[O-KS-23-4] 膝屈筋群の同時収縮が膝伸筋の筋出力に及ぼす影響
キーワード:膝伸筋, 同時収縮, 短縮速度
【はじめに,目的】膝伸筋に隣接する骨格筋の膝伸筋筋出力への関与について生理学的な力学的実験(in vivo)を行い,その結果を第50回の本大会において報告した。本研究では拮抗筋である膝屈筋群の同時収縮に着目し,それが膝伸筋の筋出力にどのような影響を及ぼしているのかについて実験を行った。
【方法】実験には15匹のウシガエル(Rana catesbeiana)(体長:132±7 mm)の膝伸筋である大腿三頭筋(ヒトの大腿四頭筋にあたり前大腿直筋および内・外側広筋の3筋からなる)および膝屈筋群を実験に用いた。ウレタンを腹腔内投与して麻酔した後,カエルを実験バスに固定した。腸骨部分から露出させた坐骨神経に十分な強度の電気刺激(60 Hz,0.5 s)を与えた際の大腿三頭筋腱に取り付けたフックにかかる張力を測定した。各条件で膝伸筋の筋長を適宜変えて等尺性強縮張力測定後,最大張力を示した筋長を静止長とした。その静止長において荷重を様々に変えて等張性収縮時の短縮速度を測定した。実験は,(1)膝伸筋および膝屈筋群を同時収縮させた条件(同時収縮条件)(N=5),(2)膝伸筋のみ収縮させた条件(伸筋条件)(N=5),(3)膝屈筋群のみを収縮させた条件(屈筋条件)(N=5)の3条件で行った。実験データより荷重-速度関係を作成した後,短縮速度および外へ働きかける作用(短縮速度と荷重の積で算出した仕事率)を比較し検討した。荷重データは各条件の等尺性強縮張力で,そして筋の長さ変化データは大腿骨長(大腿骨頭-膝関節面)(BL)でそれぞれ除して正規化した。実験はSpO2を確認しながら20±0.5 ºCの温度条件下で行った。なお,統計処理は一元配置分散分析を行い,post hoc検定はscheffé法を用いた。
【結果】「同時収縮条件」の最大短縮速度4.0±0.5 BL/sは,「伸筋条件」の2.7±0.4 BL/sと比較して有意に速く(p<0.01),短縮速度は全荷重域に渡って速く,荷重0.90で約2倍の短縮速度であった。いずれの条件も荷重0.9まで急速に短縮しはじめ,重たい荷重域(0.5-0.9)の短縮速度は徐々に増加し,軽い荷重域(0.1-0.5)でその増加率が増大する傾向があった。「同時収縮条件」の仕事率は,全荷重域で「伸筋条件」より約2倍大きく,最大仕事率は荷重0.86で最大の1.73になり,荷重が軽くなるに従い直線的に減少した。「伸筋条件」の最大仕事率は荷重0.79で最大0.88であった。「屈筋条件」のフックにかかった張力は「同時収縮条件」の約10%であったが,短縮速度は全荷重域において0であったため,屈筋群は「同時収縮条件」の短縮速度に直接関与していなかった。
【結論】膝伸展運動の拮抗筋である膝屈筋の同時収縮が,膝伸筋の筋出力メカニズムに関与していることが明らかとなった。この結果は,膝伸筋の筋出力には拮抗筋が重要な役割を担っていることを示唆している。
【方法】実験には15匹のウシガエル(Rana catesbeiana)(体長:132±7 mm)の膝伸筋である大腿三頭筋(ヒトの大腿四頭筋にあたり前大腿直筋および内・外側広筋の3筋からなる)および膝屈筋群を実験に用いた。ウレタンを腹腔内投与して麻酔した後,カエルを実験バスに固定した。腸骨部分から露出させた坐骨神経に十分な強度の電気刺激(60 Hz,0.5 s)を与えた際の大腿三頭筋腱に取り付けたフックにかかる張力を測定した。各条件で膝伸筋の筋長を適宜変えて等尺性強縮張力測定後,最大張力を示した筋長を静止長とした。その静止長において荷重を様々に変えて等張性収縮時の短縮速度を測定した。実験は,(1)膝伸筋および膝屈筋群を同時収縮させた条件(同時収縮条件)(N=5),(2)膝伸筋のみ収縮させた条件(伸筋条件)(N=5),(3)膝屈筋群のみを収縮させた条件(屈筋条件)(N=5)の3条件で行った。実験データより荷重-速度関係を作成した後,短縮速度および外へ働きかける作用(短縮速度と荷重の積で算出した仕事率)を比較し検討した。荷重データは各条件の等尺性強縮張力で,そして筋の長さ変化データは大腿骨長(大腿骨頭-膝関節面)(BL)でそれぞれ除して正規化した。実験はSpO2を確認しながら20±0.5 ºCの温度条件下で行った。なお,統計処理は一元配置分散分析を行い,post hoc検定はscheffé法を用いた。
【結果】「同時収縮条件」の最大短縮速度4.0±0.5 BL/sは,「伸筋条件」の2.7±0.4 BL/sと比較して有意に速く(p<0.01),短縮速度は全荷重域に渡って速く,荷重0.90で約2倍の短縮速度であった。いずれの条件も荷重0.9まで急速に短縮しはじめ,重たい荷重域(0.5-0.9)の短縮速度は徐々に増加し,軽い荷重域(0.1-0.5)でその増加率が増大する傾向があった。「同時収縮条件」の仕事率は,全荷重域で「伸筋条件」より約2倍大きく,最大仕事率は荷重0.86で最大の1.73になり,荷重が軽くなるに従い直線的に減少した。「伸筋条件」の最大仕事率は荷重0.79で最大0.88であった。「屈筋条件」のフックにかかった張力は「同時収縮条件」の約10%であったが,短縮速度は全荷重域において0であったため,屈筋群は「同時収縮条件」の短縮速度に直接関与していなかった。
【結論】膝伸展運動の拮抗筋である膝屈筋の同時収縮が,膝伸筋の筋出力メカニズムに関与していることが明らかとなった。この結果は,膝伸筋の筋出力には拮抗筋が重要な役割を担っていることを示唆している。