[O-NV-15-4] 小脳型進行性核上性麻痺の運動療法
キーワード:小脳型進行性核上性麻痺, 起居動作, 姿勢制御
【はじめに,目的】
小脳型進行性核上性麻痺(PSP-C)は,病初期から小脳性運動失調を呈し,その後,垂直性眼球運動麻痺や姿勢反射障害,認知機能低下などを併発する疾患である。2009年にPSP-Cと名付けられ,有効な治療方法は確立されていない。また,そのリハビリテーションに関しては,ごくわずかな症例報告があるが,効果的な運動療法については明確になっていない。今回,当院にてPSP-Cと診断された症例を担当した。小脳性運動失調と核上性垂直眼球運動麻痺を主症状としていたが,それに加え一側にジストニー様の高緊張を併発し,起き上がりや立ち上がり,歩行が困難になる特徴を有していた。約3週間の運動療法にて起き上がりと立ち上がりが獲得できた介入を報告する。
【方法】
70代,男性。3年前にふらつき・眩暈・易転倒性にて発症,脊髄小脳変性症と診断された。その後症状が進行し,構音障害と垂直性眼球運動麻痺が認められた。今回は,精査・診断目的に入院し,PSP-Cと診断された。3週間の入院で15回の理学療法を実施。作業療法と言語療法も合わせて実施した。神経学的所見:垂直方向の眼球運動障害,両下肢の踵膝試験陽性,右下腿三頭筋高緊張,失調性歩行,姿勢反射障害,構音・嚥下障害,認知障害(MMSE:22点)。運動機能評価;Berg Balance Scale(BBS)21点,Functional Reach Test(FRT)L/R:155/143(mm),右足関節背屈-5°,Barthel Index(BI)20点。起き上がりでは,両足を挙上し,反動を使って起き上がろうとするが,頭頸部が伸展方向に動くため起き上がれない。立ち上がりでは,右足関節が底屈,頭頸部が過伸展し,右肩甲帯が後退するため,立ち上がれず,右後方への易転倒性を認めた。運動療法では,体幹の分節運動と頭部のコントロール,右上下肢の高緊張を伴う定型的運動パターンからの分離運動を改善した。特に,起き上がりや立ち上がり動作を細分化しながら協調性を改善し,運動の要素の獲得を促した。
【結果】
起き上がりと立ち上がりが自立。BBS25点,FRT L/R:177/190(mm),右足関節背屈0°,BI50点。
【結論】
本症例では,頭頸部の後屈に加えて,右側の捻じれを伴うジストニー様の高緊張が合併し,姿勢制御を難しくしていた。定型的運動パターンから分離するように高緊張を軽減し,適切な運動方向に動けること,連続した運動の中で協調性を獲得し,過剰努力を伴わないことの二点が動作獲得のために重要であった。PSP-Cのリハビリテーションでは,他の変性疾患と同様に,二次的障害を改善して機能的動作を獲得することが重要と考える。そのためには,PSP-Cの症候学的特徴を理解し,二次的障害を含めた姿勢・運動を分析,適切に介入することが必要である。PSP-Cは,症例数が非常に少なく,大規模な介入研究が難しい。運動療法による機能改善の報告例が増えることにより,リハビリテーションの適応として広く認知されると思われる。本報告はその一助となると考える。
小脳型進行性核上性麻痺(PSP-C)は,病初期から小脳性運動失調を呈し,その後,垂直性眼球運動麻痺や姿勢反射障害,認知機能低下などを併発する疾患である。2009年にPSP-Cと名付けられ,有効な治療方法は確立されていない。また,そのリハビリテーションに関しては,ごくわずかな症例報告があるが,効果的な運動療法については明確になっていない。今回,当院にてPSP-Cと診断された症例を担当した。小脳性運動失調と核上性垂直眼球運動麻痺を主症状としていたが,それに加え一側にジストニー様の高緊張を併発し,起き上がりや立ち上がり,歩行が困難になる特徴を有していた。約3週間の運動療法にて起き上がりと立ち上がりが獲得できた介入を報告する。
【方法】
70代,男性。3年前にふらつき・眩暈・易転倒性にて発症,脊髄小脳変性症と診断された。その後症状が進行し,構音障害と垂直性眼球運動麻痺が認められた。今回は,精査・診断目的に入院し,PSP-Cと診断された。3週間の入院で15回の理学療法を実施。作業療法と言語療法も合わせて実施した。神経学的所見:垂直方向の眼球運動障害,両下肢の踵膝試験陽性,右下腿三頭筋高緊張,失調性歩行,姿勢反射障害,構音・嚥下障害,認知障害(MMSE:22点)。運動機能評価;Berg Balance Scale(BBS)21点,Functional Reach Test(FRT)L/R:155/143(mm),右足関節背屈-5°,Barthel Index(BI)20点。起き上がりでは,両足を挙上し,反動を使って起き上がろうとするが,頭頸部が伸展方向に動くため起き上がれない。立ち上がりでは,右足関節が底屈,頭頸部が過伸展し,右肩甲帯が後退するため,立ち上がれず,右後方への易転倒性を認めた。運動療法では,体幹の分節運動と頭部のコントロール,右上下肢の高緊張を伴う定型的運動パターンからの分離運動を改善した。特に,起き上がりや立ち上がり動作を細分化しながら協調性を改善し,運動の要素の獲得を促した。
【結果】
起き上がりと立ち上がりが自立。BBS25点,FRT L/R:177/190(mm),右足関節背屈0°,BI50点。
【結論】
本症例では,頭頸部の後屈に加えて,右側の捻じれを伴うジストニー様の高緊張が合併し,姿勢制御を難しくしていた。定型的運動パターンから分離するように高緊張を軽減し,適切な運動方向に動けること,連続した運動の中で協調性を獲得し,過剰努力を伴わないことの二点が動作獲得のために重要であった。PSP-Cのリハビリテーションでは,他の変性疾患と同様に,二次的障害を改善して機能的動作を獲得することが重要と考える。そのためには,PSP-Cの症候学的特徴を理解し,二次的障害を含めた姿勢・運動を分析,適切に介入することが必要である。PSP-Cは,症例数が非常に少なく,大規模な介入研究が難しい。運動療法による機能改善の報告例が増えることにより,リハビリテーションの適応として広く認知されると思われる。本報告はその一助となると考える。