第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本支援工学理学療法学会 一般演題口述
(支援工学)02

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:杉原俊一(札幌秀友会病院 リハビリテーション科), 白銀暁(国立障害者リハビリテーションセンター)

[O-SK-02-3] 背もたれ傾斜中における臀部ずれ力変動の軽減を目的とした背もたれ用シートカバーの効果検証

小原謙一, 藤田大介, 大坂裕, 高橋尚, 末廣忠延, 伊藤智崇 (川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科)

Keywords:リクライニング車椅子, 臀部ずれ力, シートカバー

【はじめに,目的】演者らは先行研究の結果から,背もたれと身体背部間の摩擦力を軽減させることで,褥瘡発生因子の一つである臀部ずれ力の背もたれ傾斜中における増大を抑制し得ると仮説を立てた。この仮説をもとに,背もたれ用摩擦軽減シートカバーを考案,作成した(特許出願中)。本研究の目的は,上述の仮説及び本シートカバーの効果を検証することである。


【方法】健常男性19人(年齢:21.4±3.0歳)を対象とした。電動リクライニング式実験用椅子(背もたれ高:97cm,座面奥行き:40cm,座面角度:0度,傾斜角速度:秒速3度,背もたれ回転軸:座面後端)の座面上に床反力計(共和電業,40×40cm,サンプリング周波数100 Hz)を置き,その上での背もたれに身体背面が接した安楽座位にて臀部ずれ力を測定した。加えて,ビデオカメラにて側方から動画を撮影し,高度映像処理プログラムを用いて背もたれ上端-乳様突起間距離を測定した。各対象者には綿100%の実験用衣類を着用させた。背もたれと身体背部間の摩擦力を軽減させるために,背もたれ用シートカバーを使用した。本シートカバーは筒状の2重構造であり,内側部分の静止摩擦係数(μ)を低くすることで背もたれ面上で身体が滑りやすい構造である。なお,身体が背もたれ面上で下方へ滑らないように,身体背部に接する側のシートカバー上端を背もたれ上端に固定した。実験条件は,シートカバーを使用した条件(低摩擦条件:シートカバー内側面のμ=0.1)およびシートカバーを使用しない条件(対照条件:背もたれ-衣類間のμ=0.5)の2条件とした。背もたれの傾斜は,鉛直線より10度後傾位(initial upright position:IUP)から開始し,40度後傾位まで後傾させた(fully reclined position:FRP)。その後,背もたれを起こしていき,10度後傾位(returning to the upright position:RUP)まで戻るように操作した。臀部ずれ力では,各対象者の体重で除して正規化した値(% Body Weight:%BW)を採用した。背もたれ傾斜によって発生する背もたれに対する相対的な体幹のずれ幅は,IUPとFRPおよびRUPにおける背もたれ上端-乳様突起間距離の差によって算出した(正:下方)。統計学的解析として,各条件の値をpaired t-testを用いて比較した。


【結果】測定値を(低摩擦条件,対照条件)の順に示す。臀部ずれ力(%BW)は,IUP(11.8±1.7,11.7±1.7),FRP(8.8±1.8,9.8±2.5),RUP(16.2±2.3,18.5±2.7)であり,ずれ幅(cm)は,FRP(8.6±1.1,8.4±1.0),RUP(0.3±1.3,1.9±0.6)であった。両測定項目ともにRUPにおいて低摩擦条件が有意に低値を示した(p<0.01)。


【結論】背もたれと身体背部間の摩擦力を軽減させることで,FRPとRUPの間に増大する臀部ずれ力を抑制し得ることが示唆された。加えて,本シートカバーの臀部ずれ力軽減効果も実証された。なお,本研究は平成26年度科学研究費助成(若手研究B)を受け実施した。