[O-TK-01-3] ハムストリングスの等尺性収縮がいきみに与える影響
Keywords:ハムストリングス, 等尺性収縮, いきみ
【はじめに,目的】
床上排便を余儀なくされている高齢者に対して,背臥位でもいきいやすい環境が必要である。そこで床上排便を行いやすくする腹圧上昇のための骨盤後傾位を保持するため,ハムストリングスを収縮する排便方法を考えた。本研究の目的はハムストリングスの等尺性収縮の有無と,ベッド上背臥位での膝関節屈曲角度の違いによるいきみやすさを明らかにすることである。
【方法】
健常成人20名(男性10名,女性10名,年齢21.8±0.6歳)を対象に座位およびベッド角度0°,30°,60°と,それぞれ膝関節70°,90°,110°屈曲位の状態で,ハムストリングスを随意的に等尺性収縮したいきみ(以下,「収縮あり」)と随意的に収縮しないいきみ(以下,「収縮なし」)をそれぞれ10秒間行った。測定は表面筋電計(DELSYS社製)を使用して内腹斜筋,大腿二頭筋の筋活動を,体圧分布測定装置(Vista Medical社製)を使用して殿部圧の平均値,接触面積値を,および口腔内圧計(英国Micro Medical社製)を使用したいきみ時の口腔内圧である。また,終了時には数値的評価スケールNumeric Rating Scale(NRS)を用いて,普段のいきみを基準にいきみ困難感を評価した。各測定肢位間におけるパラメータを比較するため一元配置分散分析およびTurkey法を用いた。NRSの結果はχ2検定を用いて各肢位の偏りを比較した。統計ソフトはSPSSver.16を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
内腹斜筋は「収縮なし」のベッド角度0°では膝屈曲110°より90°が,ベッド角度60°では膝屈曲110°より70°および90°が有意に増加(p<0.05)した。大腿二頭筋は「収縮なし」でも,座位・背臥位ともに10~15%MVCの筋活動があった。「収縮なし」間の座位では膝屈曲70°より90°が有意に増加し(p<0.05),ベッド角度0°では膝屈曲110°より70°,90°が有意に増加した(p<0.05)。背臥位において殿部圧は減少傾向であり「収縮なし」より「収縮あり」が有意に増加した(p<0.01)。いきみ困難感は背臥位では「収縮あり」の方がいきみやすい傾向であり,座位では「収縮あり」が有意にいきみやすかった(p<0.05)。また,口腔内圧は4~56.5mmHgであり,いきみが確認された。
【結論】
背臥位のいきみやすい要因は,ハムストリングスと内腹斜筋の協調的な同時収縮により,殿部圧を高め骨盤を固定することである。いきみやすい肢位は,座位およびベッド角度0°では膝関節90°,ベッド角度30°では膝関節110°,およびベッド角度60°では膝関節70°であった。このとき股関節は約90°屈曲位であり,ハムストリングスを収縮させたときに殿部圧が増加し,骨盤の固定性が向上していきみやすくなったと考えられた。床上排便でいきみにくい要因は腹筋群が過剰収縮する場合であるが,足部を安定させてハムストリングスの等尺性収縮を促すことで,内腹斜筋の過剰努力が減少していきみやすくなる。
床上排便を余儀なくされている高齢者に対して,背臥位でもいきいやすい環境が必要である。そこで床上排便を行いやすくする腹圧上昇のための骨盤後傾位を保持するため,ハムストリングスを収縮する排便方法を考えた。本研究の目的はハムストリングスの等尺性収縮の有無と,ベッド上背臥位での膝関節屈曲角度の違いによるいきみやすさを明らかにすることである。
【方法】
健常成人20名(男性10名,女性10名,年齢21.8±0.6歳)を対象に座位およびベッド角度0°,30°,60°と,それぞれ膝関節70°,90°,110°屈曲位の状態で,ハムストリングスを随意的に等尺性収縮したいきみ(以下,「収縮あり」)と随意的に収縮しないいきみ(以下,「収縮なし」)をそれぞれ10秒間行った。測定は表面筋電計(DELSYS社製)を使用して内腹斜筋,大腿二頭筋の筋活動を,体圧分布測定装置(Vista Medical社製)を使用して殿部圧の平均値,接触面積値を,および口腔内圧計(英国Micro Medical社製)を使用したいきみ時の口腔内圧である。また,終了時には数値的評価スケールNumeric Rating Scale(NRS)を用いて,普段のいきみを基準にいきみ困難感を評価した。各測定肢位間におけるパラメータを比較するため一元配置分散分析およびTurkey法を用いた。NRSの結果はχ2検定を用いて各肢位の偏りを比較した。統計ソフトはSPSSver.16を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
内腹斜筋は「収縮なし」のベッド角度0°では膝屈曲110°より90°が,ベッド角度60°では膝屈曲110°より70°および90°が有意に増加(p<0.05)した。大腿二頭筋は「収縮なし」でも,座位・背臥位ともに10~15%MVCの筋活動があった。「収縮なし」間の座位では膝屈曲70°より90°が有意に増加し(p<0.05),ベッド角度0°では膝屈曲110°より70°,90°が有意に増加した(p<0.05)。背臥位において殿部圧は減少傾向であり「収縮なし」より「収縮あり」が有意に増加した(p<0.01)。いきみ困難感は背臥位では「収縮あり」の方がいきみやすい傾向であり,座位では「収縮あり」が有意にいきみやすかった(p<0.05)。また,口腔内圧は4~56.5mmHgであり,いきみが確認された。
【結論】
背臥位のいきみやすい要因は,ハムストリングスと内腹斜筋の協調的な同時収縮により,殿部圧を高め骨盤を固定することである。いきみやすい肢位は,座位およびベッド角度0°では膝関節90°,ベッド角度30°では膝関節110°,およびベッド角度60°では膝関節70°であった。このとき股関節は約90°屈曲位であり,ハムストリングスを収縮させたときに殿部圧が増加し,骨盤の固定性が向上していきみやすくなったと考えられた。床上排便でいきみにくい要因は腹筋群が過剰収縮する場合であるが,足部を安定させてハムストリングスの等尺性収縮を促すことで,内腹斜筋の過剰努力が減少していきみやすくなる。