[O-TK-06-3] 回復期リハビリテーション病棟退院後の在宅生活での時間経過が家族介護負担感と日常生活動作能力との関係に及ぼす影響
~多施設共同研究~
Keywords:家族介護負担感, ADL, 在宅生活
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ)退院後,在宅生活を継続するには家族介護負担感(以下,介護負担)の軽減が重要である。介護負担には日常生活動作能力(以下,ADL)が関係している(牧迫,2008)が,退院時から在宅生活といった時間経過に着目して関係を検討した報告はない。本研究では回復期リハ退院から継続して訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を利用する者を対象に,退院からの時間経過に着目し,介護負担とADLとの関係を,多施設共同研究データを用いて検討することを目的とした。
【方法】
対象は回復期リハ退院後訪問リハを30日以上利用した4施設27名(男性11名,女性16名,平均年齢80.6±9.0歳)とした。評価項目は対象者の属性情報に加え,訪問開始時(以下,開始時)・訪問開始30日後(以下,30日後)の介護負担をZarit介護負担尺度日本語短縮版(J-ZBI_8)にて評価し,退院時・開始時・30日後の機能的自立度(FIM)を評価した。
統計処理はJ-ZBI_8の開始時と30日後の比較をWilcoxonの符号付順位和検定にて,運動FIMと認知FIMの退院時・開始時・30日後の比較をFriedman検定(事後検定:scheffe)にて行った。また,開始時のJ-ZBI_8と退院時・開始時FIM各項目(下位項目別,運動FIM,認知FIM),30日後のJ-ZBI_8と30日後のFIM各項目の相関分析をSpearman順位相関係数にて行った。有意水準は5%とした。
【結果】
J-ZBI_8には有意差を認めず,運動FIMでは30日後は退院時と開始時に比べ有意に高い値を示し(退院時vs 30日:p<.01,開始時vs 30日:p<.05),認知FIMでは30日後は退院時に比べ有意に高い値を示した(p<.01)。J-ZBI_8とFIM各項目の相関においては開始時のJ-ZBI_8は退院時の食事(ρ=-.42,p<.05),整容(ρ=-.39,p<.05),上衣更衣(ρ=-.41,p<.05)項目,開始時の食事(ρ=-.43,p<.05),上衣更衣(ρ=-.48,p<.05)項目と有意な負の相関を示し,30日後のJ-ZBI_8は30日後の排尿コントロール(ρ=-.46,p<.05),排便コントロール(ρ=-.52,p<.01)項目と有意な負の相関を示した。開始時・30日後のJ-ZBI_8はどちらも運動FIM,認知FIMとは有意な相関を認めなかった。
【結論】
介護負担は在宅生活の時間経過による変化は認めなかったが,ADLでは運動FIM,認知FIMともに向上を認めた。しかし,介護負担と運動FIM,認知FIMにはいずれの時点でも関係はなく,在宅復帰直後にて食事,更衣等のセルフケアと介護負担が関係し,30日後では排泄管理との関係を認めた。これらは全体的なADLとは介護負担は関係せず,ADLの特定の項目が関係し,かつそれらが在宅生活の時間経過により変化することを示している。
本研究から回復期リハ退院前,在宅復帰直後の介護負担を考慮する際は食事,更衣等のセルフケアに対して,加えて訪問リハ介入後には排泄管理に対して評価と介入が重要である事が示唆された。
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ)退院後,在宅生活を継続するには家族介護負担感(以下,介護負担)の軽減が重要である。介護負担には日常生活動作能力(以下,ADL)が関係している(牧迫,2008)が,退院時から在宅生活といった時間経過に着目して関係を検討した報告はない。本研究では回復期リハ退院から継続して訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を利用する者を対象に,退院からの時間経過に着目し,介護負担とADLとの関係を,多施設共同研究データを用いて検討することを目的とした。
【方法】
対象は回復期リハ退院後訪問リハを30日以上利用した4施設27名(男性11名,女性16名,平均年齢80.6±9.0歳)とした。評価項目は対象者の属性情報に加え,訪問開始時(以下,開始時)・訪問開始30日後(以下,30日後)の介護負担をZarit介護負担尺度日本語短縮版(J-ZBI_8)にて評価し,退院時・開始時・30日後の機能的自立度(FIM)を評価した。
統計処理はJ-ZBI_8の開始時と30日後の比較をWilcoxonの符号付順位和検定にて,運動FIMと認知FIMの退院時・開始時・30日後の比較をFriedman検定(事後検定:scheffe)にて行った。また,開始時のJ-ZBI_8と退院時・開始時FIM各項目(下位項目別,運動FIM,認知FIM),30日後のJ-ZBI_8と30日後のFIM各項目の相関分析をSpearman順位相関係数にて行った。有意水準は5%とした。
【結果】
J-ZBI_8には有意差を認めず,運動FIMでは30日後は退院時と開始時に比べ有意に高い値を示し(退院時vs 30日:p<.01,開始時vs 30日:p<.05),認知FIMでは30日後は退院時に比べ有意に高い値を示した(p<.01)。J-ZBI_8とFIM各項目の相関においては開始時のJ-ZBI_8は退院時の食事(ρ=-.42,p<.05),整容(ρ=-.39,p<.05),上衣更衣(ρ=-.41,p<.05)項目,開始時の食事(ρ=-.43,p<.05),上衣更衣(ρ=-.48,p<.05)項目と有意な負の相関を示し,30日後のJ-ZBI_8は30日後の排尿コントロール(ρ=-.46,p<.05),排便コントロール(ρ=-.52,p<.01)項目と有意な負の相関を示した。開始時・30日後のJ-ZBI_8はどちらも運動FIM,認知FIMとは有意な相関を認めなかった。
【結論】
介護負担は在宅生活の時間経過による変化は認めなかったが,ADLでは運動FIM,認知FIMともに向上を認めた。しかし,介護負担と運動FIM,認知FIMにはいずれの時点でも関係はなく,在宅復帰直後にて食事,更衣等のセルフケアと介護負担が関係し,30日後では排泄管理との関係を認めた。これらは全体的なADLとは介護負担は関係せず,ADLの特定の項目が関係し,かつそれらが在宅生活の時間経過により変化することを示している。
本研究から回復期リハ退院前,在宅復帰直後の介護負担を考慮する際は食事,更衣等のセルフケアに対して,加えて訪問リハ介入後には排泄管理に対して評価と介入が重要である事が示唆された。