[O-NV-08-2] 小児期脊髄性筋萎縮症に対する運動機能評価尺度について
~HFMSE,CHOP INTENDの検討~
Keywords:小児期脊髄性筋萎縮症, HFMSE, CHOP INTEND
【はじめに】
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,以下SMA)は,脊髄の運動神経細胞の病変によって起こる筋萎縮症であり,体幹,四肢の近位部優位に筋力低下を示す。SMAの運動機能評価は施設や検者により評価法が異なっており,日本において標準化された運動機能評価尺度は存在していない。
欧米ではSMAII,III型を対象としたHammersmith Functional Motor Scale Expand(HFMSE)とSMAI型や重症な神経筋疾患乳児を対象としたThe Children's Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders(CHOP INTEND)が開発され,共にSMAの運動機能評価尺度として提唱された。
日本においても,希少疾患に対し信頼性のある評価尺度を用いることが重要であると考え,今回SMAを対象に,これらを施行し,適応について検討したので報告する。
【方法】
対象はSMAII型8名,III型1名の計9名,年齢は1~6歳の平均4.6±1.9歳だった。HFMSEを全例に施行し,座位保持不可能を確認した児には,CHOP INTENDも施行した。評価は事前に内容を熟知した者が行い,家族同席のもと,協力的に評価が行えるように配慮した。言語指示のみでは誘導が難しい場合,玩具を用いて最大運動能力を引き出すように介入した。
HFMSEは主に粗大運動機能を評価し,座位から始まり,寝返り,立位,歩行の全33項目をスコア0~2点の66満点で採点する。CHOP INTENDは上肢・下肢・頸部・体幹の自発運動や誘発刺激による反応を臥位から抗重力位で評価し,16項目を0~4点の64満点で採点する。
分析方法は①HFMSEの型別の得点を比較した,②HFMSEの型別の実施項目数を比較した,③HFMSEのII型における座位可能,不可能の得点を比較し,年齢について検討した,④HFMSE,CHOP INTENDの平均得点を比較した。
【結果】
得点は年齢順にHFMSE 0,0,0,1,11,18,23,14,54点。CHOP INTEND 33,41,36,34点。
①HFMSEの得点を型別にみるとII型は最小0,最大23平均8.2±9.3点,III型は54点だった。②II型は座位可能,不可能で17,5項目,III型33項目の施行であった。③座位可能,不可能はそれぞれ4名で,座位可能16.5±5.2,不可能0.25±0.5点だった。3歳以下はすべて座位不可能に含まれた。④座位不可能4名のHFMSEは0.25±0.5点,CHOP INTENDは36±3.6点だった。
【結論】
III型はHFMSEを用いることで,粗大運動機能の評価が可能であった。II型は運動機能では座位獲得の有無,年齢では3歳前後で2つの尺度の選択,もしくは併用を要することがわかった。座位不可能なII型はHFMSEのみではなく,CHOP INTENDも用いることで自発運動を捉え,能力の評価が可能であった。
今回は6歳以下の年少児のみの検討であったが,今後は年齢幅を広げ,機能低下を示す年齢層においても,的確に運動機能を評価できているのか,縦断的に検討を継続していきてい。
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,以下SMA)は,脊髄の運動神経細胞の病変によって起こる筋萎縮症であり,体幹,四肢の近位部優位に筋力低下を示す。SMAの運動機能評価は施設や検者により評価法が異なっており,日本において標準化された運動機能評価尺度は存在していない。
欧米ではSMAII,III型を対象としたHammersmith Functional Motor Scale Expand(HFMSE)とSMAI型や重症な神経筋疾患乳児を対象としたThe Children's Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders(CHOP INTEND)が開発され,共にSMAの運動機能評価尺度として提唱された。
日本においても,希少疾患に対し信頼性のある評価尺度を用いることが重要であると考え,今回SMAを対象に,これらを施行し,適応について検討したので報告する。
【方法】
対象はSMAII型8名,III型1名の計9名,年齢は1~6歳の平均4.6±1.9歳だった。HFMSEを全例に施行し,座位保持不可能を確認した児には,CHOP INTENDも施行した。評価は事前に内容を熟知した者が行い,家族同席のもと,協力的に評価が行えるように配慮した。言語指示のみでは誘導が難しい場合,玩具を用いて最大運動能力を引き出すように介入した。
HFMSEは主に粗大運動機能を評価し,座位から始まり,寝返り,立位,歩行の全33項目をスコア0~2点の66満点で採点する。CHOP INTENDは上肢・下肢・頸部・体幹の自発運動や誘発刺激による反応を臥位から抗重力位で評価し,16項目を0~4点の64満点で採点する。
分析方法は①HFMSEの型別の得点を比較した,②HFMSEの型別の実施項目数を比較した,③HFMSEのII型における座位可能,不可能の得点を比較し,年齢について検討した,④HFMSE,CHOP INTENDの平均得点を比較した。
【結果】
得点は年齢順にHFMSE 0,0,0,1,11,18,23,14,54点。CHOP INTEND 33,41,36,34点。
①HFMSEの得点を型別にみるとII型は最小0,最大23平均8.2±9.3点,III型は54点だった。②II型は座位可能,不可能で17,5項目,III型33項目の施行であった。③座位可能,不可能はそれぞれ4名で,座位可能16.5±5.2,不可能0.25±0.5点だった。3歳以下はすべて座位不可能に含まれた。④座位不可能4名のHFMSEは0.25±0.5点,CHOP INTENDは36±3.6点だった。
【結論】
III型はHFMSEを用いることで,粗大運動機能の評価が可能であった。II型は運動機能では座位獲得の有無,年齢では3歳前後で2つの尺度の選択,もしくは併用を要することがわかった。座位不可能なII型はHFMSEのみではなく,CHOP INTENDも用いることで自発運動を捉え,能力の評価が可能であった。
今回は6歳以下の年少児のみの検討であったが,今後は年齢幅を広げ,機能低下を示す年齢層においても,的確に運動機能を評価できているのか,縦断的に検討を継続していきてい。