第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)03

Fri. May 27, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:岩月宏泰(青森県立保健大学大学院)

[O-NV-03-6] 歩行路の壁幅の違いによるParkinson病患者の歩行特性

H&Y2とH&Y3の加速度計での比較

山田一貫1,2, 国宗翔1,2, 眞砂望1, 岡田修一2 (1.社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院, 2.神戸大学大学院人間発達環境学研究科)

Keywords:Parkinson病, すくみ足, 加速度計

【はじめに,目的】Parkinson病(以下PD)患者の転倒の原因として近年,すくみ足(以下FOG)の発生が取り上げられている(Giladi,2008)。PD患者は重症度が上がるにつれて転倒回数が増加し,Hoehn&Yahrの重症度分類ステージ(以下H&Y)では,H&Y1・2では50.0%,H&Y3では78.3%,H&Y4では85.8%に上る(土田,2003)。また,H&Y3と4の30%以上は転倒により骨折しており,H&Y3以上で転倒・骨折の危険性が高まるため,転倒予防対策は重要である。近年小型加速度計によるPD患者の歩行分析の有用性が検討され,FOGの評価としてFreezing index(以下FI),Gait variabilityの評価としてwidth of the dominant frequency(以下width)が用いられている。今回の実験では,FOGは狭い空間の通り抜けなどで発生しやすいため,歩行路の壁幅の違いによるH&Y2,H&Y3のPD患者の歩行特性を明らかにし,転倒予防の一助とすることを本研究の目的とする。






【方法】対象は,健常高齢者(71.3±3.6歳)10名とH&Y2(76歳,UPDRSIII 14/108),H&Y3(75歳,UPDRSIII 43/108)のPD患者各1名ずつとした。歩行方法は,快適歩行速度にて,壁の無い場所から歩行を開始し,歩行開始地点から4m前方に平行に設置した長さ2.4mの壁の間を通り抜け,その後4m歩行する課題とした。壁幅の条件は,壁の設定の無い条件(以下無),壁幅120cmの広い条件(以下広),壁幅75cmの狭い条件(以下狭)の3条件とした。加速度評価は3軸加速度計(Microstone社製)を足関節外果直上と第3腰椎棘突起部に固定し,加速度波形をサンプリング周波数100Hzにて導出した。測定は各条件6回行い,その平均値を代表値とした。解析は,Moore(2008)の実験を参考に足関節外果直上の加速度計の鉛直成分を用いたFIとWeiss(2011)の実験を参考に第3腰椎棘突起部の加速度計の鉛直成分を用いwidthを解析した。






【結果】今回の実験中ではFOGは見られなかった。FIは,健常高齢者では,無0.57±0.12,広0.58±0.11,狭0.58±0.11,H&Y2では,無0.43,広0.5,狭0.22,H&Y3では,無1.39,広1.5,狭1.56であった。健常高齢者・H&Y2に比べ。H&Y3は全条件で高い傾向を示し,狭条件で最も高い傾向を示した。width(Hz)は,健常高齢者では,無0.74±0.07,広0.74±0.06,狭0.74±0.07,H&Y2では,無1.09,広1.32,狭1.04,H&Y3では,無1.56,広1.56,狭1.54であった。健常高齢者と比べH&Y2,H&Y3ともに全条件で高い傾向を示し,さらにH&Y2よりもH&Y3で高い傾向を示した。






【結論】H&Y2,H&Y3とも,健常高齢者に比べwidthで高い傾向を示したことから,PDの歩行の特徴は歩行様式の変動の大きさであると考えられる。また,H&Y3では,健常高齢者,H&Y2と比べFIで高い傾向を示したことから,FOG発生により転倒の危険性が増大し,狭い壁幅の間を通過する際にはさらに増大すると考えられる。そのためPD発症初期より律動的な歩行練習を行い,H&Y3ではFOGの発生頻度を減少させる対策が必要と考える。