[O-KS-22-5] 回復期リハビリテーション病棟における歩行自立範囲と関連因子の検討
Keywords:回復期, 歩行自立, 注意障害
【はじめに,目的】
近年,回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)での歩行自立判定における評価項目の妥当性についての報告が散見されている。歩行自立にはBBSやTUGと関連性があり(北地,2011),認知・高次脳機能障害とも関連性がある(鬼頭,2011)。歩行自立判定は,主観的で定性的であるのが現状(高橋,2012)だが,長田は歩行自立判定評価表を作成し,客観的評価に加え主観的評価を交え判定し,有用性を報告している。高齢者はデュアルタスク条件下にてバランス戦略を優先し(Teasdale, 1993),また,対象者のバランス能力に関わらず,注意障害に伴い歩行自立度が低下するとされ(松谷,2004),病棟内は居室内と比べ環境や歩行距離が変化する。当院では居室にトイレがあるため,より自宅での生活に類似した環境で細かな自立範囲設定が必要である。病棟内自立に対する報告は数多くあるが,回復期リハ病棟における歩行自立判定において居室内に着目した報告が少ないのが現状である。その為本研究では,歩行自立範囲とバランス能力や注意障害などの項目との関連性を明らかにし,今後の判定の一助とすることを目的とした。
【方法】
A病院回復期リハ病棟入院中,平成26年9月~平成27年9月の間に歩行自立に至った患者72名(73.6±15.7歳)を対象とした。歩行補助具の条件は設けなかった。測定項目は長田式歩行自立判定評価表を参考に,FBS・TUG・6MD・主観的評価(ふらつき・連合反応・注意障害の有無)・MMSEとした。測定条件は,歩行自立後1週間以内に各項目を担当が測定し,方法は理学療法検査・測定ガイドを参考に統一した。対象者を自立範囲別(居室内自立群26名・棟内自立群63名)2群に分類し,shapiro-wilkの正規性検定・Levene検定後,マンホイットニーのU検定,χ2検定,対応のないt検定を実施した。統計解析にはR2.8.1を使用し有意水準は5%とした。
【結果】
歩行自立範囲別で有意差が認められた項目は注意障害の有無であった。注意障害有の内訳は,居室内自立群42%,棟内自立群19%であった。TUGは有意差が認められず(p=0.17),平均値±標準偏差は居室内自立群19.84±16.04秒,棟内自立群16.74±8.58秒であった。FBSも有意差が認められず,中央値(最小値-最大値)は居室内自立群44(25-55)点,棟内自立群45(25-54)点であった。その他項目も有意差が認められなかった。
【結論】
歩行自立範囲別で注意障害の有無のみ差が認められ,棟内自立群の方が居室内自立群に比べ注意障害を有していなかった。このことから,歩行自立範囲の拡大には注意障害が影響していることが示唆された。今後,歩行補助具の条件を統一した対象での比較,注意障害の客観的な評価指標の更なる検討の必要性が示唆された。
近年,回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)での歩行自立判定における評価項目の妥当性についての報告が散見されている。歩行自立にはBBSやTUGと関連性があり(北地,2011),認知・高次脳機能障害とも関連性がある(鬼頭,2011)。歩行自立判定は,主観的で定性的であるのが現状(高橋,2012)だが,長田は歩行自立判定評価表を作成し,客観的評価に加え主観的評価を交え判定し,有用性を報告している。高齢者はデュアルタスク条件下にてバランス戦略を優先し(Teasdale, 1993),また,対象者のバランス能力に関わらず,注意障害に伴い歩行自立度が低下するとされ(松谷,2004),病棟内は居室内と比べ環境や歩行距離が変化する。当院では居室にトイレがあるため,より自宅での生活に類似した環境で細かな自立範囲設定が必要である。病棟内自立に対する報告は数多くあるが,回復期リハ病棟における歩行自立判定において居室内に着目した報告が少ないのが現状である。その為本研究では,歩行自立範囲とバランス能力や注意障害などの項目との関連性を明らかにし,今後の判定の一助とすることを目的とした。
【方法】
A病院回復期リハ病棟入院中,平成26年9月~平成27年9月の間に歩行自立に至った患者72名(73.6±15.7歳)を対象とした。歩行補助具の条件は設けなかった。測定項目は長田式歩行自立判定評価表を参考に,FBS・TUG・6MD・主観的評価(ふらつき・連合反応・注意障害の有無)・MMSEとした。測定条件は,歩行自立後1週間以内に各項目を担当が測定し,方法は理学療法検査・測定ガイドを参考に統一した。対象者を自立範囲別(居室内自立群26名・棟内自立群63名)2群に分類し,shapiro-wilkの正規性検定・Levene検定後,マンホイットニーのU検定,χ2検定,対応のないt検定を実施した。統計解析にはR2.8.1を使用し有意水準は5%とした。
【結果】
歩行自立範囲別で有意差が認められた項目は注意障害の有無であった。注意障害有の内訳は,居室内自立群42%,棟内自立群19%であった。TUGは有意差が認められず(p=0.17),平均値±標準偏差は居室内自立群19.84±16.04秒,棟内自立群16.74±8.58秒であった。FBSも有意差が認められず,中央値(最小値-最大値)は居室内自立群44(25-55)点,棟内自立群45(25-54)点であった。その他項目も有意差が認められなかった。
【結論】
歩行自立範囲別で注意障害の有無のみ差が認められ,棟内自立群の方が居室内自立群に比べ注意障害を有していなかった。このことから,歩行自立範囲の拡大には注意障害が影響していることが示唆された。今後,歩行補助具の条件を統一した対象での比較,注意障害の客観的な評価指標の更なる検討の必要性が示唆された。