[O-SP-06-2] 高負荷自転車駆動時における腰仙椎部回旋角度の変化
Keywords:自転車エルゴメーター, 腰仙椎, 回旋角度
【はじめに・目的】
近年サイクリングをする人口が増加している中で,同時に怪我の報告もされている。サイクリストで腰痛の罹患率は31~60%に及び,自転車駆動のような屈曲姿勢を維持するスポーツでは腰背部椎間板への持続的ストレスにより,腰椎椎間板ヘルニアの発生要因となるとされている。これまでは脊柱の前額面での動きに注目した研究が多く,矢状面(以下:S)・前額面(以下:F)・水平面(以下:H)での運動は十分に検討されていない。そこで,本研究の目的は,高負荷での自転車エルゴメーター駆動における各脊柱間の可動性を矢状面・前額面・水平面の3方向で捉え,体幹部への影響を検討することである。
【方法】
対象は,整形外科的疾患を有さない健常成人男性15名(年齢21.2±0.4歳)とした。自転車エルゴメーターを負荷量150W,60回転/分とし10分間駆動した。脊柱角度はC7,Th6,Th12,S1,Coに3点のジグマーカーを貼付し三次元動作分析装置(VICON MXT-20,Oxford Metrics社)で計測,解析用プログラミングソフトウェア(Body Builder,VICON社製)を用いてセグメント定義を行った。脊柱角度は貼付した点をそれぞれ結び,胸腰椎角,下位胸椎角,上位胸椎角,腰仙椎角としS・F・Hでの角度を算出した。算出した角度の値は開始1分後と10分後を比較し脊柱角度変位量として求めた。筋活動は,上腕二頭筋,上腕三頭筋,脊柱起立筋,腹直筋,外腹斜筋,外側広筋,大腿二頭筋の7筋を被験筋とし,全て右側を計測した。各筋における中央パワー周波数(Median Power Frequency:MDF)とRMSを1分毎に10秒間ずつ算出した。統計処理は,Shafferの方法とWilcoxonの符号順位検定を用い比較を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
S・Fでの各脊柱の脊柱角度変位量では有意差は認められなかった。しかし,Hにおける脊柱角度変位量では腰仙椎部において他の脊柱部位と比較し有意差が認められた。(p<0.05)筋活動においては,全てにおいてMDFとRMSどちらも有意差は認められなかった。
【考察】
金田らは椎間板に繰り返し回旋負荷が加わる事で椎間板ヘルニアが発生するという報告をしている。それは,本研究の腰仙椎部の回旋角度が大きいという結果が腰仙椎の椎間板へ持続的に回旋ストレスを加え腰痛発生の要因になることが示唆される。また,S・Fで有意差が認められなかったことは,測定中の上肢制動を考慮したが,実際は上肢の代償が多く,脊柱角度変位量に各個人間でばらつきが大きかったためと考える。RMSやMDFの結果から筋疲労は認めらなかったことは,池田らが150Wの負荷強度の遂行には被験者間の筋組織の違いが要因であるという報告をしており,各個人間の筋力や筋持久力に差があったためと考える。
【理学療法研究としての意義】
本研究により自転車駆動における腰仙椎部の回旋ストレスが増加することが示唆され,サイクリストの腰痛発生予防への一因子として今後考慮していく必要性がある。
近年サイクリングをする人口が増加している中で,同時に怪我の報告もされている。サイクリストで腰痛の罹患率は31~60%に及び,自転車駆動のような屈曲姿勢を維持するスポーツでは腰背部椎間板への持続的ストレスにより,腰椎椎間板ヘルニアの発生要因となるとされている。これまでは脊柱の前額面での動きに注目した研究が多く,矢状面(以下:S)・前額面(以下:F)・水平面(以下:H)での運動は十分に検討されていない。そこで,本研究の目的は,高負荷での自転車エルゴメーター駆動における各脊柱間の可動性を矢状面・前額面・水平面の3方向で捉え,体幹部への影響を検討することである。
【方法】
対象は,整形外科的疾患を有さない健常成人男性15名(年齢21.2±0.4歳)とした。自転車エルゴメーターを負荷量150W,60回転/分とし10分間駆動した。脊柱角度はC7,Th6,Th12,S1,Coに3点のジグマーカーを貼付し三次元動作分析装置(VICON MXT-20,Oxford Metrics社)で計測,解析用プログラミングソフトウェア(Body Builder,VICON社製)を用いてセグメント定義を行った。脊柱角度は貼付した点をそれぞれ結び,胸腰椎角,下位胸椎角,上位胸椎角,腰仙椎角としS・F・Hでの角度を算出した。算出した角度の値は開始1分後と10分後を比較し脊柱角度変位量として求めた。筋活動は,上腕二頭筋,上腕三頭筋,脊柱起立筋,腹直筋,外腹斜筋,外側広筋,大腿二頭筋の7筋を被験筋とし,全て右側を計測した。各筋における中央パワー周波数(Median Power Frequency:MDF)とRMSを1分毎に10秒間ずつ算出した。統計処理は,Shafferの方法とWilcoxonの符号順位検定を用い比較を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
S・Fでの各脊柱の脊柱角度変位量では有意差は認められなかった。しかし,Hにおける脊柱角度変位量では腰仙椎部において他の脊柱部位と比較し有意差が認められた。(p<0.05)筋活動においては,全てにおいてMDFとRMSどちらも有意差は認められなかった。
【考察】
金田らは椎間板に繰り返し回旋負荷が加わる事で椎間板ヘルニアが発生するという報告をしている。それは,本研究の腰仙椎部の回旋角度が大きいという結果が腰仙椎の椎間板へ持続的に回旋ストレスを加え腰痛発生の要因になることが示唆される。また,S・Fで有意差が認められなかったことは,測定中の上肢制動を考慮したが,実際は上肢の代償が多く,脊柱角度変位量に各個人間でばらつきが大きかったためと考える。RMSやMDFの結果から筋疲労は認めらなかったことは,池田らが150Wの負荷強度の遂行には被験者間の筋組織の違いが要因であるという報告をしており,各個人間の筋力や筋持久力に差があったためと考える。
【理学療法研究としての意義】
本研究により自転車駆動における腰仙椎部の回旋ストレスが増加することが示唆され,サイクリストの腰痛発生予防への一因子として今後考慮していく必要性がある。