第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)15

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:青木一治(名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

[O-MT-15-4] 若年者と高齢者における体幹筋の筋厚および筋輝度の比較

星翔哉1,2, 佐藤成登志3, 北村拓也4, 郷津良太2, 金子千恵5 (1.新潟リハビリテーション病院理学療法科, 2.新潟医療福祉大学大学院理学療法学分野, 3.新潟医療福祉大学理学療法学科, 4.新潟リハビリテーション大学理学療法学専攻, 5.胎内市市役所健康福祉課)

Keywords:体幹筋, 筋厚, 筋輝度

【はじめに,目的】

加齢に伴い筋内脂肪は増加するとされている。高齢者における筋内脂肪は,身体機能と負の相関を示すと報告があることからも,わが国の高齢化社会において,体幹筋の筋内脂肪を把握することは重要であると考えられる。また,体幹筋の筋量低下は高齢者のADL低下の大きな要因であると報告もある。このことから,体幹筋の評価において,量と質を併せて検討することが必要であると考えられる。近年,筋内脂肪の評価方法として,超音波エコー輝度(以下,筋輝度)が用いられており,脂肪組織と筋輝度との関連性も報告されている。しかし,加齢による筋厚と筋輝度の変化に着目した報告の多くは,四肢筋を対象としており,体幹筋についての報告は少ない。

本研究の目的は,健康な成人女性を対象に,若年者と高齢者における体幹筋の筋厚および筋輝度を比較し,加齢による量と質の変化を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象者は,健常若年女性(以下,若年群)10名(年齢20.6±0.7歳,身長159.9±5.4cm,体重51.4±4.8kg,BMI20.1±1.5)と,健常高齢女性(以下,高齢群)10名(年齢68.6±3.9歳,身長152.6±8.1cm,体重51.2±3.9kg,BMI22.4±1.7)とした。使用機器は超音波診断装置(東芝メディカルシステムズ株式会社)を使用した。測定肢位は腹臥位および背臥位。測定筋は,左右の外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋,多裂筋,大腰筋とした。得られた画像から各筋の筋厚を測定し,画像処理ソフト(Image J)を使用して筋輝度を算出した。なお筋厚は量,筋輝度は質の指標とした。得られたデータに統計学的解析を行い,有意水準は5%とした。また筋厚および筋輝度の信頼性は,級内相関係数(以下,ICC)を用いて,検者内信頼性を確認した。

【結果】

ICCの結果,筋厚と筋輝度は0.81以上の高い信頼性を得た。筋厚における若年群と高齢群の比較では,左右ともに外腹斜筋,内腹斜筋,大腰筋で高齢群が有意に小さく(p<0.05),腹横筋,多裂筋は有意な差は認めなかった。筋輝度においては,左右ともに外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋,多裂筋,大腰筋で高齢群が有意に高かった(p<0.05)。

【結論】

本研究の結果より,外腹斜筋,内腹斜筋,大腰筋は加齢に伴い筋厚は低下し,筋輝度が高かった。一方,腹横筋と多裂筋では,筋輝度は高くなるが,筋厚の低下は生じていなかった。すなわち体幹筋においては,加齢に伴い,筋厚が低下するだけではなく,筋内脂肪や結合組織の増加といった筋の組織的変化も生じていることが明らかになった。しかし,体幹深部に位置し,姿勢保持に関与している腹横筋と多裂筋は,加齢により筋厚の低下が起こりにくいと考えられる。以上のことから,加齢に伴い外腹斜筋,内腹斜筋,大腰筋は量と質がともに低下するが,腹横筋と多裂筋は質のみが低下し,量の変化は生じにくいことが示唆された。