第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)06

Sat. May 28, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:松田淳子(医療法人同仁会(社団)介護老人保健施設マムクオーレ 療養課)

[O-NV-06-3] 脳血管障害患者における予後予測シート作成の試み

長野文彦, 河﨑靖範, 槌田義美, 山鹿眞紀夫 (熊本リハビリテーション病院リハビリテーション部)

Keywords:脳血管障害, 予後予測, 機能的自立度評価法(FIM)

【はじめに,目的】

当院では,脳血管障害患者(CVA患者)345名のデータを元に退院時運動FIM予測式を作成し,その効果を第48回本学会にて報告した。今回,患者データ数を増やし入院時所見に新たな項目を追加して予測式の精度を向上させ,ADL回復過程予測曲線と退院先の予測を併せて「CVA予後予測シート」を作成したので報告する。

【方法】

H21~26年度に当院を退院したCVA患者1279名の内,入院中急性期病院へ転院した者,発症後60日以上経過した後入院した者,在院日数60日以内の者を除外した702名(平均年齢72.0±12.8歳,男性378名 女性324名,平均在院日数124.7±38.9日)を対象とした。入院時所見を独立変数とし,退院時運動FIMと12時点の各合計FIM(入院後30~180日経過までの期間を15日おきに分けた11時点,退院時)を従属変数としてそれぞれ重回帰分析(変数選択:ステップワイズ法)を行い,退院先(自宅,その他)を従属変数としてロジスティック回帰分析(変数選択:変数増加法[尤度比])を行った。入院時所見は年齢,性別,発症~入院期間,運動•認知FIM,診断名,治療,麻痺側,ST目的,リハ意欲,装具作成,経済状況,家族協力,家族構成,上肢・手指・下肢Br.Stage,高齢者日常生活自立度,認知症高齢者自立度,意識障害,高次脳機能障害,USNと今回新たに追加した7項目(入院時・病前歩行レベル,心・整形・呼吸器疾患合併,失語症,嚥下障害)の計29項目とした。

【結果】

FIM予測式は,退院時運動FIM=71.80+0.25*(運動FIM)+0.37*(認知FIM)-0.35*(年齢)-4.98*(意識障害)+0.82*(認知症高齢者自立度)+1.95*(病前歩行レベル)+1.21*(下肢Br.Stage)-1.56*(高次脳機能障害)-1.69*(USN)-3.24*(リハ意欲)-4.61*(既往歴)+1.70*(失語症)-1.99*(嚥下障害)-0.11*(発症~入院期間)+3.09*(心疾患合併)となり,重相関係数(寄与率)は0.87(0.76)であった。入院後11時点と退院時の各合計FIM予測式は,重相関係数(寄与率)が0.88~0.94(0.78~0.88)となり,退院時運動FIMとほぼ同様の独立変数が選択された。退院先の予測式は,自宅復帰率=1/1+EXP[-1*{1.27+0.05*(運動FIM)+0.05*(認知FIM)-0.05*(年齢)+0.15*(認知症高齢者自立度)-0.33*(USN)+0.22*(入院時歩行レベル)+0.29*(病前歩行レベル)-1.79*(経済状況)-1.15*(家族協力)+1.20*(家族構成)}]となり,判別的中率は85.2%であった。

【結論】

前回報告したFIM予測式の重相関係数(寄与率)は0.84(0.70)であり,予測式の精度は向上した。また,入院後から連続的に合計FIM予測式を算出し,ADL回復過程予測曲線を作成した。これに退院先の予測も併せて作成した「CVA予後予測シート」は,入院時所見を入力することで簡便に予後予測が行え,治療方針の立案や退院後のサービス利用を調整していく際など,実際の臨床場面においてもより有益なツールになるものと考える。