[O-MT-21-4] 地域在住高齢者におけるロコモティブシンドローム悪化と関連する運動機能についての大規模縦断研究
キーワード:ロコモティブシンドローム, ロコモ25, 地域在住高齢者
【はじめに,目的】
運動機能の低下から引き起こされる要介護リスクの高い状態を示すロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念が提唱され,関心を集めている。ロコモと運動機能との関連についての横断研究はいくつか見受けられるが,運動機能を多面的に評価し,ロコモの悪化にはどのような運動機能が関連しているのかについて大規模サンプルで縦断的に検討した報告はみられない。そこで,本研究の目的はロコモの悪化と関連する運動機能について多面的,縦断的に検討することとした。
【方法】
対象は滋賀県長浜市在住の健常高齢者でロコモ調査・運動機能評価を行った873名中,1年後にロコモ追跡調査を実施できた389名(男性127名,女性262名,年齢67.0±4.9歳,身長157.4±8.1cm,体重56.3±9.5kg)とした。なお,測定に大きな支障を及ぼすほど重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。ベースライン測定としてロコモ調査および運動機能の評価を行い,1年後にロコモの追跡調査を実施した。ロコモの調査にはロコモ25を用いた。ロコモ25は疼痛,日常動作の困難感,転倒に対する不安など25問100点満点で構成される自記式質問票である。運動機能として筋力(握力,膝関節伸展筋力,股関節屈曲筋力,股関節伸展筋力,股関節外転筋力,足趾把持筋力),静的バランス機能(片脚立位保持時間),動的バランス機能(Timed Up and Go),筋パワー(5回立ち座りテスト),筋持久力(30秒段差昇降回数)歩行速度(通常速度,最大速度,二重課題下速度)を測定した。
ロコモ25の1年間のスコア変化量の結果から,上位40%五分位の者をロコモ維持向上群,下位40%五分位を悪化群とした。ロコモ悪化群と維持向上群について,対応のないt検定を用いて2群間のベースラインでの運動機能および年齢を比較した。さらにロコモ悪化群,維持向上群を従属変数とし,ベースライン時の運動機能および年齢を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
ベースラインでのロコモ25スコアは6.5±8.0点,1年後は8.0±9.8点であり,1年後に有意な増加を認めた。ロコモ維持向上群(1年間でのロコモ25スコア変化が0点以下であった者)は178名(45.6%),悪化群(2点以上スコアが増加した者)は169名(43.3%)だった。悪化群と維持向上群との間で有意差がみられたのは股関節屈曲筋力(悪化群;0.81±0.23Nm/kg,維持向上群;0.86±0.23Nm/kg)のみであった。多重ロジスティック分析の結果,股関節屈曲筋力(オッズ比;0.38倍,95%信頼区間;0.15-0.95)のみが有意な関連因子として抽出された。
【結論】
本研究の結果,ロコモの悪化には運動機能のなかで特に股関節屈曲筋力が関連していることが示され,高齢者のロコモ予防において,股関節屈曲筋力を評価介入していくことの必要性が示唆された。
運動機能の低下から引き起こされる要介護リスクの高い状態を示すロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念が提唱され,関心を集めている。ロコモと運動機能との関連についての横断研究はいくつか見受けられるが,運動機能を多面的に評価し,ロコモの悪化にはどのような運動機能が関連しているのかについて大規模サンプルで縦断的に検討した報告はみられない。そこで,本研究の目的はロコモの悪化と関連する運動機能について多面的,縦断的に検討することとした。
【方法】
対象は滋賀県長浜市在住の健常高齢者でロコモ調査・運動機能評価を行った873名中,1年後にロコモ追跡調査を実施できた389名(男性127名,女性262名,年齢67.0±4.9歳,身長157.4±8.1cm,体重56.3±9.5kg)とした。なお,測定に大きな支障を及ぼすほど重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。ベースライン測定としてロコモ調査および運動機能の評価を行い,1年後にロコモの追跡調査を実施した。ロコモの調査にはロコモ25を用いた。ロコモ25は疼痛,日常動作の困難感,転倒に対する不安など25問100点満点で構成される自記式質問票である。運動機能として筋力(握力,膝関節伸展筋力,股関節屈曲筋力,股関節伸展筋力,股関節外転筋力,足趾把持筋力),静的バランス機能(片脚立位保持時間),動的バランス機能(Timed Up and Go),筋パワー(5回立ち座りテスト),筋持久力(30秒段差昇降回数)歩行速度(通常速度,最大速度,二重課題下速度)を測定した。
ロコモ25の1年間のスコア変化量の結果から,上位40%五分位の者をロコモ維持向上群,下位40%五分位を悪化群とした。ロコモ悪化群と維持向上群について,対応のないt検定を用いて2群間のベースラインでの運動機能および年齢を比較した。さらにロコモ悪化群,維持向上群を従属変数とし,ベースライン時の運動機能および年齢を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
ベースラインでのロコモ25スコアは6.5±8.0点,1年後は8.0±9.8点であり,1年後に有意な増加を認めた。ロコモ維持向上群(1年間でのロコモ25スコア変化が0点以下であった者)は178名(45.6%),悪化群(2点以上スコアが増加した者)は169名(43.3%)だった。悪化群と維持向上群との間で有意差がみられたのは股関節屈曲筋力(悪化群;0.81±0.23Nm/kg,維持向上群;0.86±0.23Nm/kg)のみであった。多重ロジスティック分析の結果,股関節屈曲筋力(オッズ比;0.38倍,95%信頼区間;0.15-0.95)のみが有意な関連因子として抽出された。
【結論】
本研究の結果,ロコモの悪化には運動機能のなかで特に股関節屈曲筋力が関連していることが示され,高齢者のロコモ予防において,股関節屈曲筋力を評価介入していくことの必要性が示唆された。