[O-NV-01-3] 片麻痺者の立ち上がり動作方法の違いがCOPと荷重率に及ぼす影響
Keywords:立ち上がり, COP, 荷重率
【はじめに,目的】
高齢者や片麻痺者の立ち上がり方法は,手すり等の設置環境によって多様化している。抗重力条件における姿勢制御では,重心と足圧中心点Center of pressure(以下COP)の位置関係の制御が重要であると言われている。しかし,理学療法士による立ち上がり指導は,手すりの把持位置や使用方法について明確にされていない。先行研究において片麻痺者による立ち上がり方法の違いが,臀部および足部の荷重量,COPに及ぼす影響を調査した研究は少ない。そこで本研究は,上肢押し動作(以下Push)と上肢引き動作(以下Pull)の違いが,立ち上がり時の臀部・足部の荷重量とCOPに与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は上肢によるPush,Pullでの立ち上がりが可能な片麻痺者12名とした。計測は,非麻痺側上肢によるPush,Pullの2条件で行い,固定式の平行棒と高さ40cmの椅子を利用した。計測は,バランスWiiボード(Nintendo)を臀部・両足部に3枚配置し,動作開始から離臀時の臀部COP前方・側方移動,離臀時の両足総荷重量,麻痺側・非麻痺側荷重量,両足部COPの前後位置を計測した。両足部COPの前後位置は,麻痺側と非麻痺側のCOP前後位置の差とし,正の値は麻痺側COPが非麻痺側COPよりも前方へ位置することを示す。2条件の比較には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
離殿時の荷重比において,総荷重比はPushで0.9±0.10,Pullで1.04±0.05とPullで有意に増加した(P<0.01)。非麻痺側荷重比はPushで0.56±0.14,Pullで0.64±0.09となり,総荷重比と同様にPullで有意に増加した。また,麻痺側荷重比においてはPushで0.44±0.14,Pullで0.36±0.09と,逆にPushで有意に増加することがわかった(P<0.05)。両足部COPの前後位置はPushで-1.47±2.44cm,Pullで1.36±3.81 cmと,Pushでは麻痺側COPより非麻痺側COPが前方へ位置するのに対し,Pullでは麻痺側COPが前方へ位置した(P<0.01)。
【結論】
今回の結果から,Push・Pullの立ち上がり方法の違いが,離臀時の足部荷重比やCOPに影響を与えることが示された。Pushでの立ち上がりはPullと比較して総荷重比・非麻痺側荷重比が小さく,平行棒を上肢で押す鉛直方向の反力が下肢への反力を減少させたと考えられる。一方で,Pullでの立ち上がりは平行棒を体幹方向へ引っ張り,前方への推進力を発生させるため,下肢の鉛直方向の反力は減少しなかったと考えられる。足部COPの前後移動位置において,Pushでは麻痺側より非麻痺側のCOPが前方に位置する結果となった。片麻痺者の立ち上がりは,麻痺側下肢に伸展共同運動パターンが出現しやすく,離殿後に麻痺側COPが前方移動すると考えられる。Pullにおいては,非麻痺側上下肢の過剰努力により,麻痺側下肢の伸展共同運動パターンを誘発し,麻痺側COPが前方へ移動することで重心の前方移動を阻害し,非麻痺側下肢への荷重が増えると推察される。
高齢者や片麻痺者の立ち上がり方法は,手すり等の設置環境によって多様化している。抗重力条件における姿勢制御では,重心と足圧中心点Center of pressure(以下COP)の位置関係の制御が重要であると言われている。しかし,理学療法士による立ち上がり指導は,手すりの把持位置や使用方法について明確にされていない。先行研究において片麻痺者による立ち上がり方法の違いが,臀部および足部の荷重量,COPに及ぼす影響を調査した研究は少ない。そこで本研究は,上肢押し動作(以下Push)と上肢引き動作(以下Pull)の違いが,立ち上がり時の臀部・足部の荷重量とCOPに与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は上肢によるPush,Pullでの立ち上がりが可能な片麻痺者12名とした。計測は,非麻痺側上肢によるPush,Pullの2条件で行い,固定式の平行棒と高さ40cmの椅子を利用した。計測は,バランスWiiボード(Nintendo)を臀部・両足部に3枚配置し,動作開始から離臀時の臀部COP前方・側方移動,離臀時の両足総荷重量,麻痺側・非麻痺側荷重量,両足部COPの前後位置を計測した。両足部COPの前後位置は,麻痺側と非麻痺側のCOP前後位置の差とし,正の値は麻痺側COPが非麻痺側COPよりも前方へ位置することを示す。2条件の比較には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
離殿時の荷重比において,総荷重比はPushで0.9±0.10,Pullで1.04±0.05とPullで有意に増加した(P<0.01)。非麻痺側荷重比はPushで0.56±0.14,Pullで0.64±0.09となり,総荷重比と同様にPullで有意に増加した。また,麻痺側荷重比においてはPushで0.44±0.14,Pullで0.36±0.09と,逆にPushで有意に増加することがわかった(P<0.05)。両足部COPの前後位置はPushで-1.47±2.44cm,Pullで1.36±3.81 cmと,Pushでは麻痺側COPより非麻痺側COPが前方へ位置するのに対し,Pullでは麻痺側COPが前方へ位置した(P<0.01)。
【結論】
今回の結果から,Push・Pullの立ち上がり方法の違いが,離臀時の足部荷重比やCOPに影響を与えることが示された。Pushでの立ち上がりはPullと比較して総荷重比・非麻痺側荷重比が小さく,平行棒を上肢で押す鉛直方向の反力が下肢への反力を減少させたと考えられる。一方で,Pullでの立ち上がりは平行棒を体幹方向へ引っ張り,前方への推進力を発生させるため,下肢の鉛直方向の反力は減少しなかったと考えられる。足部COPの前後移動位置において,Pushでは麻痺側より非麻痺側のCOPが前方に位置する結果となった。片麻痺者の立ち上がりは,麻痺側下肢に伸展共同運動パターンが出現しやすく,離殿後に麻痺側COPが前方移動すると考えられる。Pullにおいては,非麻痺側上下肢の過剰努力により,麻痺側下肢の伸展共同運動パターンを誘発し,麻痺側COPが前方へ移動することで重心の前方移動を阻害し,非麻痺側下肢への荷重が増えると推察される。