[O-SP-01-1] 下腿側方傾斜角度を用いたdrop vertical jump着地時の膝関節外反角度の評価の試み
キーワード:ACL, 動作解析, 二次元的評価
【はじめに,目的】
Hewettら(2005)は三次元動作解析を用いてdrop vertical jump(DVJ)課題における最大膝外反角度が膝前十字靱帯(ACL)損傷の予測因子の一つであることを明らかにした。しかし,三次元動作解析は高価な計測装置を必要とし,計測や解析に長時間を要するため,スポーツ現場におけるスクリーニングとしての実用性は低い。Miznerら(2012)はデジタルビデオカメラを用いた二次元的評価を行い,両膝関節間距離を両足関節間距離で除した膝関節足関節距離比率(膝足比率)が三次元動作解析により算出した膝外反角度と有意に相関し,簡易的評価法として有用であると報告した。そこで我々は前額面上で下腿軸と鉛直線が成す角度(下腿側方傾斜角度)は,膝足比率と同様に膝関節と足関節の位置関係を反映し,さらに膝足比率と異なり片脚ごとの評価が可能であるため,新たな評価指標の一つとなり得ると考えた。したがって本研究の目的は,DVJにおける下腿側方傾斜角度と三次元動作解析により算出した膝外反角度の相関関係を検討することとした。
【方法】
健常女性13名(年齢21.0±1.0歳,身長158.0±7.0cm,体重53.6±5.6kg)を対象とした。動作課題は30cm台から着地後直ちに最大垂直跳びを行うDVJとし,三次元動作解析装置(Motion Analysis社製),赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製,200Hz),反射マーカー39個,デジタルビデオカメラ1台(SONY社製,30Hz)を用いて記録した。SIMM6.0.2(MusculoGraphics社製)を用いて各試行における三次元膝外反角度を算出した。またデジタルビデオカメラを用いた前額面上の二次元的評価として,膝最大屈曲時の画像を抽出し,膝足比率,下腿側方傾斜角度をImage J(National Institute of Health製)を用いて算出した。三次元膝外反角度および各二次元的評価指標は静的立位時の値を中間位とした。Pearsonの積率相関係数を用いて,膝最大屈曲時の三次元膝外反角度と各二次元的評価指標の相関関係を検討した。また,各二次元的評価指標に関しては級内相関係数を用いて検者内,検者間信頼性を検討した。統計学的解析は全てPASW Statistics 18.0(SPSS Inc.)を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
下腿側方傾斜角度,膝足比率の検者内信頼性ICC(1,1)はそれぞれ0.971,0.952,検者間信頼性ICC(2,1)は0.937,0.924であった。三次元膝外反角度と下腿側方傾斜角度(R=0.57,P=0.043),および膝足比率(R=0.57,P=0.039)との間に有意な正の相関を認めた。
【結論】
下腿側方傾斜角度と三次元膝外反角度との間には,膝足比率と同程度の相関関係を認めた。下腿側方傾斜角度は片脚ごとの評価が可能であり,計測,解析も簡便なため,DVJにおける膝外反角度の新たな簡易的評価法として有用であると考えられた。今後は前向き研究などにより,この指標が実際にACL損傷スクリーニングとして有用か検討する必要がある。
Hewettら(2005)は三次元動作解析を用いてdrop vertical jump(DVJ)課題における最大膝外反角度が膝前十字靱帯(ACL)損傷の予測因子の一つであることを明らかにした。しかし,三次元動作解析は高価な計測装置を必要とし,計測や解析に長時間を要するため,スポーツ現場におけるスクリーニングとしての実用性は低い。Miznerら(2012)はデジタルビデオカメラを用いた二次元的評価を行い,両膝関節間距離を両足関節間距離で除した膝関節足関節距離比率(膝足比率)が三次元動作解析により算出した膝外反角度と有意に相関し,簡易的評価法として有用であると報告した。そこで我々は前額面上で下腿軸と鉛直線が成す角度(下腿側方傾斜角度)は,膝足比率と同様に膝関節と足関節の位置関係を反映し,さらに膝足比率と異なり片脚ごとの評価が可能であるため,新たな評価指標の一つとなり得ると考えた。したがって本研究の目的は,DVJにおける下腿側方傾斜角度と三次元動作解析により算出した膝外反角度の相関関係を検討することとした。
【方法】
健常女性13名(年齢21.0±1.0歳,身長158.0±7.0cm,体重53.6±5.6kg)を対象とした。動作課題は30cm台から着地後直ちに最大垂直跳びを行うDVJとし,三次元動作解析装置(Motion Analysis社製),赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製,200Hz),反射マーカー39個,デジタルビデオカメラ1台(SONY社製,30Hz)を用いて記録した。SIMM6.0.2(MusculoGraphics社製)を用いて各試行における三次元膝外反角度を算出した。またデジタルビデオカメラを用いた前額面上の二次元的評価として,膝最大屈曲時の画像を抽出し,膝足比率,下腿側方傾斜角度をImage J(National Institute of Health製)を用いて算出した。三次元膝外反角度および各二次元的評価指標は静的立位時の値を中間位とした。Pearsonの積率相関係数を用いて,膝最大屈曲時の三次元膝外反角度と各二次元的評価指標の相関関係を検討した。また,各二次元的評価指標に関しては級内相関係数を用いて検者内,検者間信頼性を検討した。統計学的解析は全てPASW Statistics 18.0(SPSS Inc.)を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
下腿側方傾斜角度,膝足比率の検者内信頼性ICC(1,1)はそれぞれ0.971,0.952,検者間信頼性ICC(2,1)は0.937,0.924であった。三次元膝外反角度と下腿側方傾斜角度(R=0.57,P=0.043),および膝足比率(R=0.57,P=0.039)との間に有意な正の相関を認めた。
【結論】
下腿側方傾斜角度と三次元膝外反角度との間には,膝足比率と同程度の相関関係を認めた。下腿側方傾斜角度は片脚ごとの評価が可能であり,計測,解析も簡便なため,DVJにおける膝外反角度の新たな簡易的評価法として有用であると考えられた。今後は前向き研究などにより,この指標が実際にACL損傷スクリーニングとして有用か検討する必要がある。