[O-SP-04-1] ロフストランドクラッチを用いた片脚走行動作の運動学的解析
Keywords:アンプティサッカー, ロフストランドクラッチ, 走行動作
【はじめに,目的】
アンプティサッカーは切断者のリハビリテーションの一環として考案されたスポーツであり,ロフストランドクラッチ(以下,クラッチ)を用いた片脚走行が基本動作である。初心者では走行速度が遅く,経験者よりも大きな身体の上下動が観察される。一般に速く走るためには,体重心位置(以下,COM)の変化量が小さいことや骨盤前傾角度が大きいことがポイントとされる。しかし,クラッチを用いた片脚走行動作の運動学的特徴は不明である。本研究は,未経験者と経験者の違いを明らかにすることで,アンプティサッカーでの走行速度を向上させるための指導の一助とすることを目的とした。
仮説は,片脚走行時に未経験者は経験者と比較して走行速度が遅く,COMの上下の変化量が大きく,骨盤前傾角度が小さいとした。
【方法】
対象は健康な男子大学生で下肢切断のないアンプティサッカー未経験者5名(年齢21.0±0.6歳,身長171.4±6.0cm,体重60.6±7.7kg)と経験者(競技期間6 -12カ月)5名(年齢20.8±1.2歳,身長173.8±5.4cm,体重64.0±4.9kg)の2群,計10名とした。対象の全身に35か所,クラッチに4か所のマーカーを貼付した。動作は三次元動作解析装置で100Hz,床反力計8基で1,000Hzにて測定した。課題動作は,全力での片脚走行とし,利き脚(ボールを蹴る脚)で行い,非利き脚はバンテージを用いて膝関節最大屈曲位で固定した。本研究では,1走行周期をクラッチ支持期,第1立脚期,遊脚期,第2立脚期の4期と定義した。COMの高さの身長比,骨盤前傾角度,股,膝,足関節角度,走行速度を分析項目とした。解析区間を第1立脚期と遊脚期とし,各項目の3試行の平均値を算出した。
統計学的検定として,各算出項目の群間比較は対応のないt検定とMann-Whitney検定を,走行速度と骨盤前傾角度の相関にはスピアマン順位相関係数検定を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
最高走行速度は未経験者で2.9±0.3m/s,経験者で3.4±0.2m/sとなり,経験者で14.7%速かった(p<0.05)。解析区間でCOMの最大変化量は未経験者で8.3±0.7%,経験者で7.5±1.0%となり,2群間に差はなかった。骨盤前傾角度の最大値は未経験者で9.1±2.5度,経験者で21.1±8.5度となり,未経験者で小さくなった(p<0.05)。股,膝,足関節角度は2群間に有意な差はなかった。10名分の走行速度と骨盤前傾角度は正の相関を示した(r=0.70,p=0.037)。
【結論】
本研究では,最大骨盤前傾角度が大きいほど走行速度が速いことが示された。要因としては,骨盤を前傾させることでCOMを前下方に移動させ,進行方向への推進力が得られたためと考える。未経験者に骨盤を前傾させた姿勢での走行動作を指導することで走行速度の向上につながる可能性が考えられた。アンプティサッカーではクラッチの操作能力も走行速度に関係すると考えられる。今後は上肢にも注目し,実際の選手の動作を分析することで指導の一助としたい。
アンプティサッカーは切断者のリハビリテーションの一環として考案されたスポーツであり,ロフストランドクラッチ(以下,クラッチ)を用いた片脚走行が基本動作である。初心者では走行速度が遅く,経験者よりも大きな身体の上下動が観察される。一般に速く走るためには,体重心位置(以下,COM)の変化量が小さいことや骨盤前傾角度が大きいことがポイントとされる。しかし,クラッチを用いた片脚走行動作の運動学的特徴は不明である。本研究は,未経験者と経験者の違いを明らかにすることで,アンプティサッカーでの走行速度を向上させるための指導の一助とすることを目的とした。
仮説は,片脚走行時に未経験者は経験者と比較して走行速度が遅く,COMの上下の変化量が大きく,骨盤前傾角度が小さいとした。
【方法】
対象は健康な男子大学生で下肢切断のないアンプティサッカー未経験者5名(年齢21.0±0.6歳,身長171.4±6.0cm,体重60.6±7.7kg)と経験者(競技期間6 -12カ月)5名(年齢20.8±1.2歳,身長173.8±5.4cm,体重64.0±4.9kg)の2群,計10名とした。対象の全身に35か所,クラッチに4か所のマーカーを貼付した。動作は三次元動作解析装置で100Hz,床反力計8基で1,000Hzにて測定した。課題動作は,全力での片脚走行とし,利き脚(ボールを蹴る脚)で行い,非利き脚はバンテージを用いて膝関節最大屈曲位で固定した。本研究では,1走行周期をクラッチ支持期,第1立脚期,遊脚期,第2立脚期の4期と定義した。COMの高さの身長比,骨盤前傾角度,股,膝,足関節角度,走行速度を分析項目とした。解析区間を第1立脚期と遊脚期とし,各項目の3試行の平均値を算出した。
統計学的検定として,各算出項目の群間比較は対応のないt検定とMann-Whitney検定を,走行速度と骨盤前傾角度の相関にはスピアマン順位相関係数検定を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
最高走行速度は未経験者で2.9±0.3m/s,経験者で3.4±0.2m/sとなり,経験者で14.7%速かった(p<0.05)。解析区間でCOMの最大変化量は未経験者で8.3±0.7%,経験者で7.5±1.0%となり,2群間に差はなかった。骨盤前傾角度の最大値は未経験者で9.1±2.5度,経験者で21.1±8.5度となり,未経験者で小さくなった(p<0.05)。股,膝,足関節角度は2群間に有意な差はなかった。10名分の走行速度と骨盤前傾角度は正の相関を示した(r=0.70,p=0.037)。
【結論】
本研究では,最大骨盤前傾角度が大きいほど走行速度が速いことが示された。要因としては,骨盤を前傾させることでCOMを前下方に移動させ,進行方向への推進力が得られたためと考える。未経験者に骨盤を前傾させた姿勢での走行動作を指導することで走行速度の向上につながる可能性が考えられた。アンプティサッカーではクラッチの操作能力も走行速度に関係すると考えられる。今後は上肢にも注目し,実際の選手の動作を分析することで指導の一助としたい。