第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本小児理学療法学会 一般演題口述
(小児)03

2016年5月27日(金) 12:30 〜 13:30 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:横井裕一郎(北海道文教大学 人間科学部 理学療法学科)

[O-SN-03-5] 当院血友病センターにおける血友病患者の関節症重症度と筋力およびADLとの関係

~青年・成人期血友病患者について~

中元洋子1, 舌間秀雄1, 明日徹1, 岡﨑哲也3, 蜂須賀明子2, 牧野健一郎4, 佐伯覚2 (1.産業医科大学病院リハビリテーション部, 2.産業医科大学リハビリテーション医学講座, 3.産業医科大学若松病院, 4.新王子病院)

キーワード:血友病性関節症, 筋力, ADL制限

【はじめに】血友病患者における先行研究では,血友病性関節症(以下関節症)が重度になると筋力が低下することが報告されている。しかし,関節症重症度とADLに関しての報告は少ない。当院血友病センターでは,毎月1回血友病総合診察外来を開催している。今回,2005年から2012年までに血友病総合診察外来を受診し,かつ筋力測定が実施できた血友病患者において,下肢関節症と筋力およびADL状況との関連について調べた。

【方法】2005年から2012年までに当院血友病総合診察外来を受診した患者225名のうち,精神疾患がない者,筋力測定が可能である者などの取り込み基準を満たした,20から30歳代の血友病男性78名を対象とした。対照群として20から30歳代の健常男性12名とした。全対象者の筋力は,等運動性筋力測定器Biodexを使用し,角速度30°/secにて膝関節屈伸筋力を測定した。対象者を3群(対照群:12名,血友病患者で血友病性膝関節症がある群(膝関節症あり群:30名),血友病患者で膝関節症はないが足関節または股関節に関節症がある群(膝関節症なし群:48名))に分類し,各群間の筋力(膝屈筋・伸筋のピークトルク値),筋出力特性(ピークトルクを発揮した角度:ピークトルク角度,大腿四頭筋とハムストリングスの筋力の比:H/Q比)について群間で比較した。さらに,足・膝・股関節の関節症重症度が蹲踞の姿勢や和式トイレ,階段昇降など下肢の関節機能と関連が大きいADLに制限をきたしているか調べた。なお,関節症重症度については,当院血友病センターで採用しているDePalma分類のGradeIIIをIII-1,III-2に細分化した産医大変法を用いた。3群間の筋力と筋出力特性の比較はKruskal Wallis検定を用いて有意差を検定し,その後の多重比較にDunnett法を採用した。各関節症重症度とADL制限の有無については群内での割合を調べた。統計分析にはSPSS ver.21を使用し,有意水準はP<0.05とした。

【結果】膝伸筋・屈筋ピークトルク値について,膝関節症あり群と膝関節症なし群は対照群より有意な低値を示した(P<0.05)。ピークトルク角度については3群間で有意差は認められなかった。H/Q比について,対照群と比較して膝関節症あり群では有意に高値を示した(P<0.05)。足関節と膝関節においては,関節症が重症になるほどADLの制限を受けている傾向にあった。

【結論】血友病患者の筋力や筋出力特性は関節症の有無に左右され,先行研究と同様に下肢関節に関節症があると膝関節の最大筋力や筋出力特性が低下することが示された。また,関節症が重症になるほどADLにも制限をきたす傾向にあることが分かった。近年の代表的な血友病治療における補充療法や運動療法により,関節症の発症と重症化を抑制することが筋力やADLを維持するために重要であると考えられる。