第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本支援工学理学療法学会 一般演題口述
(支援工学)02

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:杉原俊一(札幌秀友会病院 リハビリテーション科), 白銀暁(国立障害者リハビリテーションセンター)

[O-SK-02-2] 回復期脳卒中患者に対して連続10日間ロボットスーツHALを使用した時の歩行速度の変化

対照群との比較検討

高橋紗佳, 須藤恵理子 (秋田県立リハビリテーション・精神医療センター)

Keywords:ロボットスーツHAL, 脳卒中, 回復期

【はじめに,目的】

当センターはロボットスーツHAL福祉用(以下,HAL)を2012年より導入している。以前,回復期脳卒中患者にHALを連続使用したところ歩行速度の向上を認めたことを報告した。しかし,一般的に回復期脳卒中患者は歩行能力の改善を望める時期にあり,HALの効果について不明確な面がある。今回,連続10日間のHALトレーニングと通常練習を比較し,歩行速度の改善の差を明らかにすることとした。

【方法】

対象は2012年5月から2015年9月まで当センター回復期病棟に入院した脳卒中患者で,HALトレーニング群(以下,HAL群)9名,対照群9名とした。HAL群は男6/女3,年齢68.6±11.1歳,対照群は男5/女4,年齢62.3±9.6歳であった。入院時の歩行能力は全例杖,装具の使用を問わず10m歩行が可能であるが,病棟歩行は自立していなかった。HAL群はHAL装着下で起立練習や重心移動練習,歩行練習を連続10日間行った。時間は1回につきHAL着脱を除き30~40分とした。対照群は通常の理学療法(起立・歩行を中心とした基本動作,ROM,筋力増強練習,バランス練習)を連続10日間行った。HAL群は発症からHAL開始までの期間が80.4±12.7日,対照群はHAL群と類似した時期を設定し10日間測定した。対照群の研究開始までの期間は72.0±13.9日であった。この2群間において研究開始時の属性やADL能力,歩行速度に差はなかった。測定項目はHAL群,対照群の練習後1日目・7日目・10日目の10m最大歩行速度(以下,10mMWS(m/min),歩幅(cm),歩行率(steps/min)とした。得られたデータは統計ソフトIBM SPSS Statistics 21を用い二元配置分散分析で比較し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

以下に1回目→7回目→10回目の値を示す。HAL群の10mMWSは25.5±13.7→41.7±22.1→43.1±21.4,対照群は24.5±17.3→28.8±17.7→32.2±18.8であった。HAL群の歩幅は32.4±8.8→41.8±11.8→44.1±11.3,対照群は32.4±13.2→33.6±11.5→35.6±11.5であった。HAL群の歩行率は74.0±24.0→92.7±29.8→92.2±27.2,対照群は68.4±27.9→78.3±28.4→83.3±30.9であった。二元配置分散分析の結果,10mMWS(時間:F値23.1,p<0.01,時間×群間:F値5.25,p<0.05)と歩幅(時間:F値22.0,p<0.01,時間×群間:F値8.63,p<0.01)で主効果と交互作用を認めた。

【結論】

今回の結果よりHALトレーニングと通常の理学療法の両方において,10日間で歩行速度の向上が得られたが,HAL使用の方が歩幅の向上に起因する歩行速度の向上が明確であった。HALの使用は,麻痺側立脚相に股・膝関節の伸展運動を適切にアシストし,膝折れを軽減させ,PC画面上に表示される重心位置を視覚的に確認しながら行えることから,麻痺側下肢への荷重を促すことができると考える。更にHALを装着し30~40分,起立・歩行に特化した練習を行ったことでHAL使用の方が歩行速度の向上を促すことができたのではないかと考える。