第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)15

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:青木一治(名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

[O-MT-15-5] 競泳選手における腰痛と背部筋の筋量および筋硬度との関連

北村岳斗1, 正木光裕2, 近藤勇太2, 清水厳郎2, 本村芳樹2, 佐伯純弥2, 森下勝行2, 井上和郁子2, 水上優1, 田島稔己1, 市橋則明2 (1.京都大学医学部人間健康科学科, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

Keywords:腰痛, 競泳, 体幹筋

【はじめに,目的】

様々なスポーツの中でも競泳は腰痛の発生頻度が高く,腰痛発生率は53.8%との報告もある。また,一般に腰痛患者では健常者と比較して腹横筋や腰部多裂筋の筋量が減少し,左右差が生じていると報告されている。さらに,腰痛患者では腹横筋や腰部多裂筋の活動に機能不全が生じ,脊柱起立筋といった体幹表面筋が過剰に活動しているとされている。

腰痛を有する競泳選手においても腹横筋,腰部多裂筋の筋量減少や左右差が生じ,また脊柱起立筋の過活動によって筋硬度が増加することで,腰痛発症や筋肉の短縮につながっている可能性がある。しかし,腰痛を有する競泳選手の体幹筋の筋量および筋硬度については明らかにされていない。よって,本研究の目的は競泳選手における腰痛の有無と体幹筋の筋量および筋硬度との関連を明らかにすることとした。

【方法】

対象は大学水泳部に所属する,現在腰痛がなく過去に3ヵ月以上続く腰痛を経験していない競泳選手12名(健常群:年齢20.2±1.71歳),現在もしくは過去に3ヵ月以上続く両側/中心性の腰痛を経験した競泳選手9名(腰痛群:年齢20.4±1.62歳)とした。

筋量の評価には超音波画像診断装置(Supersonic Imaging社製)を用いて安静臥位にて腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋,胸・腰部脊柱起立筋,腰部多裂筋の筋厚を測定した。筋硬度の指標として超音波画像診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いて,安静腹臥位と体幹45度屈曲位にて腰部多裂筋,胸・腰部脊柱起立筋の弾性率(kPa)を測定した。筋厚および筋硬度は左右の平均値を算出し,さらに左右差(筋厚および筋硬度の大きい側―小さい側)を算出した。姿勢アライメントはSpinal Mouse(Index社製)を用いて,安静腹臥位における矢状面での胸椎後彎角度,腰椎前彎角度,仙骨前傾角度を測定した。統計解析では体幹筋の筋厚および筋硬度,腹臥位での姿勢アライメント,年齢,身長,体重,BMI,競技歴について,対応のないt検定またはWelchの検定を用いて群間で比較した。

【結果】

年齢,身長,体重,BMI,競技歴,腹臥位での姿勢アライメントは,群間で有意差はみられなかった。筋厚は,腰部多裂筋において腰痛群が健常群より有意に減少していた。筋厚の左右差は,内腹斜筋において腰痛群が健常群よりも有意に増加していた。筋硬度は,体幹45度屈曲位での腰部脊柱起立筋において腰痛群が健常群よりも有意に増加していた。その他の筋の筋厚および筋硬度,左右差には群間で有意差がみられなかった。

【結論】

本研究の結果より,腰痛を有する競泳選手は腰部多裂筋の筋量が減少し,内腹斜筋の筋量の左右のアンバランスが生じていることが示唆され,これらの体幹筋の筋量の違いが競泳選手の腰痛発症につながっている可能性がある。また,腰痛を有する競泳選手において腰部脊柱起立筋の筋硬度が高いことから,腰部脊柱起立筋の柔軟性の低下が生じていると考えられる。