第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)04

Fri. May 27, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:加賀谷善教(昭和大学 保健医療学部)

[O-SP-04-5] 片脚着地時の膝関節外反角度と加速度の関係

山本圭彦1,2, 浦辺幸夫2, 前田慶明2 (1.リハビリテーションカレッジ島根, 2.リハビリテーションカレッジ島根, 3.リハビリテーションカレッジ島根, 4.広島大学大学院保健学研究科, 5.広島大学大学院保健学研究科, 6.広島大学大学院保健学研究科)

Keywords:片脚着地, 膝関節外反角度, 加速度

【はじめに,目的】膝前十字靭帯(Anterior cruciate ligament:ACL)損傷の予防は,スポーツ理学療法では重要なテーマのひとつである。Hewettらは,膝関節外反角度が大きく,屈曲角度が小さい着地は発生率が高まることを報告している。しかし,これらの研究は三次元動作解析装置のように測定場所や解析に時間を要すことから,スポーツ現場での普及は容易ではない(2004)。加速度計は,歩行解析やバランス機能の評価として利用されており,汎用性が高い機器である。ACL損傷を惹起させる過度な膝関節外反は,いわゆる“knee-in,toe-out”のように膝関節が内側へ移動する動きを伴っている。この膝関節の内側への移動を加速度計で検知することで,膝関節外反を反映できないかと考えた。本研究の目的は,片脚着地時の膝関節外反角度と膝関節の内側への加速度(以下,内側加速度)との関係をとらえることである。仮説は,膝関節外反角度と膝関節の内側加速度には正の相関関係があるとした。

【方法】対象は,膝関節に外傷歴のない健康な女性10名(平均(±SD)年齢:20.9±0.9歳,身長:158.3±5.1 cm,体重:48.4±4.4 kg)とした。対象とする足は,ボールを蹴る足と反対の非利き足とした。運動課題は,高さ30cmの台から60cm前方に片脚で着地させた。膝関節外反角度の測定は,磁気式三次元位置計測装置ISOTRAK(Polhemus社)を使用した。センサーを大転子,大腿骨外側上顆,外果に装着し,得られたデータから前額面上での膝関節外反角度を求めた。膝関節の内側加速度の測定は,歩行分析計MG-M1110(メディエンス社)を用いて加速度センサー上縁を腓骨頭に合わせるよう設置した。加速度センサーのZ軸方向の加速度を膝関節内側加速度として分析に用いた。膝関節外反角度および膝関節内側加速度は片脚着地中に生じる最大値を抽出し,3回試行の平均値を求めた。統計学的分析は,膝関節外反角度と膝関節内側加速度の相関関係をピアソンの積率相関係数を用いた。なお,危険率5%未満を有意とした。

【結果】片脚着地中に生じた膝関節最大外反角度は,11.7±8.7°であり,膝関節最大内側加速度は,36.0±11.2m/s2であった。相関係数は,r=0.577,p<0.05であり有意な正の相関を認めた。

【結論】今回実施した加速度の測定は,スポーツ現場で利用しやすいよう加速度計を膝関節外側に設置させる比較的容易な方法を用いたが,膝関節最大外反角度と正の相関関係を示したことで膝関節内側加速度は膝関節外反角度を反映できる可能性があると考える。このことから,本測定のように簡便な方法でACL損傷のハイリスク者と抽出できるようになれば,ACL損傷予防において重要な意味を持つと考える。今後,加速度センサーの設置場所や測定の信頼性,再現性を検証することで,スポーツ現場で利用できる評価方法を確立していきたい。