第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)08

2016年5月27日(金) 18:20 〜 19:20 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:隈元庸夫(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)

[O-MT-08-2] 頸椎変性疾患に対するMcKenzie法に基づく運動療法の治療経過と,改善不良に関連する因子

葉清規1,2, 対馬栄輝2, 大石陽介3, 村瀬正昭3 (1.医療法人社団おると会浜脇整形外科リハビリセンター, 2.弘前大学大学院保健学研究科, 3.医療法人社団おると会浜脇整形外科病院整形外科)

キーワード:頸椎変性疾患, McKenzie法, JOACMEQ

【はじめに,目的】

疼痛や痺れが主症状である頸椎変性疾患に対し,McKenzie法は簡便かつ有効なエクササイズであり,症状が改善する治療報告も散見される。他方,治療経過において症状の改善不良例を経験することもあり,その要因について明らかにすることはMcKenzie法の限界を知る上でも重要である。本研究の目的は,頸椎変性疾患に対するMcKenzie法に基づく運動療法の治療経過と,改善不良例に関連する因子を調査することである。

【方法】

対象は,2013年7月より2015年5月の期間で,頸部及び上肢帯の疼痛・痺れ等の症状で来院し,画像上で頸椎の退行性変化を認め,理学療法(運動療法,物理療法等)を施行し,評価可能であった頸椎変性疾患保存治療例51例である。除外基準は,原因が明らかな急性発症例,他の整形外科疾患合併例等とした。診断名の内訳は,頸椎症性神経根症22例,頸椎椎間板ヘルニア18例,変形性頸椎症8例,頸椎症性脊髄症3例であった。

改善度の判定は,日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(以下,JOACMEQ)の頸椎機能スコア(以下,頸椎機能)をリハ初回時,1週間後,1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後,5ヶ月後に評価した。評価及び運動療法は,理学療法士13名,作業療法士2名(経験年数1~16年目)が担当とした。運動療法は,McKenzie法に基づき,頸部の反復運動,姿勢保持等の評価から症状緩解が得られる運動方向を確認し,その方向への反復運動によるセルフエクササイズ(5-6回/2時間おき)と,姿勢指導を全例指導した。

統計解析は,JOACMEQの規定に従い,初回の頸椎機能が90ポイント未満の症例を対象とした。初回の頸椎機能と比較した各時期の獲得点数の治療経過の差の検定には,線形混合モデルを適用した。主効果が有意な水準間に対しては多重比較法として,対応のあるt検定を適用しBonfferoni法で修正した。改善度に関連する因子の分析は,JOACMEQの規定に従い,初回時頸椎機能が5ヶ月後に20ポイント以上増加した場合,または初回時頸椎機能が90ポイント未満で,5ヶ月後に90ポイント以上に達した場合を改善例,それ以外を改善不良例とした。改善不良の有無を従属変数とし,問診,カルテより年齢,性別,罹病期間,職業,通院状況,薬物療法の有無,初回時のNeck Disability Indexの障害度,JOACMEQの頸部痛及び上肢症状のVASを独立変数として,ロジスティック回帰分析で解析した。有意水準は5%とした。

【結果】

36例が初回頸椎機能90ポイント未満であった。初回と比較した獲得点数は,1週間後と比較して1ヶ月後以降は有意に高値を示した。5ヶ月後の頸椎機能改善不良例は7例であり,罹病期間(オッズ比:1.069,95%信頼区間:1.001-1.142)が危険因子であった。

【結論】

頸椎変性疾患に対してMcKenzie法に基づく運動療法により,頸椎機能はリハ開始1週間後以降に改善が得られた。また,罹病期間の長期化が,5ヶ月後の頸椎機能改善不良に関連していた。