第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)05

Sat. May 28, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:小泉幸毅(小倉リハビリテーション病院 臨床サービス部)

[O-TK-05-5] 虚弱な超高齢者女性の世帯構造の違いがもたらす身体機能の特徴について

村岸亜伊子1, 岡前暁生1, 和田智弘1, 和田陽介2, 道免和久3 (1.兵庫医科大学ささやま医療センターリハビリテーション室, 2.兵庫医科大学地域総合医療学, 3.兵庫医科大学リハビリテーション医学)

Keywords:超高齢, 身体機能, 独居

【はじめに】

独居高齢者は日常生活自立度は高いが,対人交流に消極的であり社会的交流範囲が狭小化していることなどが報告されており,健康状態や生活実態に注目した先行研究は多い。しかし,独居で虚弱な要支援高齢者,特に85歳以上の超高齢者の身体機能については,これまでほとんど検討がされていない。そこで今回,介護予防通所リハビリテーション(以下,介護予防通所リハ)を利用している独居で超高齢女性の身体機能の特徴について,世帯構造別,年齢別で比較検討をおこなった。


【方法】

対象は介護予防通所リハを利用している要支援1,2の女性35名とした。方法は,まず全ての対象者に対し運動機能を測定した。運動機能評価は,10m歩行時間(最大),膝伸展筋力,Timed Up and Go testとした。また,生活空間の指標としてLife-Space Assessmentを評価した。次に対象者を85歳以上の独居高齢者(超高齢独居群),85歳以上の同居高齢者(超高齢同居群),85歳未満の独居高齢者(高齢独居群),85歳未満の同居高齢者(高齢同居群)の4群に分類した。統計解析は,超高齢独居群と超高齢同居群,超高齢独居群と高齢独居群,超高齢同居群と高齢同居群,高齢独居群と高齢同居群の間で各評価項目についてMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。


【結果】

超高齢独居群は12名,平均年齢88.7±3.0歳,超高齢同居群は8名,平均年齢89.8±2.7歳,高齢独居群は5名,平均年齢80.8±2.17歳,高齢同居群は10名,平均年齢76.2±5.5歳であった。各評価項目を比較した結果,超高齢独居群は超高齢同居群と比べ膝伸展筋力が有意に高値であった(超高齢独居群:4.3±1.2N/kg,超高齢同居群:3.2±0.7N/kg)(p<0.05)。また,超高齢同居群は高齢同居群と比べ10m歩行時間が有意に遅かった(超高齢同居群:13.9±4.0秒,高齢同居群:9.5±2.8秒)(p<0.05)。超高齢独居群と高齢独居群,高齢独居群と高齢同居群の間には全ての項目で有意な差は認められなかった。


【結論】

虚弱な超高齢者において,85歳以上の独居女性は同居女性と比べ下肢筋力が高く,85歳未満の独居高齢者と比較しても身体機能と生活空間がほぼ同レベルであった。しかし,超高齢の同居女性においては,85歳未満の同居女性と比べ歩行速度が低下していた。これらのことから介護予防通所リハにおいて,同居高齢女性の下肢筋力や歩行能力といった身体機能の低下を予防するための介入が重要となり,世帯構造や年齢に応じた介入方法を検討する必要性が示唆された。ただし今回は,横断的に調査したものであり,身体機能の経時的な変化を示したものではない。また,対象者が少ないため,今回の結果を一般化するには慎重に適応する必要がある。