[O-MT-18-5] 超音波エコーを用いた評価と徒手的治療により膝関節屈曲可動域制限が改善し得た大腿部滑膜肉腫広範切除術後の一症例
Keywords:滑膜肉腫, 関節可動域, 超音波エコー
【はじめに,目的】滑膜肉腫は比較的稀な疾患であり,20~40歳代で多く,下肢に好発する。治療は広範切除術が基本となり,腫瘍を周囲の正常な組織で包み込み一塊として切除する手術のため,関節付近の手術の場合その関節に制限が生じることがある。一般的な運動器疾患のROM制限の改善には,ROM ex.とともに物理療法を併用することが多いが,物理療法は悪性腫瘍に対しては禁忌とされており,徒手的にROM制限を改善することが求められる。今回は超音波エコーを用いて評価を行いつつ徒手的にROMの改善を図り,膝関節屈曲ROMの改善が得られたので報告する。
【方法】症例は50歳代女性。現病歴は,H26/9 左大腿部の腫瘤に気づき,12/13 近医受診。H27/1/6 紹介にて他院を受診し,左大腿部滑膜肉腫と診断。2/2 広範切除術実施(大腿外側広筋,腸脛靭帯の末梢約1/2を腫瘍とともに摘出)。3/3 当院にて理学療法開始。初期評価では,患側膝関節ROM屈曲80°,伸展0°。術創部~大腿部前外側mobility低下,膝蓋上嚢・膝蓋骨mobility低下を認めた。膝屈曲時,歩行時に大腿前面の伸張痛あり。筋力はQuad MMT4(lag15°)。ADLは,歩行時には膝折れがあったためT-cane使用し,階段昇降は手すり使用,その他は自立していた。理学療法は,筋力強化,ROM ex.,モビライゼーション,ストレッチ,立位Q-setting,ハーフスクワットとし,7月~エルゴメータも追加した。超音波エコーは,GEヘルスケア社製LOGIQ eを用いてB-モード,リニア型プローブにて実施した。
【結果】膝屈曲ROM85(4月)→95(5月)→100(6月)→105(7月)→110~115(8月)→115~120°(9月)。筋力はQuad MMT4+(lag5°)となり,膝折れは軽減し独歩が可能となった。4月時点の超音波エコーでは,皮下組織と筋,脂肪体の滑走性低下が観察された。特に大腿遠位の術創部直下は低エコー像と無エコー像が混在し不均一となっており,互いに引っ張り合う様子が観察された。その後,膝屈曲ROMの改善とともに皮下組織と筋,脂肪体の滑走性もスムースとなり,術創部直下の低エコー像と無エコー像が混在した不均一な像も少なくなった。
【結論】本症例は大腿外側広筋,腸脛靭帯の末梢約1/2を腫瘍とともに摘出しており術侵襲が大きく,皮膚・皮下組織・筋・脂肪体などの癒着・瘢痕化が引き起こされていた。視診・触診から皮膚の伸張性が低下しており,超音波エコーにより皮下組織と筋,脂肪体などの滑走性低下が観察された。それに対して,徒手的なモビライゼーションとストレッチ,筋収縮運動,自動介助運動により皮膚の伸張性と皮下組織・筋・脂肪体の癒着の改善を図り,滑走性を出したことで膝屈曲ROMの改善に繋がったと考える。本症例は比較的稀な疾患であるが,超音波エコーを利用して皮下組織や筋,脂肪体などの伸張性や滑走性を客観的に評価し,徒手的な治療を行うことで,物理療法が併用できない場合でもROMの改善が得られるということが示された。
【方法】症例は50歳代女性。現病歴は,H26/9 左大腿部の腫瘤に気づき,12/13 近医受診。H27/1/6 紹介にて他院を受診し,左大腿部滑膜肉腫と診断。2/2 広範切除術実施(大腿外側広筋,腸脛靭帯の末梢約1/2を腫瘍とともに摘出)。3/3 当院にて理学療法開始。初期評価では,患側膝関節ROM屈曲80°,伸展0°。術創部~大腿部前外側mobility低下,膝蓋上嚢・膝蓋骨mobility低下を認めた。膝屈曲時,歩行時に大腿前面の伸張痛あり。筋力はQuad MMT4(lag15°)。ADLは,歩行時には膝折れがあったためT-cane使用し,階段昇降は手すり使用,その他は自立していた。理学療法は,筋力強化,ROM ex.,モビライゼーション,ストレッチ,立位Q-setting,ハーフスクワットとし,7月~エルゴメータも追加した。超音波エコーは,GEヘルスケア社製LOGIQ eを用いてB-モード,リニア型プローブにて実施した。
【結果】膝屈曲ROM85(4月)→95(5月)→100(6月)→105(7月)→110~115(8月)→115~120°(9月)。筋力はQuad MMT4+(lag5°)となり,膝折れは軽減し独歩が可能となった。4月時点の超音波エコーでは,皮下組織と筋,脂肪体の滑走性低下が観察された。特に大腿遠位の術創部直下は低エコー像と無エコー像が混在し不均一となっており,互いに引っ張り合う様子が観察された。その後,膝屈曲ROMの改善とともに皮下組織と筋,脂肪体の滑走性もスムースとなり,術創部直下の低エコー像と無エコー像が混在した不均一な像も少なくなった。
【結論】本症例は大腿外側広筋,腸脛靭帯の末梢約1/2を腫瘍とともに摘出しており術侵襲が大きく,皮膚・皮下組織・筋・脂肪体などの癒着・瘢痕化が引き起こされていた。視診・触診から皮膚の伸張性が低下しており,超音波エコーにより皮下組織と筋,脂肪体などの滑走性低下が観察された。それに対して,徒手的なモビライゼーションとストレッチ,筋収縮運動,自動介助運動により皮膚の伸張性と皮下組織・筋・脂肪体の癒着の改善を図り,滑走性を出したことで膝屈曲ROMの改善に繋がったと考える。本症例は比較的稀な疾患であるが,超音波エコーを利用して皮下組織や筋,脂肪体などの伸張性や滑走性を客観的に評価し,徒手的な治療を行うことで,物理療法が併用できない場合でもROMの改善が得られるということが示された。