[O-RS-03-6] 慢性閉塞性肺疾患における副交感神経の応答性と骨格筋の疲労との関係
キーワード:慢性閉塞性肺疾患, 骨格筋, 自律神経障害
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)は,病期の進行に伴い骨格筋機能障害を生じる。骨格筋機能障害はADL及びQOLの低下に繋がるため,予防が必要である。骨格筋機能障害の原因は,低活動及び低栄養に加えて,自律神経障害の関与が示唆されている。自律神経障害は,骨格筋において血管収縮,酸化的エネルギー代謝酵素活性の変化を来し,骨格筋の疲労に関与する。自律神経障害の評価方法として,非侵襲的で簡便な心拍変動(以下HRV)を用いた方法がある。そこで本研究の目的を,COPD患者における骨格筋機能障害とHRVで評価した自律神経障害との関連を明らかにする事とした。骨格筋機能障害の原因の解明は,運動療法の発展と新たな効果判定の指標について新たな示唆を与えると考える。
【方法】
本研究の対象は,研究参加に同意の得られたCOPD患者10名とした。除外基準は,不整脈を有する患者,6週間以内に急性増悪を経験した者などとした。自律神経障害の評価は,胸に心拍計を装着し,6分間歩行テスト(以下6MWT)中の心拍のから解析した。得られたHRVのデータは周波数解析を行い検討した。骨格筋機能障害の評価は,大腿四頭筋に対し60%MVCでの等尺性運動を行わせ,その運動継続時間を計測すると共に,外側広筋に表面筋活動を装着した。表面筋電図から得られたデータは中間周波数を算出し,その変化の傾きを評価した。統計学的検討として,HRVの解析結果と中間周波数の傾きの関係性の検討はPearsonの積率相関分析を用い,統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
対象者の特性として,平均年齢78.2±5.3歳,GOLDの分類でStageIの患者は1名,StageIIは3名,StageIIIが6名であった。6分間歩行距離の平均は310±83mであった。骨格筋機能の平均値については,運動継続時間80.9±33秒,大腿四頭筋最大筋力30.7±12kgであった。表面筋電図より得られた中間周波数の傾きと有意な相関関係を認めたHRVパラメーターはVLF nu(r=0.77,p<0.05),HF nu(r=-0.80,p<0.05)であった。LF nu(r=-0.56,p=0.09),LF nu/HF nu(r=0.31,p=0.39)においては有意な関係は認めなかった。
【結論】
6MWT中のHF nuは運動に対する副交感神経の応答性の指標である。本研究結果からは,運動中において副交感神経系が減退しない対象者ほど,骨格筋が易疲労性であることが示唆された。運動によって副交感神経が減退し交感神経が有意になると,骨格筋の血管は拡張し,組織への酸素供給が促進される。運動中に交感神経が亢進しない場合では,酸化的なエネルギー代謝酵素の活性は低下し,解糖系が促進され,骨格筋のグリコーゲンは枯渇し,早期の筋疲労に繋がると考えられる。本研究によって,COPDにおける自律神経障害と骨格筋機能障害の関連が示唆された。今後はHRVを用いたスクリーニングの有用性を検討し,骨格筋機能障害の進行予防のための研究が必要である。
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)は,病期の進行に伴い骨格筋機能障害を生じる。骨格筋機能障害はADL及びQOLの低下に繋がるため,予防が必要である。骨格筋機能障害の原因は,低活動及び低栄養に加えて,自律神経障害の関与が示唆されている。自律神経障害は,骨格筋において血管収縮,酸化的エネルギー代謝酵素活性の変化を来し,骨格筋の疲労に関与する。自律神経障害の評価方法として,非侵襲的で簡便な心拍変動(以下HRV)を用いた方法がある。そこで本研究の目的を,COPD患者における骨格筋機能障害とHRVで評価した自律神経障害との関連を明らかにする事とした。骨格筋機能障害の原因の解明は,運動療法の発展と新たな効果判定の指標について新たな示唆を与えると考える。
【方法】
本研究の対象は,研究参加に同意の得られたCOPD患者10名とした。除外基準は,不整脈を有する患者,6週間以内に急性増悪を経験した者などとした。自律神経障害の評価は,胸に心拍計を装着し,6分間歩行テスト(以下6MWT)中の心拍のから解析した。得られたHRVのデータは周波数解析を行い検討した。骨格筋機能障害の評価は,大腿四頭筋に対し60%MVCでの等尺性運動を行わせ,その運動継続時間を計測すると共に,外側広筋に表面筋活動を装着した。表面筋電図から得られたデータは中間周波数を算出し,その変化の傾きを評価した。統計学的検討として,HRVの解析結果と中間周波数の傾きの関係性の検討はPearsonの積率相関分析を用い,統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
対象者の特性として,平均年齢78.2±5.3歳,GOLDの分類でStageIの患者は1名,StageIIは3名,StageIIIが6名であった。6分間歩行距離の平均は310±83mであった。骨格筋機能の平均値については,運動継続時間80.9±33秒,大腿四頭筋最大筋力30.7±12kgであった。表面筋電図より得られた中間周波数の傾きと有意な相関関係を認めたHRVパラメーターはVLF nu(r=0.77,p<0.05),HF nu(r=-0.80,p<0.05)であった。LF nu(r=-0.56,p=0.09),LF nu/HF nu(r=0.31,p=0.39)においては有意な関係は認めなかった。
【結論】
6MWT中のHF nuは運動に対する副交感神経の応答性の指標である。本研究結果からは,運動中において副交感神経系が減退しない対象者ほど,骨格筋が易疲労性であることが示唆された。運動によって副交感神経が減退し交感神経が有意になると,骨格筋の血管は拡張し,組織への酸素供給が促進される。運動中に交感神経が亢進しない場合では,酸化的なエネルギー代謝酵素の活性は低下し,解糖系が促進され,骨格筋のグリコーゲンは枯渇し,早期の筋疲労に繋がると考えられる。本研究によって,COPDにおける自律神経障害と骨格筋機能障害の関連が示唆された。今後はHRVを用いたスクリーニングの有用性を検討し,骨格筋機能障害の進行予防のための研究が必要である。