第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)06

2016年5月28日(土) 11:10 〜 12:10 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:松田淳子(医療法人同仁会(社団)介護老人保健施設マムクオーレ 療養課)

[O-NV-06-5] 回復期における視床出血患者の歩行予後予測式の作成

水梨史也, 渡部友宏, 酒向敦裕, 下岩克章, 四方辰哉, 北村哲也 (社会福祉法人恩賜財団済生会支部愛知県済生会リハビリテーション病院リハビリテーション科)

キーワード:視床出血, 歩行自立, 予後予測

【はじめに,目的】

回復期病院では脳画像から機能的予後予測を立てることは適切な治療プログラムを立案するために有用であるとされている。日本脳卒中外科学会のCT分類(以下:CT分類)を用いた視床出血の予後の基準や血腫量に関しての予後の検討は散見しているが,回復期病院での歩行自立度の影響を報告したものは少ない。今回,当院回復期病院に入院した視床出血患者に対し退院時歩行自立の予測に関係する要因に加え,CT画像を用いてCT分類と血腫量を比較し,歩行自立の予測に必要な要因を明らかにすることを目的とした。




【方法】

対象は2012年8月から2015年8月までの間,当院回復期病院に入院した初回発症の視床出血患者56例(年齢71.2±12.9歳,男性40名,女性16名,右麻痺29例,左麻痺27例)とした。除外項目として,状態の悪化による転院・発症前の歩行が自立していない者とした。これらを対象に,退院時の歩行自立度をFunctional Independence Measure(以下:FIM)を用いて分類し1~5点を歩行非自立群,6点7点を歩行自立群の2群に分類した。解析に用いる因子は,年齢,麻痺側,血腫量(血腫の最大横径×最大前後径×最大上下径×1/2),発症から当院入院までの日数(以下:日数),入院時FIM合計点,入院時Stroke Independence Assessment Set motor(以下:SIAS-m),CT分類,感覚障害の有無とした。統計は自立群と非自立群に関して,χ2検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定を用いた。退院時の歩行能力に影響を与える変数の分析と予測確率の算出には,群間比較で有意差を認めた項目を独立変数,退院時の歩行能力を従属変数として,ステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った。統計解析にはSPSS ver.19を使用し有意水準5%未満とした。




【結果】

2群の内訳は自立群21例(年齢64.4±13.2歳,右麻痺14例,左麻痺8例,在院日数61.6±33.9日),非自立群35例(年齢75.6±10.7歳,右麻痺13例,左麻痺21例,在院日数114.2±37.3日)であった。両群の比較では,年齢,血腫量,日数,FIM,SIAS-m,CT分類で有意差がみられたが,麻痺側,感覚障害の有無では有意差がみられなかった。ステップワイズ法のロジスティック回帰分析の結果,SIAS-mとFIMが採択され,その他の独立変数は棄却された。得られた回帰式は,Y=-8.073×(-0.053)×SIAS-m+(-0.359)×FIMであり,Hosmer-Lemeshowの適合度検定の結果はp=0.9となった。




【結論】

退院時歩行自立度の影響因子を検討した結果,入院時のSIAS-m,FIMが採択された。先行研究においてCT分類や血腫量が歩行自立に対して重要とする報告はみられるが,今回の結果では棄却された。つまり,脳画像所見は重要な評価項目ではあるが回復期病院においては実際の身体機能など他の諸要因を踏まえて予測していく必要があると考える。今回入院時の評価から,当院における歩行自立度の予後予測が行えることが示唆された。今後は,高次機能障害や他因子も含め予測式の精度を比較検討していく必要がある。