第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)04

2016年5月27日(金) 13:40 〜 14:40 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:山崎肇(羊ヶ丘病院 リハビリテーション科)

[O-MT-04-5] リバース型人工肩関節全置換術後の肩関節可動域獲得について

尾崎尚代1, 千葉慎一2, 西中直也3, 筒井廣明4 (1.昭和大学藤が丘病院リハビリテーション室, 2.昭和大学病院リハビリテーションセンター, 3.昭和大学藤が丘病院整形外科, 4.昭和大学藤が丘リハビリテーション病院スポーツ整形外科)

キーワード:リバース型全人工肩関節置換術, 可動域, 肩甲骨

【はじめに】

修復不能な広範囲腱板断裂を含む腱板断裂症性変形性肩関節症に対して行われているリバース型全人工肩関節置換術(以下,rTSA)は,本邦では2014年4月から導入されたが,欧米では10年以上前から導入されており,手術によって挙上角度は105~132度に改善するという報告があるが,自動外旋角度に制限が残るという報告もある。今回,rTSA後の肩関節機能について調査した結果,興味ある知見が得られたので報告する。

【方法】

対象は,当院にてrTSAを施行し,術後6か月以上観察が可能であった14例14肩(男性3例,女性11例,平均年齢77歳,以下,rTSA群)であり,術後9か月時の診療録から肩関節下垂位外旋角度(以下,1stER),また診察時の最大挙上時肩関節前後像を用いて最大挙上角度(以下,MaxABD),肩甲骨上方回旋角度(以下,MaxSca),および肩甲骨面上45度挙上位像を用いて肩甲骨上方回旋角度(Scapula Index,以下,SI)を調査した。対照群として,当院整形外科を受診した肩関節疾患症例(男性16例,女性27例,平均年齢72歳)の非障害側肩関節(健常群,以下,N群)のMaxABD,MaxScaおよびSIを調査した。

統計学的処理は,Mann-Whitney検定およびSpearmanの順位相関係数を用いて危険率5%にて行い,rTSA後の肩関節可動域改善に必要な機能を検討した。

【結果】

rTSA群のMaxABDは138.5(127.5,146.25),MaxScaは76(67,78),SIは17(12,24.75),であり,N群のMaxABDは155(147.5,160),MaxScaは56(54,59),SIは0.4(-5.2,4.85)であり,rTSA群はN群よりも,MaxABDは小さいが(p<0.001),MaxScaおよびSIは大きかった(それぞれp<0.001,p<0.001)。また,1stERは30(20,30)であり,MaxABDが大きいほど1stERも大きくなった(rs=0.77,p=0.01)が,MaxABDとMaxScaとの間に相関は得られなかった(rs=0.27,p=0.31)。

【結論】

rTSA後は,三角筋の作用により挙上初期の上腕骨の運動が可能となるが,SIは健常群よりも著明に大きくなっていたことから,三角筋の作用に加え,肩甲骨の運動性も重要であることが示唆された。rTSA症例は,腱板機能が全廃であることが適応であるので,術前に上腕骨頭が大きく上方化し,肩甲骨の関わりが大きいが,術後は三角筋の作用による上腕骨の運動とともに,肩甲骨の過剰な運動が抑制されることが推測される。

また,最大挙上位の検討から,rTSA症例では,挙上角度が健常群よりも小さいにもかかわらず,肩甲骨の上方回旋角度は大きくなっており,さらに,挙上角度と肩甲骨の上方回旋に相関はないが下垂位外旋角度と相関があったことから,rTSAで可動域を獲得するには,肩甲骨上方回旋角度の獲得とともに,下垂外旋角度の獲得が必要になることが示唆された。

したがって,今回の結果から,rTSA術後の治療プログラムでは,三角筋機能に加え,肩関節の肩甲骨機能および外旋機能を検討する必要性が示唆された。