第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)06

Sat. May 28, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:松田淳子(医療法人同仁会(社団)介護老人保健施設マムクオーレ 療養課)

[O-NV-06-4] 回復期リハビリテーション病棟入院の脳卒中患者における栄養状態とFIM改善との関連因子

―年代別での検討―

藤高祐太, 田中直次郎, 中臺久恵, 佐藤梨央, 渡邉光子, 岡本隆嗣 (西広島リハビリテーション病院)

Keywords:回復期, FIM, 栄養状態

【はじめに,目的】

回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者には栄養不良状態の患者が少なくない。栄養不良状態の患者は,栄養良好な患者と比べ入院時Functional Independence Measure(以下FIM)と退院時FIMが低く,また,入院時の栄養状態は転帰先に影響すると報告がある。しかし,脳卒中患者において年代別に栄養状態とFIM改善の関連因子を検討した報告は少ない。そこで,本研究では回復期リハビリテーション病棟入院の高齢脳卒中患者の栄養状態とFIM改善に関連する因子を年代別で検討することを目的とした。


【方法】

対象は2013年5月から2015年2月に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した60歳以上の脳卒中患者とし,そのうち,入院途中で転院した者,入院期間が30日以内の者を除外した328名とした。対象者の年齢で60歳代(96名),70歳代(126名),80歳以上(106名)に分類した。研究デザインは後ろ向き観察研究であり,調査項目は栄養指標であるGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI),性別,下腿周径,嚥下グレード,FIM運動項目,FIM改善を表すFIM effectiveness[退院時FIM-入院時FIM/(126-入院時FIM)]とした。データは入院時のものとし,下腿周径は非麻痺側のものとした。統計解析はFIM effectivenessを目的変数とし,GNRI,性別,下腿周径,嚥下グレード,FIM運動項目を説明変数として変数増加法による重回帰分析を行った。また,多重共線性を考慮するため,Pearsonの積率相関分析およびSpearmanの順位相関分析を用いて,説明変数間で高い相関があるものを確認した。統計ソフトはStatcel 3を使用し,有意水準は5%とした。


【結果】

相関分析の結果,どの年代も説明変数間における高い相関は確認されなかった。重回帰分析の結果,FIM改善に影響を及ぼす因子として60歳代と70歳代ではFIM運動項目のみが抽出されたが,80歳以上ではFIM運動項目(β=0.604,p<0.001)とGNRI(β=0.179,p=0.04)が抽出された(自由度修正済み決定係数:R2=0.505)。


【結論】

重回帰分析の結果より,60歳代,70歳代の栄養状態はFIM改善に大きな影響を及ぼさないが,80歳以上では影響を及ぼすことが示唆された。どの年代でも抽出されたFIM運動項目は,これまで多くの報告がなされており,今回の結果も妥当なものと考えられる。FIM運動項目以外の因子は,80歳以上のみでGNRIが抽出された。これは,より高齢になるほど元々の体力低下等から代償機能が低下しており,FIM運動項目だけでなく栄養状態の影響も受けやすくなっていることを示したと考えられる。したがって,回復期リハビリテーション病棟入院中の80歳以上の脳卒中患者において効率的なリハビリテーションを行うには,より積極的に栄養コントロールを検討する必要があると考えられる。本研究の限界として,対象者の合併症を考慮していないこと,また,運動機能を説明変数に挙げていないため,今後検討していく必要があると考える。