[O-MT-09-5] 人工膝関節置換術閉創後の腫脹の要因と膝関節屈曲可動域に与える影響について
キーワード:人工膝関節置換術, 腫脹, 膝関節可動域
【はじめに,目的】人工膝関節置換術(以下TKA)術後の腫脹が膝関節屈曲可動域(以下ROM)に影響すると報告されているが,術後腫脹の要因については不明である。術後の腫脹の要因として,閉創後の出血量の影響が考えられ,臨床的には出血量が少ない方が腫脹が強く,さらにROMも制限されていることを経験する。そこで本研究の目的は,閉創後の出血量が腫脹によるROM制限に与える影響を明らかにすることとした。
【方法】平成27年1月から平成27年9月の間に当院において変形性膝関節症に対しTKAを施行した25例中,事故抜去した症例を除いた24関節を対象とした。年齢AV73.4±SD8.1歳,男性4名,女性20名だった。ROM測定は術前,術後1週,2週,3週,4週に行った。出血量は,術創部閉創後から排液された血液量が50ml/日以下になるまでの総出血量を計測した。出血量の中央値198.0mlより高値317.6±115.0mlを多出血群,低値115.8±57.6mlを少出血群と2群化した。検定にはSPSS17.0を使用し,2群間の術前,術後1週,2週,3週,4週のROMをマンホイットニー検定で比較した。
【結果】少出血群/多出血群のROMは,術前134.2±9.5/120.0±146.0°(P<0.01)と有意差が認められた。1週85.0±16.0/92.1±10.1°,2週106.7±11.1/106.7±13.0°,3週117.1±7.2/113.8±13.1°は有意差が認められなかった。4週124.2±4.7/115.4±13.2°(P<0.01)は有意差が認められた。
【結論】群間の比較で,術後1,2,3週にROMの有意差が認められなかったことから,腫脹によるROM制限には術後出血量の影響は少ないことが示唆される。少出血群は,関節包内に血液が貯留することで,1,2週目のROMが不良だと考えたが,両群共に術後の出血は滞りなくドレナージされており有意差が生じなかったと考えられる。術後の腫脹は,閉創後の出血による血液貯留に起因する関節包内腫脹ではなく,その他軟部組織の炎症性の変化等の要素が大きいと考えられるため,腫脹によるROM制限の影響が強い時期にはRICE処置の重要性が示唆される。また,術前のROM不良は出血量が多く,4週目のROMも多出血群の方が不良であったことから,術前の変形や軟部組織との関係性を明らかとすることが今後の課題である。
【方法】平成27年1月から平成27年9月の間に当院において変形性膝関節症に対しTKAを施行した25例中,事故抜去した症例を除いた24関節を対象とした。年齢AV73.4±SD8.1歳,男性4名,女性20名だった。ROM測定は術前,術後1週,2週,3週,4週に行った。出血量は,術創部閉創後から排液された血液量が50ml/日以下になるまでの総出血量を計測した。出血量の中央値198.0mlより高値317.6±115.0mlを多出血群,低値115.8±57.6mlを少出血群と2群化した。検定にはSPSS17.0を使用し,2群間の術前,術後1週,2週,3週,4週のROMをマンホイットニー検定で比較した。
【結果】少出血群/多出血群のROMは,術前134.2±9.5/120.0±146.0°(P<0.01)と有意差が認められた。1週85.0±16.0/92.1±10.1°,2週106.7±11.1/106.7±13.0°,3週117.1±7.2/113.8±13.1°は有意差が認められなかった。4週124.2±4.7/115.4±13.2°(P<0.01)は有意差が認められた。
【結論】群間の比較で,術後1,2,3週にROMの有意差が認められなかったことから,腫脹によるROM制限には術後出血量の影響は少ないことが示唆される。少出血群は,関節包内に血液が貯留することで,1,2週目のROMが不良だと考えたが,両群共に術後の出血は滞りなくドレナージされており有意差が生じなかったと考えられる。術後の腫脹は,閉創後の出血による血液貯留に起因する関節包内腫脹ではなく,その他軟部組織の炎症性の変化等の要素が大きいと考えられるため,腫脹によるROM制限の影響が強い時期にはRICE処置の重要性が示唆される。また,術前のROM不良は出血量が多く,4週目のROMも多出血群の方が不良であったことから,術前の変形や軟部組織との関係性を明らかとすることが今後の課題である。