有意な正の相関を認めた(r=0.55,p<0.05)。一方で,非麻痺側下肢筋力と歩行速度について,麻痺側下肢筋力を制御変数とした場合には,有意な相関を認めなかった(r=-0.06,p=0.78)。
【結論】
本研究により,重度片麻痺者の歩行能力において,麻痺側下肢伸展筋力が関連することが初めて明らかとなった。今後,麻痺側下肢伸展筋力と歩行速度の改善の関係を検討していく予定である。
脳卒中者の歩行速度と麻痺側および非麻痺側膝伸展筋力には関連があることが,多数報告されている(Bohannon, et al., 1992,菅原ら1993)。一方,これらの知見では,測定方法の問題から運動麻痺が軽度から中等度である者が対象であることが多く,膝関節の分離運動が困難な重度片麻痺者においては検討されていない。この測定方法の問題に対して,座位でのペダル駆動による筋力測定であれば重度片麻痺者においても,下肢伸展筋力(以下,下肢筋力)が計測できる可能性がある。そこで,本研究では重度片麻痺者を対象として,ペダル駆動による下肢筋力を計測し,歩行速度との関係を検討した。
【方法】
対象は,2007年5月から2014年7月の間に,当院併設のデイケアを利用した脳卒中者29名(女性17名)とした。平均年齢は,64±12歳(平均±標準偏差)であり,発症後日数は183日(中央値,最小107日-最大2633日)であった。選択基準は,Stroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)にてKnee-Extension Testが2以下,初発片側病変の脳梗塞もしくは出血,歩行能力が監視以上,指示理解が良好な者とした。除外基準は,下肢に整形外科疾患の既往がある者とした。
評価項目は,下肢筋力および歩行速度とした。下肢筋力は,多機能エルゴメーター(三菱電機エンジニアリング社製)を用い,筋力測定モード(50 rpm)にて,麻痺側,非麻痺側の下肢最大伸展トルクを5回転分測定し,体重で除した値(Nm/kg)を用いた。歩行速度は,10 m歩行を快適速度にて2回測定し,歩行速度(m/s)の平均値を算出した。
統計解析は,麻痺側下肢筋力と歩行速度,非麻痺側下肢筋力と歩行速度,麻痺側と非麻痺側の下肢筋力の関係を明らかにするために,Spearmanの順位相関係数を用いた。また,それぞれの下肢筋力が交絡になる可能性を考慮し,Spearmanの偏順位相関係数にて解析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
対象者のSIASのKnee-Extension Testは,0が4名,1が1名,2が24名であった。下肢筋力は麻痺側が0.23±0.18Nm/kg,非麻痺側が0.52±0.33Nm/kgであった。歩行速度は,0.38±0.22m/sであった。
順位相関係数は,麻痺側下肢筋力と歩行速度でr=0.70,非麻痺側下肢筋力と歩行速度ではr=0.51であり,有意な正の相関を認めた(p<0.01)。麻痺側および非麻痺側の筋力においては,相関係数がr=0.77で有意な正の相関を認めた(p<0.01)。
偏順位相関係数では,麻痺側下肢筋力と歩行速度において,非麻痺側下肢筋力を制御変数とした場合には,有意な正の相関を認めた(r=0.55,p<0.05)。一方で,非麻痺側下肢筋力と歩行速度について,麻痺側下肢筋力を制御変数とした場合には,有意な相関を認めなかった(r=-0.06,p=0.78)。
【結論】
本研究により,重度片麻痺者の歩行能力において,麻痺側下肢伸展筋力が関連することが初めて明らかとなった。今後,麻痺側下肢伸展筋力と歩行速度の改善の関係を検討していく予定である。