第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)02

2016年5月27日(金) 16:00 〜 17:00 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:佐野一成(介護老人保健施設 ローランド 訪問リハビリ)

[O-TK-02-2] 尿失禁を有する高齢者の身体機能の特徴及び転倒との関連

飛永有美子1, 森田正治2, 牛島弘平1, 鶴﨑しほり1 (1.医療法人社団医王会朝倉健生病院リハビリテーション科, 2.国際医療福祉大学福岡保健医療学部)

キーワード:高齢者, 尿失禁, 転倒

【はじめに,目的】

高齢者の尿失禁は退院時期の延長や介護負担が増大すると共に本人のQOLの低下と関連があり,羞恥心や諦めから問題が表に出にくい現状がある。高齢者の尿失禁は腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,混合性尿失禁が多くみられる。これらの原因に骨盤底筋群の弱化が挙げられる。骨盤底筋群はインナーマッスルの1つであり,体幹の安定性,立位バランスに関連する。尿失禁を有する高齢者は骨盤底筋群を始め,虚弱化が進んでおり,身体機能の低下がある。また,虚弱高齢者は転倒と関連がある。しかし,尿失禁を有する高齢者の生活を送る中での危険リスクについての報告は示されてない。その為,本研究の目的は,尿失禁を有している高齢者と健常高齢者の身体機能の比較を行い,ねたきりに繋がる転倒との関連について調べる事とする。


【方法】

対象は通所リハビリテーションを利用している高齢者で歩行が自立している健常者21名,尿失禁者を20名。検査項目は質問紙票・測定・既存データからの収集からおこなった。質問紙票は尿失禁症状・QOL質問票(International Consultation on Incontinence-Questionnaire:Short;ICIQ-SF)を用いて尿失禁の頻度,尿失禁量,自覚的QOL,尿失禁のタイプ別症状及び昼夜の排尿回数,早めにトイレに行くようにしているか,トイレに行く時は慌てるか,過去1年間の転倒回数,転倒時の状況を確認した。測定では下腿周径,筋力(内転筋群,大腿四頭筋,前脛骨筋),10m歩行:自由歩行,最大歩行,二重課題条件下歩行(絵カードの提示),Timed up and go Test(以下TUG),Functional reach Test(以下FR)を行った。既存データからは身長,体重,HDS-Rを収集した。統計学的分析はJSTAT及びSPSSを用いMann-Whitney U検定,カイ二乗検定及び多重ロジスティック回帰分析を行った。


【結果】

尿失禁群と健常者群の身体機能の比較に関しては,TUG,FR,大腿四頭筋の筋力に優位に尿失禁群が低下を示した。転倒は尿失禁群が健常者群に比べ転倒との関連が高かった。ロジスティック回帰分析の結果,尿失禁の有無(オッズ比:11.33,95%信頼区間:2.463-52.147)は,転倒の要因となり,尿失禁を有することで11倍リスクが上がる事が示された。転倒した際の状況として,電気をつけようとしていた,手すりを握ろうとしていた等の上肢リーチ時の転倒,歩行時の下肢の引っ掛かりの転倒が多く,立位バランスの低下による転倒が多い状況であった。


【結論】

尿失禁群の方が健常者群に比べ運動機能の低下が起こっており,転倒するリスクが高い状態であった。高齢者に対し尿失禁の有無を確認し,骨盤底筋群の運動療法も積極的に行う必要性が示唆された。